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「真実の愛と出会ったから」と王子に婚約を解消されましたが、私も今の夫と出会えたので幸せです!
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「すまないが、君との婚約を解消したい」
「……理由を聞かせていただけますか?」
「君に咎はない。ただ私が、真実の愛を知ってしまっただけのことなのだ」
「真実の愛」
私は唖然として復唱してしまったのだけれど、殿下は気づかなかったようです。
「ああ、そうだ。メルディこそが我が真実の相手。私とメルディは運命で結ばれた、決して離れられない二人なのだ」
「は、はあ」
政略で結ばれた婚約の解消理由が「真実の愛と出会ったから」というのは、なかなかパンチが効いています。実際はそうであっても、普通はそれなりの建前を用意するものです。
かなり恋にやられてるんだろうなと思いました。あとで陛下にめちゃくちゃ怒られそうです。
とはいえ私としては、さほど殿下との仲を深められなかったことは事実です。文句を言われてばかりでした。政略結婚とはいえ、上手くいかない婚約が解消されるのはそう珍しいことではありません。
最後に、いち臣下としてこれだけは言っておきましょう。
「メルディ嬢には、多くの男性との噂がありますが」
「なんだと!? 君までメルディを侮辱するのかっ! いくら私と結婚したいからといって、なんという醜い……」
だめだこりゃ。
処置なし、と私はさっさと婚約解消を承諾して御前を失礼しました。
お花畑になった殿下を正すのは陛下や側近の方であって、ただの婚約者である私の仕事ではありません。
まあ、他の人にも言われてるみたいだから、何を言われても無理な状態なんでしょうけど。
殿下に婚約解消された私は、新たに顔合わせをした男性と縁を結び、婚約期間を経て結婚しました。
「君のような人と結婚できるだなんて、殿下には感謝だな」
誰にも聞こえないように、彼はたびたび、ひそやかに私の耳にささやきました。私もよ、と返事をします。ふふ、くすぐったい気持ちです。
ちょっとした不敬を誰にも知られないように楽しみながら、私たちは温かい家庭を築きました。
「私のどこを気に入ってくれたの?」
ある日、改めて聞いてみると、彼は笑って答えてくれました。
「たくさんあるよ。でも最初に目を惹かれたのは、歩き方かな? ご令嬢方はみな美しいけれど、君は遠くから見てもわかるくらいだった」
「まあ……」
私はかつて殿下に「のそのそ歩くな」と言われたことを思い出しました。
殿下のあの言葉のおかげで、意識して姿勢を正したのでした。あの頃は大変でしたけれど、慣れてしまえば当たり前になりました。
他にも殿下の指摘で直したことがいくつもあります。殿下はずっと文句ばかりでしたが、おかげでこうして彼と幸せになれたのですね。
ありがとうございます、殿下。
予想通りというか、殿下はメルディ様の奔放さに苦労しているようですが、運命とする苦労であれば、きっと未来に繋がります。
そういえば、こないだパーティでお会いしたときに「……美しくなったな」と初めて褒め言葉を頂きました。
それからじっとこちらを見ておりましたが、懐かしんでくださっていたのでしょうか?
夫には「君は鈍感なところもかわいいよ」と言われました。どういうことでしょう。
鈍感さは問題ですね。直すべきかと聞くと「そのままでいてほしい。僕の愛だけ伝わるように」だそうです。もう! パーティ会場で堂々とキスなんて、恥ずかしい。殿下にも見られてしまったではないですか。
「……理由を聞かせていただけますか?」
「君に咎はない。ただ私が、真実の愛を知ってしまっただけのことなのだ」
「真実の愛」
私は唖然として復唱してしまったのだけれど、殿下は気づかなかったようです。
「ああ、そうだ。メルディこそが我が真実の相手。私とメルディは運命で結ばれた、決して離れられない二人なのだ」
「は、はあ」
政略で結ばれた婚約の解消理由が「真実の愛と出会ったから」というのは、なかなかパンチが効いています。実際はそうであっても、普通はそれなりの建前を用意するものです。
かなり恋にやられてるんだろうなと思いました。あとで陛下にめちゃくちゃ怒られそうです。
とはいえ私としては、さほど殿下との仲を深められなかったことは事実です。文句を言われてばかりでした。政略結婚とはいえ、上手くいかない婚約が解消されるのはそう珍しいことではありません。
最後に、いち臣下としてこれだけは言っておきましょう。
「メルディ嬢には、多くの男性との噂がありますが」
「なんだと!? 君までメルディを侮辱するのかっ! いくら私と結婚したいからといって、なんという醜い……」
だめだこりゃ。
処置なし、と私はさっさと婚約解消を承諾して御前を失礼しました。
お花畑になった殿下を正すのは陛下や側近の方であって、ただの婚約者である私の仕事ではありません。
まあ、他の人にも言われてるみたいだから、何を言われても無理な状態なんでしょうけど。
殿下に婚約解消された私は、新たに顔合わせをした男性と縁を結び、婚約期間を経て結婚しました。
「君のような人と結婚できるだなんて、殿下には感謝だな」
誰にも聞こえないように、彼はたびたび、ひそやかに私の耳にささやきました。私もよ、と返事をします。ふふ、くすぐったい気持ちです。
ちょっとした不敬を誰にも知られないように楽しみながら、私たちは温かい家庭を築きました。
「私のどこを気に入ってくれたの?」
ある日、改めて聞いてみると、彼は笑って答えてくれました。
「たくさんあるよ。でも最初に目を惹かれたのは、歩き方かな? ご令嬢方はみな美しいけれど、君は遠くから見てもわかるくらいだった」
「まあ……」
私はかつて殿下に「のそのそ歩くな」と言われたことを思い出しました。
殿下のあの言葉のおかげで、意識して姿勢を正したのでした。あの頃は大変でしたけれど、慣れてしまえば当たり前になりました。
他にも殿下の指摘で直したことがいくつもあります。殿下はずっと文句ばかりでしたが、おかげでこうして彼と幸せになれたのですね。
ありがとうございます、殿下。
予想通りというか、殿下はメルディ様の奔放さに苦労しているようですが、運命とする苦労であれば、きっと未来に繋がります。
そういえば、こないだパーティでお会いしたときに「……美しくなったな」と初めて褒め言葉を頂きました。
それからじっとこちらを見ておりましたが、懐かしんでくださっていたのでしょうか?
夫には「君は鈍感なところもかわいいよ」と言われました。どういうことでしょう。
鈍感さは問題ですね。直すべきかと聞くと「そのままでいてほしい。僕の愛だけ伝わるように」だそうです。もう! パーティ会場で堂々とキスなんて、恥ずかしい。殿下にも見られてしまったではないですか。
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