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8.私に任せてください
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(サイラス視点)
隣町リンドンにたどり着いた俺、サイラスは、一軒の居酒屋でフォックスを見つけた。
「遅いぞ。サイラス!ようやく山賊のアジトを見つけたんだ!」
フォックスの言葉に、僕はため息をつく。
「お前はどれだけ自由人なんだ!せめて僕に一言言ってから城を出てくれよ!」
「お小言は後で聞く!僕の大切な人が山賊に囚われているんだよ!」
フォックスの表情は必死だ。大切な人・・・?フォックスの恋愛話は聞いたことがない。いつの間に恋人ができていたんだろう。
「そうだったのか・・・僕が出来ることは何でもするよ。」
「ああ。頼んだ!山賊のアジトはこの奥だ。潜入してきてくれ!」
そう言って、フォックスは僕の肩を叩く。
潜入してきてくれ・・・だなんて、簡単に言うが、そう簡単なことではない。
「頼むよ!お前ならできるだろ。サイラスサイラス?」
フォックスの表情は真剣だ。本当に大切な人が誘拐されているのだろう。
「わかったよ。任せてくれ。」
そうして、山賊のアジトに僕は一人潜入することになったのだが・・・
◇◇◇
「シ・・・シエリ・・・?」
山賊の新入りとして、山賊のアジトに潜入した俺は信じられない光景を目にした。
「み・・・皆さん。沢山作ったので・・・その、落ち着いてください・・・!」
そこには山賊達に料理を振る舞う、シエリがいた。山賊達は我先にとシエリの料理を貰いに行っている。
「う・・・嘘だろ・・・。」
何度も目をこするが、やはりそこにいるのはシエリで間違いなかった。呆然と立ちすくんでいると、山賊の一人に背中を押されてしまう。
「おい。ぼーっとするな!新入り!」
「あの女性は・・・いつからいるんだ?」
「ああ。なんでも昨日誘拐してきたらしいが、金にならんから食事係になったらしい。」
山賊の言葉を聞いて、僕は再び愕然とした。シエリが・・・誘拐された?
なぜそうなったのかは分からないが、僕が山賊のアジトに潜入してきたのは、不幸中の幸いだ。
今すぐ助け出してあげなくては。
今すぐにシエリの元に駆け寄りたい気持ちを押さえて、僕は順番待ちの列に並んだ。
シエリの食事を食べている周りの男達を見ると腹が立ってくる。なんでお前らがシエリの食事を食べてるんだ!
「お次の方・・・あ・・・。」
僕の姿に気がついたシエリが、大きく目を見開いた。やはりこの女性はシエリ本人に違いない。
詳しく事情を聞きたいが、そんな時間はない。僕は耳元でささやく。
「食事の後、皿洗い場で待っている。」
シエリが食事係に任命されたのならば、きっと彼女は食器洗いもする。その時ならば、怪しまれずに彼女に近づけるはずだ。
「わかりました・・・サイラス様。」
◇◇◇
食事の後、皿洗い場に行くとシエリが山賊の一人に手伝われて食器を洗っている。山賊の一人に声をかけて、僕は皿洗いを変わった。
「皿洗い、変わるよ。」
「おう!助かるぜ!」
無事、シエリと二人きりになることに成功する。少し離れた場所には山賊がいるが、小さい声で話せば、会話を聞かれずにすむだろう。
「サイラス様・・・お会いできて嬉しいです。」
皿を洗う手を止めずに、シエリは涙目でささやいた。
「なぜ・・・ここに?いや・・・詳しい話は後で聞く。とにかくここを逃げ出そう。」
シエリは少し黙った後、僕の目を見つめた。
「サイラス様は・・・なぜこちらに?フォックス王子は・・・?」
僕はさらに息を潜めて、ささやく。
「この山賊達を・・・捕まえに来たんだ。フォックスは無事だ。」
「山賊を・・・。ならばきっと、私にもお手伝いできることがあるはずです。」
シエリは真剣な眼差しをしている。
「シエリをこれ以上危険にさらすわけにはいかないよ。」
「いいえ。私こそ・・・サイラス様の危機を黙って見ているのは嫌です。私に良い案があるのです。」
「良い案?」
シエリはコクリと頷いた。
「私はこれから、山賊の皆さんに夜食のアイスクリームを配ろうと思っているのですが・・・その中に眠り薬を混ぜるのです。
そうすれば・・・山賊達と戦わずに彼らを倒せるのではないですか?」
シエリの提案に、僕は息を呑んだ。
確かにそうすれば、被害を最小限で押さえられるかもしれない。
「シエリ・・・。」
迷う僕に向かって、シエリは満面の笑みを浮かべた。
「だいじょうぶです。私は・・やり遂げてみせます。」
シエリは、強い。
僕は彼女を信じることにした。
「僕が眠り薬を調達してくる。頼んだよ。シエリ。」
シエリは嬉しそうに頷いた。
「任せてください!」
そして、シエリは見事にやり遂げてみせた。眠り薬入りのアイスクリームを笑顔で山賊達に配って回った。
まさかシエリが眠り薬を入れているなど思わずに、彼らは喜んでアイスクリームを食べた。その結果、30分もしないうちにあちこちでいびきや寝言が聞こえてくる。
眠りに包まれる山賊のアジトを、僕とシエリは手を繋いで脱出したのだった。
隣町リンドンにたどり着いた俺、サイラスは、一軒の居酒屋でフォックスを見つけた。
「遅いぞ。サイラス!ようやく山賊のアジトを見つけたんだ!」
フォックスの言葉に、僕はため息をつく。
「お前はどれだけ自由人なんだ!せめて僕に一言言ってから城を出てくれよ!」
「お小言は後で聞く!僕の大切な人が山賊に囚われているんだよ!」
フォックスの表情は必死だ。大切な人・・・?フォックスの恋愛話は聞いたことがない。いつの間に恋人ができていたんだろう。
「そうだったのか・・・僕が出来ることは何でもするよ。」
「ああ。頼んだ!山賊のアジトはこの奥だ。潜入してきてくれ!」
そう言って、フォックスは僕の肩を叩く。
潜入してきてくれ・・・だなんて、簡単に言うが、そう簡単なことではない。
「頼むよ!お前ならできるだろ。サイラスサイラス?」
フォックスの表情は真剣だ。本当に大切な人が誘拐されているのだろう。
「わかったよ。任せてくれ。」
そうして、山賊のアジトに僕は一人潜入することになったのだが・・・
◇◇◇
「シ・・・シエリ・・・?」
山賊の新入りとして、山賊のアジトに潜入した俺は信じられない光景を目にした。
「み・・・皆さん。沢山作ったので・・・その、落ち着いてください・・・!」
そこには山賊達に料理を振る舞う、シエリがいた。山賊達は我先にとシエリの料理を貰いに行っている。
「う・・・嘘だろ・・・。」
何度も目をこするが、やはりそこにいるのはシエリで間違いなかった。呆然と立ちすくんでいると、山賊の一人に背中を押されてしまう。
「おい。ぼーっとするな!新入り!」
「あの女性は・・・いつからいるんだ?」
「ああ。なんでも昨日誘拐してきたらしいが、金にならんから食事係になったらしい。」
山賊の言葉を聞いて、僕は再び愕然とした。シエリが・・・誘拐された?
なぜそうなったのかは分からないが、僕が山賊のアジトに潜入してきたのは、不幸中の幸いだ。
今すぐ助け出してあげなくては。
今すぐにシエリの元に駆け寄りたい気持ちを押さえて、僕は順番待ちの列に並んだ。
シエリの食事を食べている周りの男達を見ると腹が立ってくる。なんでお前らがシエリの食事を食べてるんだ!
「お次の方・・・あ・・・。」
僕の姿に気がついたシエリが、大きく目を見開いた。やはりこの女性はシエリ本人に違いない。
詳しく事情を聞きたいが、そんな時間はない。僕は耳元でささやく。
「食事の後、皿洗い場で待っている。」
シエリが食事係に任命されたのならば、きっと彼女は食器洗いもする。その時ならば、怪しまれずに彼女に近づけるはずだ。
「わかりました・・・サイラス様。」
◇◇◇
食事の後、皿洗い場に行くとシエリが山賊の一人に手伝われて食器を洗っている。山賊の一人に声をかけて、僕は皿洗いを変わった。
「皿洗い、変わるよ。」
「おう!助かるぜ!」
無事、シエリと二人きりになることに成功する。少し離れた場所には山賊がいるが、小さい声で話せば、会話を聞かれずにすむだろう。
「サイラス様・・・お会いできて嬉しいです。」
皿を洗う手を止めずに、シエリは涙目でささやいた。
「なぜ・・・ここに?いや・・・詳しい話は後で聞く。とにかくここを逃げ出そう。」
シエリは少し黙った後、僕の目を見つめた。
「サイラス様は・・・なぜこちらに?フォックス王子は・・・?」
僕はさらに息を潜めて、ささやく。
「この山賊達を・・・捕まえに来たんだ。フォックスは無事だ。」
「山賊を・・・。ならばきっと、私にもお手伝いできることがあるはずです。」
シエリは真剣な眼差しをしている。
「シエリをこれ以上危険にさらすわけにはいかないよ。」
「いいえ。私こそ・・・サイラス様の危機を黙って見ているのは嫌です。私に良い案があるのです。」
「良い案?」
シエリはコクリと頷いた。
「私はこれから、山賊の皆さんに夜食のアイスクリームを配ろうと思っているのですが・・・その中に眠り薬を混ぜるのです。
そうすれば・・・山賊達と戦わずに彼らを倒せるのではないですか?」
シエリの提案に、僕は息を呑んだ。
確かにそうすれば、被害を最小限で押さえられるかもしれない。
「シエリ・・・。」
迷う僕に向かって、シエリは満面の笑みを浮かべた。
「だいじょうぶです。私は・・やり遂げてみせます。」
シエリは、強い。
僕は彼女を信じることにした。
「僕が眠り薬を調達してくる。頼んだよ。シエリ。」
シエリは嬉しそうに頷いた。
「任せてください!」
そして、シエリは見事にやり遂げてみせた。眠り薬入りのアイスクリームを笑顔で山賊達に配って回った。
まさかシエリが眠り薬を入れているなど思わずに、彼らは喜んでアイスクリームを食べた。その結果、30分もしないうちにあちこちでいびきや寝言が聞こえてくる。
眠りに包まれる山賊のアジトを、僕とシエリは手を繋いで脱出したのだった。
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