前世知識は最強!異世界改革!

namisan

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第49話 荒野を拓く『鉄の馬』の設計図

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 新都市アリアの建設は順調に進んでいる。
 だが、市長として現場を視察していた俺は、ある重大な問題に直面していた。
「……広すぎるな」
 目の前に広がるのは、地平線まで続く広大な荒れ地だ。
 魔法で平らにならしたとはいえ、土は硬く締まり、雑草の根が張り巡らされている。
 入植者たちは鍬(くわ)や鋤(すき)を振るっているが、一人が一日で耕せる面積などたかが知れている。
「このままでは、春の作付けに間に合いませんな」
 隣に立つセバスも、手帳を見ながら渋い顔をしている。
 牛や馬を使っても限界がある。アリアの農地面積は、これまでの常識を遥かに超えているのだ。
「人海戦術はもう限界だ。……セバス、ドワーフたちを呼んでくれ。産業革命(インダストリアル・レボリューション)を起こすぞ」
 ***
 アリア市庁舎の裏手に急造された『開発工房』。
 そこには、冷蔵庫開発で腕を上げたドワーフの棟梁、ガランとその弟子たちが集められていた。
「若様、次はなんだ? もっと冷える箱か?」
「いや、今回は『動く箱』だ」
 俺は一枚の巨大な図面を作業台に広げた。
 そこに描かれているのは、武骨な鉄の塊。巨大な後輪と、小さな前輪を持つ奇妙な乗り物だ。
「こいつの名は『魔導トラクター(牽引車)』。土を耕すための最強の相棒だ」
「トラクター……? 馬車とは違うのか?」
 ガランが目を丸くする。
「馬車は生き物が引く。だがこいつは、魔石の力で自ら走る『鉄の馬』だ。疲れを知らず、餌も食わず、百人力のパワーで土を掘り返す」
 俺は図面の中心部、エンジンの位置を指差した。
 ここが心臓部だ。
 前世の内燃機関(エンジン)を再現するのは難しいが、この世界には魔法がある。
【開発目標:魔導回転機関(マジック・モーター)】
「冷蔵庫は冷気を出したが、こいつに必要なのは『回転』だ。反発し合う属性の魔力回路を組み込み、軸を強制的に回転させる」
 俺は黒板に構造図を書いた。
 
 * 魔石スロット: 燃料タンク代わり。
 * 魔導モーター: 魔力を回転運動に変換する。
 * 変速機(ギアボックス): 回転数をトルク(力)に変える歯車の組み合わせ。
「ガラン、お前たちの鍛冶技術で、絶対に壊れない鋼鉄の歯車を作ってくれ。噛み合わせの誤差はゼロだ」
「へっ! ドワーフを舐めるなよ。髪の毛一本通さない精度で作ってやるわ!」
 次に俺は、車体後部に取り付ける重要パーツを指差した。
【アタッチメント:ロータリー耕運機】
「ただ走るだけじゃない。後ろにこの『回転する爪』を取り付ける。モーターの動力をここにも伝え、爪を高速回転させて土を粉々に砕くんだ」
 入植者たちが鍬を振り下ろして一日かかる作業を、こいつなら数分で終わらせる。
 さらに、後ろのパーツを付け替えれば、種の種まき、肥料散布、収穫物の運搬までこなせる万能マシンだ。
「すげえ……。こいつができりゃ、農業が変わるぞ」
「ああ。だが、課題は山積みだ。泥に足を取られないタイヤの溝、振動に耐えるフレーム、そして何より魔力効率」
 俺は職人たちを見渡した。
「春まで時間がない。……やれるか?」
 ガランがニヤリと笑い、ハンマーを担ぎ直した。
「愚問だな。若様の無茶振りは今に始まったことじゃねえ! 野郎ども、炉に火を入れろ! 『鉄の馬』の産声を上げさせるぞ!」
「「「オオオオッ!!」」」
 工房に熱気が満ちる。
 広大なアリアの大地を征服するための、第一の鍵。
 『魔導トラクター』の開発プロジェクトが、火花と共にスタートした。

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