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16.君と手を繋いでいたかった
しおりを挟むココがステフの手を引いて向かったのは、地下室の階段を上った場所にある小さな丘の上。
「最後のデートなのに・・・この場所で、よかったのか?」
「ええ。ここならだれにも見られなくてすむでしょう?」
この丘の周りにはバラの花が咲いていて、二人の姿を周りから隠している。小さい頃はよく、この場所で二人で遊んでいた。婚約してからは、めったに来ることはなくなっていたけれど。
「そう・・・だね。」
―――本当は、誰の目も気にせずココと手を繋ぎたかった。
そう思いながら、ステフは丘の上に腰かける。ステフとココの手は結ばれたままだ。
ステフは両親から、ココのことは他言無用だと強く言われていた。
”もしも、誰かに知られるようなことがあれば、ココに城から出ていってもらう”
”だけどっ”
”約束できないなら、ココとの婚約自体、無くしてしまうよ?”
”・・・わかった”
両親がココとの婚約に反対であることは、よくわかっていた。それでも、ココを手放したくなくて・・・自分で彼女を守れるようになるまで、ステフは待っていた。
「なぜ僕をデートに誘ってくれたんだい?」
隣に座るココの頭にバラの花びらが乗った。
「伝えたいことがあったの。」
ステフを見つめるココの笑顔はぎこちない。それに気が付いたステフは、そっとココの手のひらを手放した。
「伝えたいこと?」
大きな瞳に黒くて綺麗な髪。誰よりも優しい彼女を手に入れられる男は、きっと誰よりも幸せ者だとステフは思う。
「私ね・・・大学を卒業したら、セブンリ国に行くわ。はやり病の研究をしている先生がいるから、その人の助手になろうと思うの。」
ココはまっすぐにステフの目を見つめた。
「一人で行くのか?」
「いいえ・・・友人の、ルカ・ザイラスと一緒に行くわ。」
ルカ・ザイラス。彼ははっきりとココを愛していると言っていた。ステフが10年間言えなかった言葉を、いとも簡単に口にした男。
「ルカ・ザイラスを・・・好きなのか?」
聞くべきではないとわかっているのに、つい口から言葉が零れ出てしまう。
ココは少し黙って、ステフの指先に触れた。
「ココ?」
ココはステフの目をじっと見つめた。
「私がルカを好きだったら・・・ステフはどう思う?」
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