前世知識は最強!異世界改革!

namisan

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第59話 豊穣の宴と、未来への滑走路

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 農業都市アリアの完成と、空前の大豊作を祝し、エルガレア領では大規模な『第一回・アリア収穫祭』が開催されることになった。
 当日の朝。
 アリアの中央広場から、居住区、さらには王都へと続く街道まで、色とりどりの旗がはためき、かつてないほどの熱気に包まれていた。
「すげえ! こんなに人が集まるのか!」
「王都からも観光客が押し寄せているぞ!」
 広場には、アリアの食材をふんだんに使った屋台がずらりと並んでいる。
 ***
【屋台1:アリア風パスタ(スパゲッティ)】
 製粉工場で挽いたばかりの強力粉を使った、モチモチの生パスタ。
 これに、瓶詰めにされた「完熟トマトソース」をたっぷりとかけ、酪農プラント直送の粉チーズを雪のように振りかける。
「うめえええ! なんだこの赤い麺は!」
「酸味とコクがたまらねえ!」
【屋台2:石窯焼きピザ】
 ドワーフが作った移動式石窯で、薄く伸ばした生地を焼く。
 具材はシンプルに、トマトソース、バジル、そしてとろけるモッツァレラチーズ(マルゲリータ)。
「チーズが伸びるぞ! 熱々だ!」
「片手で食べられるのがいいな!」
【屋台3:特製クレープ】
 デザートには、薄く焼いた生地に、砂糖を加えて泡立てた生クリームと、鮮やかな赤色のイチゴジャムを巻いたクレープ。
「甘酸っぱくて最高! ジャムってこんなに美味しいのね!」
「何個でも食べられちゃうわ!」
 胃袋を掴まれた人々は、笑顔で料理を頬張り、アリアの恵みを堪能していた。
 それは単なる食事ではない。
 自分たちが汗水流して作った作物が、こうして「美味しい」と言ってもらえる。入植者たちにとって、これ以上の喜びはなかった。
 ***
 正午。
 市庁舎の鐘が鳴り響くと、メインストリートでパレードが始まった。
 先頭を行くのは、綺麗に磨き上げられ、花で飾られた『魔導トラクター』と『コンバイン』の隊列だ。
 運転するのは、誇らしげな顔をしたアリアの農民たちと、整備を担当したドワーフたち。
 ブゥゥゥゥン……!!
 そして上空には、編隊を組んだ『ドローン防除部隊』が飛来し、空から色とりどりの花びらと、キャンディを撒き散らす。
「見て! あれが噂の『鉄の馬』よ!」
「空飛ぶ機械だ! かっこいい!」
 子供たちが歓声を上げて追いかけ、大人たちも拍手を送る。
 かつては「魔法使いだけの特権」だった技術が、今や彼らの生活を支える頼もしい相棒となっていた。
 ***
 パレードの終着点である市庁舎のバルコニーに、俺――リック・フォン・エルガレアが立った。
 隣には、父ロイドと、補佐役のセバスだけが控えている。
 俺が手を挙げると、広場の喧騒が静まり返った。
「アリアの市民、そしてエルガレアの領民たちよ!」
 俺は拡声の魔道具を使い、語りかけた。
「一年前、ここはただの荒野だった。誰もが『無謀だ』と言った。だが、見ろ! 今、ここには黄金の小麦があり、豊かな水が流れ、笑顔が溢れている!」
 俺は広場を埋め尽くす人々を見渡した。
 彼らの多くは、職を求めて他領から流れてきた移民たちだ。だが今、その顔には「アリア市民」としての誇りが宿っている。
「これは、魔法の力だけじゃない。……君たちが土にまみれ、新しい技術(機械)を恐れずに使いこなした結果だ。この豊穣は、君たち自身の勝利だ!」
 わぁぁぁぁぁぁぁっ!!
 割れんばかりの歓声と拍手が沸き起こった。
 涙を流して抱き合う者、帽子を空に投げる者。
 父ロイドも、眼下の光景に満足げに頷いていた。
「……見事だ、リック。お前は荒野だけでなく、人々の『心』まで耕したようだな」
「ええ。ですが父上、これはゴールじゃありません」
 俺はバルコニーから、賑わうアリアの街並みと、その向こうに広がる地平線を見つめた。
「食料という『土台』は固まりました。……次は、この豊かさを守り、さらに発展させるための『教育』と『交通』……そして『防衛』が必要です」
 腹が満たされれば、人は学びを求め、遠くへ行きたくなる。そして、富める国は外敵に狙われる。
 農業革命の成功は、次なる改革へのスタートラインに過ぎない。
(さて、忙しくなるぞ)
 俺は空に舞うドローンを見上げ、ニヤリと笑った。
 前世の知識と魔法があれば、不可能なことなど何もない。
 アリアの風に乗って、新しい時代の香りが世界中へ広がろうとしていた。
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