22 / 27
第二十一話:最後の忠告 Side カイル
しおりを挟む
次の日。
(よし、眠っているな。)
カイルは第一王子エドワーズの部屋をのぞき、エドワーズが寝息を立てていることを確認した。カイルの主なエドワーズが魔力をもたないことを、皆に知られないように隠すことである。常に王子エドワーズに同行しなくてはならないため、カイルが一人で行動する時はエドワーズを眠らせ、部屋に閉じ込めておくことにしている。
「くかぁぁ。」
エドワーズはのん気に寝息を立てている。
(よく寝ろよ、操り人形。)
カイルはエドワーズに対して、対して何も思っていない。魔力を持たず、何の権力もない王子様。しいて言うならば、この無能な王子を魔法で空に浮かせるのはカイルのストレス発散となっている。
カイルは国王が闇の魔術に通じ、国民に危害をもたらしていることを知っている。それでも、彼はその事実を黙認し、国王に従っていた。これ以上魔法使いだからという理由だけで、大切なものを失うのは嫌なのだ。
(さて、行きますか。)
瞬間移動魔法を使い、カイルはセラのいる田舎の村に移動した。
◇◇◇
カイルが神殿に行くと、セラ・スチュワートは草原に行っていると老人に言われた。老人はかつてロマリア国一の魔法使いであったロージィである。ロージィはカイルをじっと見ると、
「おぬしは今のままで本当にいいのか?」
と尋ねた。カイルの心の迷いを見透かされているような気がして腹が立ったので、何も答えずにカイルは草原に向かった。
「セラ・スチュワート。」
草原に行くと、セラがぼんやりと美しい風景を眺めている。風でセラの髪が揺れていた。セラの横顔はどこか悲しみを帯びていて、それがさらに彼女を美しくさせていた。
「何をしに来たの?」
セラはカイルを見ると、警戒心丸だしで睨んできた。昨日とは異なり、魔力が回復している。今の状態で戦えば、どちらが勝つかわからない。何よりカイルは、この美しい魔法つかいと戦いたくはなかった。
「エドワーズとの婚姻を受け入れてくれるか聞きにきた。」
「私の気持ちは変わらないわ。絶対に、あの王子と結婚しない。」
セラはカイルをまっすぐに見て言った。
(きっと変わらないんだろう。)
カイルはセラが自分と似ていると感じていた。多くの魔力を持っているせいで利用され、多くのものを失ってきた。カイルもまた、自分の運命を呪っていた。だからこそ、自分の持つ魔力を最大限に活かし、誰よりも強大な力を手に入れようと心に誓っている。
「大切なものを失うぞ?」
「貴方に従ったって、私は大切なものを失うわ。それなら、自分で守ってみせる。」
(無駄なことを。)
いくらセラの魔力が強くとも、国王ゴベアに敵うはずがない。国王は多くの魔力を吸収し、魔物を操り襲わせることができる。
「後悔するぞ。」
「エドワーズと結婚して後悔するよりましだわ。王子の妃になるなんて吐き気がするの。」
カイルは少し考える。このまま、立ち去ることはできる。そうすれば三日後、神殿には国王が大量の魔物を神殿に送り込むだろう。スチュワート家の悲劇が再び繰り返されるのかもしれない。
(それは嫌だ。)
カイルはまだ一度しか会ったことがないセラに、心奪われてた。
「エドワーズと結婚して、あいつを利用すればいい。エドワーズは単純な男だし、きっと悪いことはしないだろう。」
カイルは幼いころからエドワーズと共にいる。力を持たず、卑屈になっているが、根はやさしい男だ。結婚相手として、そこまで悪い人間だとは思わない。
しかし、セラは断固として拒否した。
「嫌よ。」
セラは自らの気持ちと信念を曲げるつもりさそうだった。
「もしも気に食わないのならば、幻覚魔法をかけて騙してやればいいさ。」
「何を言っているの?」
「エドワーズが欲しいのは魔力を持ったお世継ぎだけ。他のものは何も望まないだろうし、気づかないだろう。もしも、子供が自分と血がつながってなかろうとも。」
セラは眉をひそめた。
「私に不貞行為をしろと言うの。汚らわしいわ。」
「その方が平和に生きられるかもしれないという話さ。」
「わたしは絶対にエドワーズと結婚しない。貴方達に世継ぎを産むための道具として利用されるのは絶対に嫌よ。帰って頂戴。」
「ユリウスについて知らなくていいのか?」
”ユリウス”という言葉をきいて、セラの表情が変わる。セラ一人ならば、逃げられてしまうかもしれないが、ユリウスは違う。
(ユリウスが危機に陥れば、セラはきっということを聞くのだろう。)
「ユリウスなんて、どうでもいいわ。」
そう言うセラの表情は先ほどまでの無表情とは全く異なっている。
(説得は無駄か。)
カイルは天を仰いで、セラに背を向けた。
「俺は君が気に入っている。」
(どうせ興味はないだろうけど。)
「私はあなたが嫌いよ。」
カイルは諦めたように笑った。残念ながら、カイルはこれからセラに恨まれなくてはならないようだ。
「それでは、三日後に会いましょう。」
(よし、眠っているな。)
カイルは第一王子エドワーズの部屋をのぞき、エドワーズが寝息を立てていることを確認した。カイルの主なエドワーズが魔力をもたないことを、皆に知られないように隠すことである。常に王子エドワーズに同行しなくてはならないため、カイルが一人で行動する時はエドワーズを眠らせ、部屋に閉じ込めておくことにしている。
「くかぁぁ。」
エドワーズはのん気に寝息を立てている。
(よく寝ろよ、操り人形。)
カイルはエドワーズに対して、対して何も思っていない。魔力を持たず、何の権力もない王子様。しいて言うならば、この無能な王子を魔法で空に浮かせるのはカイルのストレス発散となっている。
カイルは国王が闇の魔術に通じ、国民に危害をもたらしていることを知っている。それでも、彼はその事実を黙認し、国王に従っていた。これ以上魔法使いだからという理由だけで、大切なものを失うのは嫌なのだ。
(さて、行きますか。)
瞬間移動魔法を使い、カイルはセラのいる田舎の村に移動した。
◇◇◇
カイルが神殿に行くと、セラ・スチュワートは草原に行っていると老人に言われた。老人はかつてロマリア国一の魔法使いであったロージィである。ロージィはカイルをじっと見ると、
「おぬしは今のままで本当にいいのか?」
と尋ねた。カイルの心の迷いを見透かされているような気がして腹が立ったので、何も答えずにカイルは草原に向かった。
「セラ・スチュワート。」
草原に行くと、セラがぼんやりと美しい風景を眺めている。風でセラの髪が揺れていた。セラの横顔はどこか悲しみを帯びていて、それがさらに彼女を美しくさせていた。
「何をしに来たの?」
セラはカイルを見ると、警戒心丸だしで睨んできた。昨日とは異なり、魔力が回復している。今の状態で戦えば、どちらが勝つかわからない。何よりカイルは、この美しい魔法つかいと戦いたくはなかった。
「エドワーズとの婚姻を受け入れてくれるか聞きにきた。」
「私の気持ちは変わらないわ。絶対に、あの王子と結婚しない。」
セラはカイルをまっすぐに見て言った。
(きっと変わらないんだろう。)
カイルはセラが自分と似ていると感じていた。多くの魔力を持っているせいで利用され、多くのものを失ってきた。カイルもまた、自分の運命を呪っていた。だからこそ、自分の持つ魔力を最大限に活かし、誰よりも強大な力を手に入れようと心に誓っている。
「大切なものを失うぞ?」
「貴方に従ったって、私は大切なものを失うわ。それなら、自分で守ってみせる。」
(無駄なことを。)
いくらセラの魔力が強くとも、国王ゴベアに敵うはずがない。国王は多くの魔力を吸収し、魔物を操り襲わせることができる。
「後悔するぞ。」
「エドワーズと結婚して後悔するよりましだわ。王子の妃になるなんて吐き気がするの。」
カイルは少し考える。このまま、立ち去ることはできる。そうすれば三日後、神殿には国王が大量の魔物を神殿に送り込むだろう。スチュワート家の悲劇が再び繰り返されるのかもしれない。
(それは嫌だ。)
カイルはまだ一度しか会ったことがないセラに、心奪われてた。
「エドワーズと結婚して、あいつを利用すればいい。エドワーズは単純な男だし、きっと悪いことはしないだろう。」
カイルは幼いころからエドワーズと共にいる。力を持たず、卑屈になっているが、根はやさしい男だ。結婚相手として、そこまで悪い人間だとは思わない。
しかし、セラは断固として拒否した。
「嫌よ。」
セラは自らの気持ちと信念を曲げるつもりさそうだった。
「もしも気に食わないのならば、幻覚魔法をかけて騙してやればいいさ。」
「何を言っているの?」
「エドワーズが欲しいのは魔力を持ったお世継ぎだけ。他のものは何も望まないだろうし、気づかないだろう。もしも、子供が自分と血がつながってなかろうとも。」
セラは眉をひそめた。
「私に不貞行為をしろと言うの。汚らわしいわ。」
「その方が平和に生きられるかもしれないという話さ。」
「わたしは絶対にエドワーズと結婚しない。貴方達に世継ぎを産むための道具として利用されるのは絶対に嫌よ。帰って頂戴。」
「ユリウスについて知らなくていいのか?」
”ユリウス”という言葉をきいて、セラの表情が変わる。セラ一人ならば、逃げられてしまうかもしれないが、ユリウスは違う。
(ユリウスが危機に陥れば、セラはきっということを聞くのだろう。)
「ユリウスなんて、どうでもいいわ。」
そう言うセラの表情は先ほどまでの無表情とは全く異なっている。
(説得は無駄か。)
カイルは天を仰いで、セラに背を向けた。
「俺は君が気に入っている。」
(どうせ興味はないだろうけど。)
「私はあなたが嫌いよ。」
カイルは諦めたように笑った。残念ながら、カイルはこれからセラに恨まれなくてはならないようだ。
「それでは、三日後に会いましょう。」
39
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる