13 / 34
13.ジョシュアは知りませんか?
しおりを挟む城の中を走って駆け抜け、馬小屋まで戻ってきた。
「はぁ、はぁ、はぁ。」
肩で息をする私にジョシュアが水を差し出す。
「オリビアちゃん、だいじょうぶ?」
「は、はい、、。」
おかしな子だと思われたに違いない。
恥ずかしくてジョシュアの顔を見れなかった。
「よく、逃げてくれたね。」
ゆっくりとジョシュアは言った。
「え?」
どういうことだろう。
「オリビアちゃんがフローレンスに捕まっていたら、俺たちはまた身動きが取れなくなるところだった。」
訳が分からなくてまばたきを繰り返す。
「オリビアちゃんは、レオが本当に"メイド殺し"だと思っていないだろう?」
「もちろんです。」
私は深く頷いた。ジョシュアは私の目を真っ直ぐに見た。
「詳しくは言えないけど、フローレンスはレオの、、"敵"なんだ。だから、フローレンスの周りの人間には最大限に警戒してくれ。」
「わかりました。」
私はレオ様が優しい人間だって信じている。本当に酷い人なら、アダムズやジョシュアのような素敵な人間が味方するはずないもの。
「俺は、全力でオリビアちゃんを守る。だから、オリビアちゃんは、どんなことがあってもレオを信じてやってくれ。」
ジョシュアはそう言って私に頭を下げた。
「信じます。」
なぜだかわからないけど、私は最初からレオを信じている。私はぎゅっとレオナから貰った宝石を握りしめた。最初からずっとレオは、レオナと同じ優しい目をしている。
「それは、ずいぶん綺麗な宝石だね。」
ジョシュアは私が手に持つ宝石を珍しそうに見た。
「私の、宝物なんです。レオナ、という名前の親友がお別れときに私にくれました。」
「素敵な友達だね。」
「はい。もう、長いことレオナには会えていませんが大切な友達なんです。ずっと探しているんですが、どこにもいなくて。」
(もしかしたら、ずっとこの城で育ったジョシュアなら知っているかもしれない。)
「ジョシュアは知りませんか?銀髪に青い瞳の美少女です。顔は、レオ様によく似ていて、違うのは瞳の色くらいなんですよ。」
私の言葉にジョシュアは腕を組んで考え込んだ。
(銀色の髪に青い瞳の美少女?それはまるで昔のレオそのものじゃないか。)
大人になって目の色が変わることはよくあることだ。レオも昔は透き通る青色の瞳であったことを、ジョシュアは知っていた。
(レオも昔、オリビアと会ったことがあると言っていたし、もしかして、、、?)
「ジョシュア?」
黙り込んだジョシュアに声を掛ける。何か心当たりがあるのだろうか。
「今はまだ心当たりがないな。思いついたら、教えるよ。」
もしも、レオがオリビアが探すレオナだったとしたら、なおさら自分が気軽に話して良いことではない。
そう考えたジョシュアは、何も言わずににっこりと笑った。
◇◇◇
21
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
後悔などありません。あなたのことは愛していないので。
あかぎ
恋愛
「お前とは婚約破棄する」
婚約者の突然の宣言に、レイラは言葉を失った。
理由は見知らぬ女ジェシカへのいじめ。
証拠と称される手紙も差し出されたが、筆跡は明らかに自分のものではない。
初対面の相手に嫉妬して傷つけただなど、理不尽にもほどがある。
だが、トールは疑いを信じ込み、ジェシカと共にレイラを糾弾する。
静かに溜息をついたレイラは、彼の目を見据えて言った。
「私、あなたのことなんて全然好きじゃないの」
婚約破棄します
アズやっこ
恋愛
私は第一王子の婚約者として10年この身を王家に捧げてきた。
厳しい王子妃教育もいつか殿下の隣に立つ為だと思えばこそ耐えられた。殿下の婚約者として恥じないようにといつも心掛けてきた。
だからこそ、私から婚約破棄を言わせていただきます。
❈ 作者独自の世界観です。
別れたいようなので、別れることにします
天宮有
恋愛
伯爵令嬢のアリザは、両親が優秀な魔法使いという理由でルグド王子の婚約者になる。
魔法学園の入学前、ルグド王子は自分より優秀なアリザが嫌で「力を抑えろ」と命令していた。
命令のせいでアリザの成績は悪く、ルグドはクラスメイトに「アリザと別れたい」と何度も話している。
王子が婚約者でも別れてしまった方がいいと、アリザは考えるようになっていた。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
(完結)私のことが嫌いなら、さっさと婚約解消してください。私は、花の種さえもらえれば満足です!
水無月あん
恋愛
辺境伯の一人娘ライラは変わった能力がある。人についている邪気が黒い煙みたいに見えること。そして、それを取れること。しかも、花の種に生まれ変わらすことができること、という能力だ。
気軽に助けたせいで能力がばれ、仲良くなった王子様と、私のことが嫌いなのに婚約解消してくれない婚約者にはさまれてますが、私は花の種をもらえれば満足です!
ゆるゆるっとした設定ですので、お気楽に楽しんでいただければ、ありがたいです。
※ 番外編は現在連載中です。
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする
夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、
……つもりだった。
夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。
「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」
そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。
「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」
女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。
※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。
ヘンリック(王太子)が主役となります。
また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる