ソード・オブ・ホワイト–魔術至上主義の世界で最強剣士を目指す–

インドアな梨

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第4話 絶対絶命

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 アルバとヴァリオスは畳の上で向かい合い座っている。
 ヴァリオスは白く長い顎髭を撫でると、アルバに白鱗流について続けて話した。

「白鱗流は扱い方はおろか、鍛え方すら分かっておらん。故に覚醒のさせ方も不明じゃ」
「覚醒……」

 5つに分かれたそれぞれの龍派には、覚醒と呼ばれる段階が存在する。
 歴史上、その境地に至った者は1人だけ存在する。
 覚醒した能力を保持する者は『世界を滅ぼせる』ほどの強大な力を持つとされているが、その力を肉眼で捉えた事のある者はいない。

 「白鱗派の始祖の剣は確かに存在する。じゃが、不明な点が多すぎて『誰かが作った玩具』などと剣士界隈では馬鹿にされておる」

 自分の龍派を初めて知ったアルバはその響きの良さに少々期待を覚えたが、玩具などと馬鹿にされている現状を聞き、肩を落とした。

「僕はその玩具を振り回すだけのポンコツ龍派の剣士という事ですか」
「否」

 呆れたような顔で話すアルバに対し、ヴァリオスは至って真面目な表情で否定した。
 すると、重い腰を上げた剣老は部屋の奥から何やら数珠と短刀を持ってきた。

「アルバよ。伝承ではこの数珠と短刀に英雄が白き龍を封印したとされておる。
しかし、今日まで誰が付けても一切反応を見せてこなかった。故に、現状剣術界隈の間では玩具扱いされておるが……」

 ヴァリオスは無念に溢れた表情で話した後、真っ直ぐな目線をアルバへ送り力強く話した。

「アルバよ、お主にこれを託そう」

 力強く短刀を握るヴァリオスの拳からは、何やら決意のようなものが感じられる。
 アルバはそんなヴァリオスから、バトンを受け取るように譲り受けた。

「あっありがとうございます。でも、師匠はなんで僕が素質をもっている事を……」
「ホッホッホ。わしが素質を持っておったからじゃよ。じゃが、その玩具がわしに反応を見せる事はなかった」

 ヴァリオスは衝撃の事実を盛大に笑いながら伝えると、アルバに続けて話した。

「まさかわしが生きておる間に、また素質をもつ子が産まれるとはびっくりじゃった。
アルバよ。剣術創造以来誰にも扱えなかった龍派で、己の運命を斬り裂け。お主なら出来る。わしの弟子だからな」
「師匠……」

 アルバはヴァリオスへ深く腰を折り曲げ礼を言うと、早々に帰宅した。
(そういえば師匠もこれのこと玩具って言ってたな……)

--

「本当に、こんな短刀に封印されているのか……」

 部屋に戻ったアルバは、先程受け取った数珠と短刀を半信半疑で見つめていた。
 アルバは今日1日の出来事を振り返りながら前髪を自身の息で吹き上げると、短刀を手に取った。

「本当にこんな短刀に龍が封印されてるのか?」

 携帯電話2つ分程の大きさで、持ち手には白い包帯のようなものが巻かれている。
 刃と持ち手の間には純白のドレスを連想させる白い宝石のようなものが埋められている。
 突然、俄には信じ難い話を聞かされた15歳の少年は、現状をうまく把握できていなかった。
 もし本当の話なら浮き足が立つような、されど不安で押しつぶされそうになるような。アルバは己の感情と向き合いながらも、最後には15歳らしい考えに辿り着く。

「師匠でも使いこなせなかった白鱗流。案外、簡単に反応しちゃったりして」

 アルバは数珠を手首へと着けた。
が、期待も虚しく、当たり前に数珠が反応を見せることはなかった。

「何だ。やっぱりおもちゃか」

 期待はずれの結果に天井を見てため息を吐くアルバ。
 そんなタイミングで、数珠が白紫に発光している事にアルバは気づけるはずもなかった。

--

 師匠の元へ出向いてから数ヶ月。
 数珠と短刀を引き継いだアルバは、今朝も学校へ登校していた。
 アルバはあれからお守りをつける気持ちで手首に数珠を付けているが、短刀
に関しては学園に持ち込むのは物騒すぎるため諦めた。

「おはよー! アルバ君!」
「おはようございます!」

 通学路である王都の繁華街を歩くアルバに、後ろから声をかけたのはラエルだ。
 その金髪からは天使のような印象を受け、加えて鼻は高くパッチリとした目からは数々の男子を魅了してきた事が聞かずとも分かる。

 そんなアルバ達は今日、大事な中間魔術試験を控えていた。
 
「今日は中間魔術試験だね」
「そうですね。今までありがとうございました」

 アルバは情けない表情でラエルへと返答を返した。
 そうなるのも仕方がない。
 今まで剣術一本で育ってきたアルバにとって、魔術試験という課題は容易に諦めがつくものだった。
 ナバス学園では、この中間魔術試験を合格できない生徒が新学期に進めることはない。退学か留年かの選択を迫られ、その殆どが退学していく。

「何ふざけたこと言ってるの! 笑えないよ」
「ごめん……。でも僕、魔術は本当に使えなくて」

 ムスッと頬を膨らませながら叱るように話すラエル。
 そんなラエルに対し、アルバは精魂の尽きた表情で弱音を吐く事しか出来なかった。

「わかった。じゃあ私が今から少しだけ教えてあげるね」
「えっ?」

 ラエルはそんな様子を見ていてもたってもいられなくなり、アルバに少しでも希望を持ってもらうため魔術を教える事を決意した。
 中間魔術試験の内容は主に三つ。
 学年全体で指定された初級魔法を発動させる。
 自分の属性である初級魔法を発動させる。
 最後に、属性問わず中級魔法を発動させるだ。

 アルバは不安そうな表情を浮かべつつも、藁にもすがる思いでラエルの発言に耳を傾けた。
 
「アルバ君、魔力が流れる感覚はもう掴んでる?」
「はい。ある程度は……」

「魔術を使用する時、1番大切な事は、魔力の流れをイメージする事なの」
「イメージする事は得意です」

 アルバは『想像が戦いを作る』と幼少期よりヴァリオスに叩き込まれていた。
 そのため、イメージする事はいつしか得意分野になっていた。

「魔力は血液と同じ。体内に流れている血液の流れを強くイメージすることで自由に運ぶことができるの。でも、魔力の量は人によって違うの。それを無視すると……」
「すると……?」
「干物みたいになっちゃうから気をつけてね」


 天使のような笑みで恐怖心を煽るような発言をするラエルに、アルバは新たな一面を見た気がした。
 
「じゃあ、見本を見せるね。私の属性は『風』だから、中間試験では今から見せるフーリンっていう中間魔術を披露するつもりだよ」

 ラエルはそう話すと詠唱を始めた--

「大いなる大地よ。風神の加護を我両腕の元に」

 詠唱を唱えると、ラエルは両腕を前に出した。
 すると、風が規則性をもって吹き始める。
 規則性をもった風は、そのまま小さな竜巻へと変化し、ラエルの足元に落ちていたゴミを空中へ浮遊させた。

「こんな感じっ! アルバ君もやってみて」

 簡単に中級魔術を成功させたラエルを見て一瞬で自分にできるわけがないと悟ったアルバだったが、この流れで「自分にはできない」とは言えないため、とりあえずラエルのように手を前へ突き出し詠唱を唱えた。
 しかし、アルバの予想通り特に風が吹くことも無く失敗におわった。

「まあ……試験までに何とかするよ……」
「うっうん! 応援してるね……」

 2人の間に気まずい空気が流れる。
 不安に暮れた2人だったが、アルバはこの試験で運命を大きく左右する出会いを果たすことになる。
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