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プロローグ
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――その昔、現代に六龍《りくりゅう》と伝承される龍がいた。
「くっ流石に同時戦闘はきついな……」
男は独り言を呟く。
収穫期を逃し朽ち果てた麦芽のような黒ずみや綻びをみせるマント。
されどそれを纏う姿からはなぜか『最強』を感じられずにはいられない。
男は今、龍刻山《りゅうこくざん》山頂にいた。
人工的に造られた円形広間のような地で、過去に訪れた挑戦者達の鮮血を飲み込んだマグマが山頂脇をドロリドロリと流れている。
その様子はこの地を訪れた者に死へと誘うような錯覚を与える。
そんな地獄のような地で男が対峙していたのは――
――グオオオオオオオッッ!!
城1つ程の巨体、に肉厚な両翼。
見るだけで体温を上昇させそうな紅蓮の眼からは、他種族を寄せつけない唯一無二の存在であることを確信させる。
山頂を囲むように君臨している5匹の龍《ドラゴン》は、開戦を告げるかの如く、目の前にいる不心得者へと咆哮を浴びせた。
纏っている黄土色のマントが靡き、地面に転がっている石が地響きにより小刻みに振動しながら移動している。
それでも男は狼狽える様子を見せず、歴戦を感じさせる手袋をはめた右手を、自身の愛刀に添えた。
「全く、お粗末な龍だなこりゃ」
――ブオオオォォォッッ!!
1匹の龍が轟音を立て爆炎を吐くと、ひらりと蝶のように躱す男の横を灼熱が駆け抜けた。刹那、爆炎を放ち首を差し出す体勢となっている龍の元へと猛スピードで接近した男は、喉元を抉りとるように鋭い斬撃を加えた。
しかし宝石のように輝く鮮紅の鱗が刃を弾く。
男は斬撃動作に連動して龍とすれ違うように距離をとった。
「うひょ~。おっかねえわ……」
山頂脇に目を向けると、龍の爆炎に耐えられなかった岩石が風化しており、食わずとも凄まじい威力であった事がわかる。
5匹は喉を鳴らしながら上空で円を描くように飛び回り、不心得者の様子を伺っている。
男が再び視線を向けると、蒼雷を纏う龍が両翼を広げ、金色の顎髭を靡かせながら凄まじいスピードで下降し一直線に襲いかかってくる。
――グルルアアァァァッッ!!
男の額に一滴の汗が流れる。
身構えた男は再び刀に手を添えると、一直線に向かってくる龍の左翼へと視線を固め迎え撃つ形で一気に剣を縦に振り下ろす。
「うらぁぁぁぁぁあああっっ!!!」
縦に振り下ろされた刃と左翼の鱗が衝突し、削り合う不協和音が奏でられる。鱗を突破した刃は左翼付け根の筋肉を断ち切るように入る。
突撃スピードを維持したままの蒼雷龍は、軌道を変えず山頂脇の岩石へと衝突した。
――バゴォォォンッッ!!
岩石へと激しく突撃した蒼雷龍は左翼を断ち切られており、その場で転げ回っている。
そんな様子を確認すると、男は自身の腰に下げている6つの短刀に視線をやる。
「そろそろ頃合いか」
喉元を震わせ頭を振り、上空で不快感を露わにする残る龍。
男は地上で転げ回る蒼雷龍へと再度視線を送ると、短刀を1本抜き蒼雷龍へと猛スピードで迫りながら、詠唱を唱えた。
「??=&,、、」
謎の詠唱を終えると、男が右手にもつ短刀が発光する。
男は己の肉体で風を斬るように迫りそのまま飛躍した。
上空で短刀を持つ右腕を振りかぶると、そのまま上腕二頭筋が膨れ上がるほどの力を込め、龍の弱点である額へと短刀を刺した。
――グワァァァァ……!!
額へと押し込まれた短刀は、肉厚な龍の前頭筋をブチブチと引き裂く。それに連動するかのように龍は泣き叫び、次第に
男が山頂へと着地すると、短刀が刺さった額からは白い光が溢れ出していた。
「うわ……。マジじゃん……」
その後、他の4匹も同様に剣へと封印され、先程まで戦場であった山頂は『何もなかった』と伝えるように静寂をむかえた。
封印を終えた男は、下山しようと山頂へ背を向け帰路を進もうとした。
が、ナニカが自分へ迫ってきている感覚が身体中に走った。
雲に覆われた上空を見上げると、肉厚な両翼の音を鳴らしながら、禍々しい白い龍が山頂めがけ迫ってきていた。
男は白き龍を目視し、急ぎ戦闘態勢へと戻るが、白き龍は山頂へ着地すると、男に向け意思疎通を図った。
「貴様……神の遣いである我ら六龍の封印を図るとは……愚かな人間だ」
男は龍の投げかけに呆気を取られた。一瞬、マグマの流れる音だけが龍と人の聴覚へと入り込む。
男は首を振り自我を取り戻すと、返答を返す。
「お前喋れるのか……。まあなんだ。神の遣いか何だかしらねえが、許してくれ」
「我ら六龍を愚弄する発言までするか。しかしその内の五匹を封印するとは、貴様一体……何者だ」
先程5匹の龍を封印したようには見えない様子を見せた男は、顔の前で手を合わせ、片目を瞑り白き龍へ謝意の込もっていない謝罪をした。
――それから男と白き龍のやり取りは一時間程続き
「そうか。貴様は……。よかろう。ならば我も封印されよう」
「助かる」
微笑みながらそう語りかけた男は、額へ短刀を刺し、白き龍の前頭筋を引き裂き封印した。
――その後、男は計六本になったそれを『始祖の剣』と名ずけ、異なる特徴をもった剣術『龍派《りゅうは》』として後世へと伝承する。
「くっ流石に同時戦闘はきついな……」
男は独り言を呟く。
収穫期を逃し朽ち果てた麦芽のような黒ずみや綻びをみせるマント。
されどそれを纏う姿からはなぜか『最強』を感じられずにはいられない。
男は今、龍刻山《りゅうこくざん》山頂にいた。
人工的に造られた円形広間のような地で、過去に訪れた挑戦者達の鮮血を飲み込んだマグマが山頂脇をドロリドロリと流れている。
その様子はこの地を訪れた者に死へと誘うような錯覚を与える。
そんな地獄のような地で男が対峙していたのは――
――グオオオオオオオッッ!!
城1つ程の巨体、に肉厚な両翼。
見るだけで体温を上昇させそうな紅蓮の眼からは、他種族を寄せつけない唯一無二の存在であることを確信させる。
山頂を囲むように君臨している5匹の龍《ドラゴン》は、開戦を告げるかの如く、目の前にいる不心得者へと咆哮を浴びせた。
纏っている黄土色のマントが靡き、地面に転がっている石が地響きにより小刻みに振動しながら移動している。
それでも男は狼狽える様子を見せず、歴戦を感じさせる手袋をはめた右手を、自身の愛刀に添えた。
「全く、お粗末な龍だなこりゃ」
――ブオオオォォォッッ!!
1匹の龍が轟音を立て爆炎を吐くと、ひらりと蝶のように躱す男の横を灼熱が駆け抜けた。刹那、爆炎を放ち首を差し出す体勢となっている龍の元へと猛スピードで接近した男は、喉元を抉りとるように鋭い斬撃を加えた。
しかし宝石のように輝く鮮紅の鱗が刃を弾く。
男は斬撃動作に連動して龍とすれ違うように距離をとった。
「うひょ~。おっかねえわ……」
山頂脇に目を向けると、龍の爆炎に耐えられなかった岩石が風化しており、食わずとも凄まじい威力であった事がわかる。
5匹は喉を鳴らしながら上空で円を描くように飛び回り、不心得者の様子を伺っている。
男が再び視線を向けると、蒼雷を纏う龍が両翼を広げ、金色の顎髭を靡かせながら凄まじいスピードで下降し一直線に襲いかかってくる。
――グルルアアァァァッッ!!
男の額に一滴の汗が流れる。
身構えた男は再び刀に手を添えると、一直線に向かってくる龍の左翼へと視線を固め迎え撃つ形で一気に剣を縦に振り下ろす。
「うらぁぁぁぁぁあああっっ!!!」
縦に振り下ろされた刃と左翼の鱗が衝突し、削り合う不協和音が奏でられる。鱗を突破した刃は左翼付け根の筋肉を断ち切るように入る。
突撃スピードを維持したままの蒼雷龍は、軌道を変えず山頂脇の岩石へと衝突した。
――バゴォォォンッッ!!
岩石へと激しく突撃した蒼雷龍は左翼を断ち切られており、その場で転げ回っている。
そんな様子を確認すると、男は自身の腰に下げている6つの短刀に視線をやる。
「そろそろ頃合いか」
喉元を震わせ頭を振り、上空で不快感を露わにする残る龍。
男は地上で転げ回る蒼雷龍へと再度視線を送ると、短刀を1本抜き蒼雷龍へと猛スピードで迫りながら、詠唱を唱えた。
「??=&,、、」
謎の詠唱を終えると、男が右手にもつ短刀が発光する。
男は己の肉体で風を斬るように迫りそのまま飛躍した。
上空で短刀を持つ右腕を振りかぶると、そのまま上腕二頭筋が膨れ上がるほどの力を込め、龍の弱点である額へと短刀を刺した。
――グワァァァァ……!!
額へと押し込まれた短刀は、肉厚な龍の前頭筋をブチブチと引き裂く。それに連動するかのように龍は泣き叫び、次第に
男が山頂へと着地すると、短刀が刺さった額からは白い光が溢れ出していた。
「うわ……。マジじゃん……」
その後、他の4匹も同様に剣へと封印され、先程まで戦場であった山頂は『何もなかった』と伝えるように静寂をむかえた。
封印を終えた男は、下山しようと山頂へ背を向け帰路を進もうとした。
が、ナニカが自分へ迫ってきている感覚が身体中に走った。
雲に覆われた上空を見上げると、肉厚な両翼の音を鳴らしながら、禍々しい白い龍が山頂めがけ迫ってきていた。
男は白き龍を目視し、急ぎ戦闘態勢へと戻るが、白き龍は山頂へ着地すると、男に向け意思疎通を図った。
「貴様……神の遣いである我ら六龍の封印を図るとは……愚かな人間だ」
男は龍の投げかけに呆気を取られた。一瞬、マグマの流れる音だけが龍と人の聴覚へと入り込む。
男は首を振り自我を取り戻すと、返答を返す。
「お前喋れるのか……。まあなんだ。神の遣いか何だかしらねえが、許してくれ」
「我ら六龍を愚弄する発言までするか。しかしその内の五匹を封印するとは、貴様一体……何者だ」
先程5匹の龍を封印したようには見えない様子を見せた男は、顔の前で手を合わせ、片目を瞑り白き龍へ謝意の込もっていない謝罪をした。
――それから男と白き龍のやり取りは一時間程続き
「そうか。貴様は……。よかろう。ならば我も封印されよう」
「助かる」
微笑みながらそう語りかけた男は、額へ短刀を刺し、白き龍の前頭筋を引き裂き封印した。
――その後、男は計六本になったそれを『始祖の剣』と名ずけ、異なる特徴をもった剣術『龍派《りゅうは》』として後世へと伝承する。
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