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自宅前にて
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それにしてもほんと、お母さんはいつも呑気に支度をしている。
病院の予約時間が迫っているというのに、健康保険証を探して家の中を探し回っていた。
前の日にちゃんと準備しておけよと思うが、まぁいいや。考えるのが面倒くさい。少しぐらい遅れても大丈夫だろう。
僕はひとまず自分だけ車に乗り、エンジンをかけてシートに腰を鎮める。
仕事が休みの日にお母さんを病院に連れて行かなければならないのは、なんだか疲れるが仕方のないことだ。年々お母さんの体力は落ちていき、怪我や病気が増えていく。その面倒を見る運命から、僕は逃れられない。
仕方のないことだ……
お母さんを待つ間、僕はラジオのボリュームを上げた。いつものパーソナリティが、昨今の話題について取り上げている。遠くの物が溢れる都会で暮らす彼ら彼女らの存在は、田舎で暮らす僕にとっては創作物の世界の住人のように思えてくるから不思議なものだ。
その時、パーソナリティが他愛無い話の途中で「只今速報が入りました」と言った。そして、「え?」と驚く。
ん?いったいどうしたのだろう?
と、僕がラジオの声に集中すると、パーソナリティは早口で言葉を連ねた。
「た……大変です!!巨大な隕石が、地球の大気圏に突入しました!!」
は?なんだろう?ラジオドラマかな?
はっきり言って、そんな隕石の話題を言われても現実味がない。しかし、こんな形でドラマが始まるとは思えないし……と、僕はスマホを見る。
すると、ニュース速報の通知がポンポン届いていた。僕はその一つをみる。
「え?」
そこにある文字に思わず声が出た。
なんと、そこには「あと2分ほどで隕石衝突。全世界に甚大な被害」
いや、あと2分って……
その時だ、車がグラグラと揺れた。地震ではない、空気が揺れている感じがする。鳥がギャアギャアと飛び立つ。さっきまで穏やかだった雲が、急速に流れていった。
まさか、本当に?
本当に、この世界は終わってしまうのか?
でも、あと2分でどうしろっていうんだ?
いや、というか、すでにあと1分ぐらいじゃないか?
もうどうする事もできない。このまま世界が終わるのを待つしかないのか?
残りの時間、僕は動画サイトを開き、ライブ配信に注目した。膨大な数の視聴者がいる。読み込むのに時間がかかる。いや、こんな事をしている間にも、隕石は確実に地球に迫っているのでは?
あぁ、結局最後まで僕はいつもと変わらない行動をしている……
その時、さっきの揺れとは違う、さらなる強い揺れが起きた。
まるで箱の中に入れられてブンブンと振られているような感覚。それほどまでに大きな揺れで、車が横倒しになる。ダメだ……死ぬ……僕の最後はこんなにもあっけなかったのか。
何も成し遂げぬまま、僕は……
っと、思ったところでお母さんが助手席の扉を開けた。
「保険証、最初っからカバンに入ってた」
「あぁ」と僕は現実に戻る。「ちゃんと確認しなきゃね」
ラジオのパーソナリティは昨今の話題を膨らませてゲストと一緒にゲラゲラ笑う。
鳥は穏やかに囀り、雲は優しく流れている。早く病院に行かなければ。
妄想は終わりにしよう。
病院の予約時間が迫っているというのに、健康保険証を探して家の中を探し回っていた。
前の日にちゃんと準備しておけよと思うが、まぁいいや。考えるのが面倒くさい。少しぐらい遅れても大丈夫だろう。
僕はひとまず自分だけ車に乗り、エンジンをかけてシートに腰を鎮める。
仕事が休みの日にお母さんを病院に連れて行かなければならないのは、なんだか疲れるが仕方のないことだ。年々お母さんの体力は落ちていき、怪我や病気が増えていく。その面倒を見る運命から、僕は逃れられない。
仕方のないことだ……
お母さんを待つ間、僕はラジオのボリュームを上げた。いつものパーソナリティが、昨今の話題について取り上げている。遠くの物が溢れる都会で暮らす彼ら彼女らの存在は、田舎で暮らす僕にとっては創作物の世界の住人のように思えてくるから不思議なものだ。
その時、パーソナリティが他愛無い話の途中で「只今速報が入りました」と言った。そして、「え?」と驚く。
ん?いったいどうしたのだろう?
と、僕がラジオの声に集中すると、パーソナリティは早口で言葉を連ねた。
「た……大変です!!巨大な隕石が、地球の大気圏に突入しました!!」
は?なんだろう?ラジオドラマかな?
はっきり言って、そんな隕石の話題を言われても現実味がない。しかし、こんな形でドラマが始まるとは思えないし……と、僕はスマホを見る。
すると、ニュース速報の通知がポンポン届いていた。僕はその一つをみる。
「え?」
そこにある文字に思わず声が出た。
なんと、そこには「あと2分ほどで隕石衝突。全世界に甚大な被害」
いや、あと2分って……
その時だ、車がグラグラと揺れた。地震ではない、空気が揺れている感じがする。鳥がギャアギャアと飛び立つ。さっきまで穏やかだった雲が、急速に流れていった。
まさか、本当に?
本当に、この世界は終わってしまうのか?
でも、あと2分でどうしろっていうんだ?
いや、というか、すでにあと1分ぐらいじゃないか?
もうどうする事もできない。このまま世界が終わるのを待つしかないのか?
残りの時間、僕は動画サイトを開き、ライブ配信に注目した。膨大な数の視聴者がいる。読み込むのに時間がかかる。いや、こんな事をしている間にも、隕石は確実に地球に迫っているのでは?
あぁ、結局最後まで僕はいつもと変わらない行動をしている……
その時、さっきの揺れとは違う、さらなる強い揺れが起きた。
まるで箱の中に入れられてブンブンと振られているような感覚。それほどまでに大きな揺れで、車が横倒しになる。ダメだ……死ぬ……僕の最後はこんなにもあっけなかったのか。
何も成し遂げぬまま、僕は……
っと、思ったところでお母さんが助手席の扉を開けた。
「保険証、最初っからカバンに入ってた」
「あぁ」と僕は現実に戻る。「ちゃんと確認しなきゃね」
ラジオのパーソナリティは昨今の話題を膨らませてゲストと一緒にゲラゲラ笑う。
鳥は穏やかに囀り、雲は優しく流れている。早く病院に行かなければ。
妄想は終わりにしよう。
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