王子様は王妃の出産後すぐ離縁するつもりです~貴方が欲しいのは私の魔力を受け継ぐ世継ぎだけですよね?~

五月ふう

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第二十一話:最後の忠告 Side カイル

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 次の日。

 (よし、眠っているな。)

 カイルは第一王子エドワーズの部屋をのぞき、エドワーズが寝息を立てていることを確認した。カイルの主なエドワーズが魔力をもたないことを、皆に知られないように隠すことである。常に王子エドワーズに同行しなくてはならないため、カイルが一人で行動する時はエドワーズを眠らせ、部屋に閉じ込めておくことにしている。

「くかぁぁ。」

 エドワーズはのん気に寝息を立てている。

 (よく寝ろよ、操り人形。)

 カイルはエドワーズに対して、対して何も思っていない。魔力を持たず、何の権力もない王子様。しいて言うならば、この無能な王子を魔法で空に浮かせるのはカイルのストレス発散となっている。

 カイルは国王が闇の魔術に通じ、国民に危害をもたらしていることを知っている。それでも、彼はその事実を黙認し、国王に従っていた。これ以上魔法使いだからという理由だけで、大切なものを失うのは嫌なのだ。
 
 (さて、行きますか。)

 瞬間移動魔法を使い、カイルはセラのいる田舎の村に移動した。

 ◇◇◇
 
 カイルが神殿に行くと、セラ・スチュワートは草原に行っていると老人に言われた。老人はかつてロマリア国一の魔法使いであったロージィである。ロージィはカイルをじっと見ると、

 「おぬしは今のままで本当にいいのか?」

 と尋ねた。カイルの心の迷いを見透かされているような気がして腹が立ったので、何も答えずにカイルは草原に向かった。

 「セラ・スチュワート。」

 草原に行くと、セラがぼんやりと美しい風景を眺めている。風でセラの髪が揺れていた。セラの横顔はどこか悲しみを帯びていて、それがさらに彼女を美しくさせていた。

 「何をしに来たの?」

 セラはカイルを見ると、警戒心丸だしで睨んできた。昨日とは異なり、魔力が回復している。今の状態で戦えば、どちらが勝つかわからない。何よりカイルは、この美しい魔法つかいと戦いたくはなかった。

 「エドワーズとの婚姻を受け入れてくれるか聞きにきた。」

 「私の気持ちは変わらないわ。絶対に、あの王子と結婚しない。」

 セラはカイルをまっすぐに見て言った。

(きっと変わらないんだろう。)
 
 カイルはセラが自分と似ていると感じていた。多くの魔力を持っているせいで利用され、多くのものを失ってきた。カイルもまた、自分の運命を呪っていた。だからこそ、自分の持つ魔力を最大限に活かし、誰よりも強大な力を手に入れようと心に誓っている。
 
 「大切なものを失うぞ?」

 「貴方に従ったって、私は大切なものを失うわ。それなら、自分で守ってみせる。」

 (無駄なことを。)

 いくらセラの魔力が強くとも、国王ゴベアに敵うはずがない。国王は多くの魔力を吸収し、魔物を操り襲わせることができる。

 「後悔するぞ。」

 「エドワーズと結婚して後悔するよりましだわ。王子の妃になるなんて吐き気がするの。」

 カイルは少し考える。このまま、立ち去ることはできる。そうすれば三日後、神殿には国王が大量の魔物を神殿に送り込むだろう。スチュワート家の悲劇が再び繰り返されるのかもしれない。
 
 (それは嫌だ。)

 カイルはまだ一度しか会ったことがないセラに、心奪われてた。

「エドワーズと結婚して、あいつを利用すればいい。エドワーズは単純な男だし、きっと悪いことはしないだろう。」

 カイルは幼いころからエドワーズと共にいる。力を持たず、卑屈になっているが、根はやさしい男だ。結婚相手として、そこまで悪い人間だとは思わない。

 しかし、セラは断固として拒否した。

 「嫌よ。」

 セラは自らの気持ちと信念を曲げるつもりさそうだった。

 「もしも気に食わないのならば、幻覚魔法をかけて騙してやればいいさ。」

 「何を言っているの?」

 「エドワーズが欲しいのは魔力を持ったお世継ぎだけ。他のものは何も望まないだろうし、気づかないだろう。もしも、子供が自分と血がつながってなかろうとも。」

 セラは眉をひそめた。
 
 「私に不貞行為をしろと言うの。汚らわしいわ。」

 「その方が平和に生きられるかもしれないという話さ。」

 「わたしは絶対にエドワーズと結婚しない。貴方達に世継ぎを産むための道具として利用されるのは絶対に嫌よ。帰って頂戴。」

 「ユリウスについて知らなくていいのか?」

 ”ユリウス”という言葉をきいて、セラの表情が変わる。セラ一人ならば、逃げられてしまうかもしれないが、ユリウスは違う。

(ユリウスが危機に陥れば、セラはきっということを聞くのだろう。)

 「ユリウスなんて、どうでもいいわ。」

 そう言うセラの表情は先ほどまでの無表情とは全く異なっている。

 (説得は無駄か。)

 カイルは天を仰いで、セラに背を向けた。

「俺は君が気に入っている。」

 (どうせ興味はないだろうけど。)

「私はあなたが嫌いよ。」

 カイルは諦めたように笑った。残念ながら、カイルはこれからセラに恨まれなくてはならないようだ。

「それでは、三日後に会いましょう。」


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