fragile〜はかなきもの〜

FOKA

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2話

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 レオルト・フォン・エンベルガーはルヘルムで一番の貴族の娘である。
父はこの都市の貿易王と言われる人物であり、母もまたこの都市でもっとも有名な音楽家である。
そんな貴族の一人娘、レオルトは今日も今日とて家を抜け出し両親を困らせていた。

 執務室にはウロウロと落ち着かない様子で歩き回る大柄な男とそれを楽しそうに見ている綺麗なドレスを着飾った女がいた。
「聞いたかママ、またレオの奴が家を抜け出して」
「ふふ、大丈夫ですよお父さん。いつもみたいにふらっと帰ってきますから」
「しかし町で何かあったら」
「心配しすぎですよ」
男は何とも言えない顔をしながら椅子に腰かけると、扉をノックする音が聞こえた。入ってきたのはエンベルガー家に仕える使用人のケーテである。
「ヴォルフ様、貿易商会の方がお見えになりました」
「うむ、ではここに通してくれ」
ケーテは一礼すると執務室から出で行く。
「あら、いらっしゃたのね。お茶を用意するわ」
お茶の用意のためママも部屋から出て行ってしまった。
さて、気を引き締めねばな。そう呟いたところで静かになった部屋に再びノックの音がした。

 ルヘルム南区では多くの商人が店を構え、ルヘルムで最も賑わいを見せる地区である。そんな賑わいを見せる町の中を駆け抜ける一人の少女がいた。
「こんにちはヒルファさん。今日は何か面白いもの入ってます?」
少女は勢いよくその店の前で止まり、見知った顔に声をかけた。
「久しぶりに会った第一声がそれ?」
「ははは、冗談ですよ。お久しぶりですヒルファさん。一年ぶりくらいですね」
「うん。本当に久しぶりだね。なんか見ない間にまた身長伸びたんじゃないの」
「へへん。育ち盛りですから。ヒルファさんこそ結構筋肉付いてきましたね」
「伊達に女一人で商人しちゃいないよ。そうだ今回はレオの好きなルクスス・ハーゼのお肉捕ってきたよ」
ヒルファさんはそういうとお肉の入った袋を私に向かって投げてよこした。
「いつもご贔屓にしてもらってるからレオにプレゼント」
「本当!ありがとうヒルファさん。早速今日の晩御飯にいただいちゃいます」
このお肉は私のお気に入りの一つで、すりおろしたノイノを使い、ジャージン、クリガ、ペープリッチやクリメッタでお肉をマリナードし、クルミックココナで長時間煮込むと最高に美味しいのだ。
「そういえば走ってどこに行くつもりだったの?」
そうそう、あそこに行こうと思ってたらたまたまヒルファさんのお店を見つけたんだった。
「東区にある隠れ家に行く途中でした」
その場で一礼し、じゃあまた後できます!っと言って再び人であふれる通りの中へ消えていく。
「相変わらず騒がしいね。もっとゆっくりしていけばいいのに」
いろいろ面白い旅の話とかあったのになーっと。そう思ったころには完全にレオの姿は見えなくなっていた。


 ルヘルム東区、多くの住居が並び立ち人々は寝食をこの東区で行う。一見何ら変哲もない街並み。しかし、繁栄の裏に隠れた闇の入り口があり、今日もまた入り口に向かう者が後を絶ちません。


 隠れ家は東区と北区の境界付近にある。東区は多くの住民が住んではいるけれど、北区に近いほど人は少なくなる。
北区には貧困層や無法者が多く住み着いているのであまり人が近寄らないからだ。
日も傾き雲がオレンジ色に発色しているように見え始めたころ、住宅街の裏路地を抜け隠れ家についた。一人で住むには少し大きいくらいの家。部屋は四室あるが一部屋しか使っていない。リビングにあるカリーナ像の右腕を触ると地下通路が現れる。この地下通路、中央区の地下に続いておりそこから私の住む屋敷まで行けるのだ。
部屋で貴族衣装に着替えた後、ヒルファさんからもらったお肉をもって屋敷に戻った。
屋敷ではすでに夕食の準備が進められており厨房は熱気で満ちていた。私は申し訳なさそうな雰囲気を醸し出し料理長へ持っていた肉を差し出した。
「あの、料理長、今日の晩御飯にこのお肉を使っていただけませんか?」
料理長はいったん手を止めて私が差し出したお肉を受け取ると、にこりと笑った。
「お嬢様、かしこまりました。私目にお任せください」
「もう献立が決まっていたのにすみません」
「いえ、お嬢様。献立などその場その場で変わるものでございます。食材を見て瞬時に適した料理を見定める。とっさの思い付きでアレンジを加え料理を変える時もございます。ですのでこの程度お気になさらず」
料理長はそういうと肉をものすごい速さで切りはじめた。
「では私は邪魔になるといけないのでお部屋に戻りますね。あとはよろしくお願いいたします。料理長」
そう言い残し私は厨房から出ていく。中からは先ほどよりも活気があふれたような音が響き渡ってきた。

 楽しみにしていた夕食だったがそうはならなかった。勝手に家を抜け出したことがばれており、夕食中、そして食べ終えてからも説教が続いたのだ。
やっと説教が終わるや否や、私はお風呂に入りそしてすぐにベットに飛び込んだ。せっかくヒルファさんからもらったお肉を楽しめなかったことが少し腹立たしい。
決めた。明日も抜け出してやる。
そう決心し頭まですっぽりと布団をかけて深い眠りについた。
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