【完結】婚約破棄を望む王子様にお飾りの正妃にして欲しいと頼んだはずですが、なぜか溺愛されています!

五月ふう

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13.ジョシュアは知りませんか?

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城の中を走って駆け抜け、馬小屋まで戻ってきた。

「はぁ、はぁ、はぁ。」

肩で息をする私にジョシュアが水を差し出す。

「オリビアちゃん、だいじょうぶ?」

「は、はい、、。」

おかしな子だと思われたに違いない。
恥ずかしくてジョシュアの顔を見れなかった。

「よく、逃げてくれたね。」

ゆっくりとジョシュアは言った。

「え?」

どういうことだろう。

「オリビアちゃんがフローレンスに捕まっていたら、俺たちはまた身動きが取れなくなるところだった。」

訳が分からなくてまばたきを繰り返す。

「オリビアちゃんは、レオが本当に"メイド殺し"だと思っていないだろう?」

「もちろんです。」

私は深く頷いた。ジョシュアは私の目を真っ直ぐに見た。

「詳しくは言えないけど、フローレンスはレオの、、"敵"なんだ。だから、フローレンスの周りの人間には最大限に警戒してくれ。」

「わかりました。」

私はレオ様が優しい人間だって信じている。本当に酷い人なら、アダムズやジョシュアのような素敵な人間が味方するはずないもの。

「俺は、全力でオリビアちゃんを守る。だから、オリビアちゃんは、どんなことがあってもレオを信じてやってくれ。」

ジョシュアはそう言って私に頭を下げた。

「信じます。」

なぜだかわからないけど、私は最初からレオを信じている。私はぎゅっとレオナから貰った宝石を握りしめた。最初からずっとレオは、レオナと同じ優しい目をしている。

「それは、ずいぶん綺麗な宝石だね。」

ジョシュアは私が手に持つ宝石を珍しそうに見た。

「私の、宝物なんです。レオナ、という名前の親友がお別れときに私にくれました。」

「素敵な友達だね。」

「はい。もう、長いことレオナには会えていませんが大切な友達なんです。ずっと探しているんですが、どこにもいなくて。」

(もしかしたら、ずっとこの城で育ったジョシュアなら知っているかもしれない。)

「ジョシュアは知りませんか?銀髪に青い瞳の美少女です。顔は、レオ様によく似ていて、違うのは瞳の色くらいなんですよ。」

私の言葉にジョシュアは腕を組んで考え込んだ。

(銀色の髪に青い瞳の美少女?それはまるで昔のレオそのものじゃないか。)

大人になって目の色が変わることはよくあることだ。レオも昔は透き通る青色の瞳であったことを、ジョシュアは知っていた。

(レオも昔、オリビアと会ったことがあると言っていたし、もしかして、、、?)

「ジョシュア?」

黙り込んだジョシュアに声を掛ける。何か心当たりがあるのだろうか。

「今はまだ心当たりがないな。思いついたら、教えるよ。」

もしも、レオがオリビアが探すレオナだったとしたら、なおさら自分が気軽に話して良いことではない。

そう考えたジョシュアは、何も言わずににっこりと笑った。





   ◇◇◇


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