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9.二人の夜
しおりを挟むサイラス様と共に山賊のアジトを出ると、フォックス王子や兵士達が待機していた。
「シエリの眠り薬で、山賊たちは皆眠っている!速やかに山賊達を捕まえろ!」
兵士たちが山賊のアジトに入っていくのを確認して、サイラス様が私を抱きしめた。
「シエリ・・・一人にして本当にすまない・・・!怪我はないか?」
サイラス様が泣きそうな顔で、私の顔を撫でてくれる。
「だいじょうぶ・・・ですよ。怪我なく・・・その、平和でした。」
サイラス様を安心させたくて、私は笑顔で両拳を握ってみせた。
「シエリ・・・よかった・・・君は本当に強い子だ。」
私を強く抱きしめるサイラス様の手は震えている。まさかこんなに早く助けに来てくれるとは思いませんでした。サイラス様。
サイラス様のぬくもりに包まれて、目を閉じる。
「取り込み中、すまないのだが・・・シエリに聞きたいことがあるんだ。」
そう言って、私に話しかけて来たのはフォックス様。そうか。フォックス様はここに残っていたのか。私は恥ずかしくなって、サイラス様から体を離す。
「なんでしょう?」
「山賊のアジトで猫をみなかったか?白い毛並みに青い瞳の最高にかわいい猫なんだが・・・2日前に山賊に誘拐されて、行方不明なんだよ!」
フォックス様は切羽詰まった顔をしている。白い青い瞳の猫さん・・・もしかしてそれって・・・?
「ニヤーー!!」
ちょうどそこに現れたのは、私の友達の猫さん。
「リリー!!お前ーー!無事で良かったよーー!!!」
「ニャーー!!」
猫さんを抱き上げたフォックス王子は、猫さんに頬を擦り寄せた。猫さんの飼い主はフォックス王子様だったのですか・・・!
猫さんは誘拐されたんじゃなくて、城を脱走しただけな気もするけど、何にせよ飼い主さんが見つかって本当に良かった。
「本当にありがとう。シエリ!君のおかげだ!」
「あの・・・私は何も・・・。」
「君のおかげで、無駄な戦いなく山賊を捕まえることができたんだ!父にも伝えておくよ!」
フォックス様の言葉に恐縮する。お父様って国王様ですよね?!
「本当に、シエリは最高だよ。僕の自慢の婚約者だ。」
そう言って、サイラス様は私の額にキスをしてくれた。そうだ。まだ義母様のことを伝えていなかったんだった。
「実はその・・・サイラス様のお母様が私達のことを認めていらっしゃらなくて・・・」
「なんだと?」
「婚約破棄をするように言われて、家を追い出されてしまったのです・・・。」
私はサイラス様に、何があったのかを簡単に説明した。話を聞くうちにサイラス様の顔がどんどん険しくなっていく。
「・・・本当にすまない。まさか母がそんなことをするとは・・・。」
「・・・いいえ・・・。私のような女を婚約者にしたくないと思うのは、当然のことですから。」
「そんなことない。最低なのは・・・母上だ。シエリがどれだけ素敵な女性かも知らずに・・・そんな酷いことをするなんてな・・・。」
ガックリとうなだれるサイラス様。
「それなら、俺にいい考えがあるぞ!」
黙って私の話を聞いていたフォックス様は、突然そう言った。
「いい考え・・・ですか?」
フォックス様は笑顔で頷いた。
「シエリはリリーを救ってくれた恩人だかな!任せとけ!!」
◇◇◇
その後、眠っていた山賊達は皆捕らえられ、ザルトル国の治安はすっかり良くなった。
そして私は、山賊討伐の功績が認められ、表彰されることになった。
「シエリ・ウォルターン様。山賊の討伐に多大なる貢献をしたことにより、貴方に爵位を与えます。」
さらになんと爵位までもらえることになったのだ。おそらく、フォックス様が裏で手回ししてくれたんだろう。
リングイット家の婚約者が、山賊討伐に貢献したことは街でも噂になっていた。
「ありがとう!シエリさん!」
「貴方のおかけで心配せずに外に出られるわ!!」
皆に褒められて嬉しいけれど、恥ずかしくもある。
「あの・・・大したことはしてませんから・・・。」
「いーや!シエリは本当に最高なんだ。可愛いし、優しい、勇気があるし・・・。僕は本当に幸せものだ。」
サイラス様は每日そう言って、私を抱きしめてくれる。
「私こそ・・・本当に幸せです。」
あの後、サイラス様は義母様を家から追い出して、鍵を取り返してくれた。
「認めないわよ!!」
当初は怒っていた義母様だが、私が表彰されると途端に態度を変え、婚約者として認めてくれるようになった。
「ごめんなさいね・・・。サイラスとの婚約を認めるわ。」
「なんだ?!その態度は!僕はもう母上を信じないからな!!」
サイラス様はかんかんに怒っていた。
義母様はサイラス様を溺愛しているらしく、サイラス様に怒られてかなりショックそうだった。
いつかは許すかもしれないけれど・・・しばらく関わりたくないかな。
◇◇◇
私とサイラス様の幸せな日々が、また戻ってきた、
「シエリ。おいで!」
「はい・・・。」
お風呂に入った後、二人で寝室に向かう。
「僕は君とベットの上でのんびり話す時間が何より幸せなんだよ。」
濡れた髪で笑うサイラス様は・・・かっこよくて、セクシーだ。
「私もです。」
そっと、サイラス様にハグをする。
「シエリ・・・。」
サイラス様がまっすぐに私を見つめた。
彼の顔がゆっくりと近づいてきて
「ん・・・。」
唇があわさる。
「だいすきです・・・。」
サイラス様との幸せな夜はゆっくりと過ぎていくのでした。
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