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14.終わりにしなくちゃいけないのに

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ルカと離れ、学院から自分の部屋に戻ったココ。彼女は天井を見つめぽつりと呟いた。

「どうしたらいいのかしら・・・。」

”結婚してセブンリに行こう”

そう言ったルカの苦しそうな顔が頭から離れなかった。ココはルカの両親が、流行り病でなくなっていることを知っていたが、彼に病気の妹がいることは知らない。

―――ルカと一緒にセブンリに行けば、私は幸せになれる?

だが、ココにはルカとの未来を描くことができなかった。ただ混乱した気持ちだけが、ココの心を支配している。

”セブンリ国でなら、夢を追いかけられると思うんだ”

医師として、両親の命を奪ったはやり病を治す薬を開発したい。このまま城にとどまっていても、その夢がかなうとは思えなかった。

セブンリ国はミラント国よりも大きく、医療科学の発展した国だ。ミラント国ではまだできていない臓器移植に関する研究も盛んにおこなわれていると聞く。

「何を迷っているの、ココ。」

両手で顔を覆って、ココは自分を励ました。どんなにつらい境遇でも、醜い火傷の痕が残っていても、前さえ向いていれば、未来に進める。ルカの手を取ることは、ココにとってポジティブな選択に思えた。

実際には、ルカの言葉は全て嘘に過ぎないわけだが。

ステフから持った銀色の鍵を両手で握り締め、ココは目を閉じた。

―――私は、ステフの婚約者じゃないの。そうでしょ?

暗くて狭い階段下の部屋。こんな場所から抜け出したいと、ココはずっと願ってきた。

―――もうこの城に用はないのよ。

昼間、学院に通うことを許可される変わりに、ココは城の使用人として夜遅くまで働かなくてはいけなかった。毎日、低い賃金で休みなく。今日も時間になったら、ココは服を着替えて働きに行かなく手はいけない。

どんなに冷遇されても、この城にとどまっていたのは、ステフの傍にいたかったから。彼と一緒にいる未来を諦めきれなかったから。

―――終わりにしなくちゃ、いけないのに。

”好きな人と一緒に夢を追って隣国セブンリに行く。”

ココがそうステフに伝えたら、彼は安心して新しい婚約者と幸せになれるかもしれない。

―――本当は・・・ステフと新しい婚約者の幸せなんて・・・願えないのに。

ココは、ステフからもらった銀色の鍵を手に取った。

ルカの求婚をどうするか・・・その答えはまだココの中で出ていない。
だが、セブンリへの移住は・・・ココの中でほとんど決定事項になっている。

ステフにお別れの挨拶をするために、ココは秘密の部屋に向かった。


  
     ◇◇◇

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