fragile〜はかなきもの〜

FOKA

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3話

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 ルヘルム北区には貧困層や無法者が流れ着いてくる。しかし時々'人'以外の者もここに流れ着き住みつくことがある。彼女もまたどこからともなくここに流れ着いた者。その姿は人間であり獣でもあった。ここルヘルムは人間こそが生物の頂点であると考える人間絶対主義の思想がある。人間に近い獣人といえど、迫害の対象となっている。

 家の裏口から布袋を両手に持った中年の男が出て来た。男はそのままフラフラとゴミ捨て場の前まで歩いてくると、持っていた布袋を無造作に投げ捨てた。男の姿が見えなくなるのを待ってから私は先程男が投げ捨てた布袋を漁る。中からは汚れて着れなくなった衣類、虫の湧いた食べ物だった何か、殆ど食べられるような物はなかった。もう一つの布袋も開けてみたがこちらも外れだった。もう何日も食べ物を口にしておらず空腹の限界に達しようとしていた。最初に開けた布袋から虫の湧いた食べ物だった何かを拾い上げ近くの物陰に走って隠れた。酷い臭い、そいて蠢く虫と蟲。普通であれば食べる者などいないだろう。しかし今これを食べなければ次はいつ食料にありつけるかわからない。私は何かを考える前に、思う前にそれを口に放り込んでいた。

 北区に住み着いている者は生物として最底辺の者が殆どである。しかしそんな最底辺の中にも格差が存在している。すべては腕っぷしの強さだ。力が強いものこそここではすべてなのだ。食べ物が手に入りやすい地域は力の強いやつが縄張りとしているし、私のように弱いものは食べ物が殆どない地域で生きていくしかない。

 突然うしろ髪を掴まれ物陰から引っ張り出され仰向けに倒れた。目を開けると男三人が私を見下しながら何かを行っている。はっきりとは聞き取れなかったが、どうやら今日からここら辺はこいつらの縄張りなったようだ。大柄な男が今すぐここから消えろと叫ぶ。私はすぐに体を起こしこの場を立ち去ろうとしたが、横にいた子分のような男が立ち去ろうとしていた私の腕を掴むと、私のかぶっていた頭巾をよこせと頭から頭巾を剥ぎ取った。頭巾を剥ぎ取った男が叫ぶ。こいつ獣人だ。それを聞いた他の2人がすぐに私の前に立ち道を塞いだ。
 普段は獣人だとバレないように頭巾で耳を隠し、尻尾を下着の中に隠している。人間は獣人を毛嫌いする。昔獣人だとバレた時には害虫を見る視線を向けられ気の済むまで殴られ続けたことがる。
 今彼らが私に向けている視線もあの時と同じ害虫を見る目をしている。子分の2人が私の両側から腕を掴むと、大柄な男が私の腹を殴った。この男たちは劣悪の環境で感じているストレスや不安を私に向けているのだろう。確かに北区は無法者も多くいるがそれでも殺人はしない。殺人を犯せば中央から役人がやって来て調査を始める。ここ北区でも殺人だけはしないと暗黙のルールとなっているが、しかし獣人は例外である。どれだけ痛めつけようとも、人目がつく往来で殺しても見て見ぬふりをするだろう。中には一緒になって襲う役人までいるくらいだ。

 顔面が腫れ上がっているのか視界が狭くなり、息もしづらくなって来た。微かに聞こえる男たちの声。
おい、こいつ反応が薄いな。兄貴、これ使いましょう。
男たちがケラケラと笑い始めると、硬貨二枚の間に私の爪を挟むとそのまま一気に私の爪を剥がした。獣のような呻き声が響き、呻くその姿を見て男たちは再びケラケラと笑い始めた。今度は反対の手の爪に硬貨を挟むと先程と同じように爪を剥がした。

 朦朧とする意識の中で男たちの会話が聞こえてくる。剥がす爪が無くなったなっと。次は何をするか話し合っているようだった。話し合いの結果はどうやら子分の考えが採用。男たちがニヤニヤとしながら再び私を見ると、子分の1人が私の口の中に両手の人差し指と中指を突っ込み口を大きく広げられる。大柄の男が私の前歯に紐を括り付け、しっかり押さえてろっと叫ぶ。
3、2、1、そら。
引っ張る方向が悪かった。真下に引っ張ればきちんと抜けたかもしれない。しかし下手に横に引っ張たせいで半分ほどしか抜けず、歯肉は裂け、歯槽骨が剥き出しとなった。声を上げ体をバタつかせるも、私の貧相な体ではこの男たちの前では意味をなさない。持っていた紐を放すと今度は抜けかけた歯を直接掴み引き抜く。引き抜かれた衝撃で失禁する。失禁するところを見ていた男たちはさらに笑みを浮かべ、今度は二本の歯に紐を括り付け、同時に引っ張った。痛さの余り意識が飛びかけるがその度、歯が抜けた歯肉と歯肉の間に指を突っ込み意識を覚醒させられる。

 かすれた声で許しをこうが男達の耳には入らない。
人間と殆ど変わらない。耳と尻尾があるくらいで他は殆ど変わらないのに。なぜ人間達はそこまで嫌うの。どうして私は獣人なの。そう思いながら早く男たちがこの場を立ち去る事をただ、ただ願うのみである。
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