ハーレムでハブられてるけど、一番愛してる自信ある!

珈琲きの子

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第二章

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 その雑用係とまともに顔を合わせるのは夜の一度のみ。俺の収納袋を雑用係に預けるからだ。二つの袋の中身を整理し、補充するものがないか確認するのもあいつの仕事。

「整理ならここでしろよ」

 部屋に戻ろうとする雑用係を呼び止めた。ただ、どんな奴なのか興味が湧いた。

「え…、ここでですか?」
「なんだ? なんか文句あんのか?」
「い、いいえ、そんなことは…」
 
 俺が何を考えているのかと顔色を窺いながらも、「では、失礼します」と部屋の角に座る雑用係。中身を確認しながら補充が必要なもののメモを取り出した。

 時間が掛かりそうだ。
 そう判断した俺は収納袋を取り上げ、手を突っ込むと、ごとりと音を立てながら丸太をくりぬいた簡易な作りの浴槽が現れた。こいつに気を使う必要もない。
 収納袋を突き返し、魔法で満たした水を熱めに沸かしてから服を脱ぎ散らかし湯に浸かった。
 男はといえば、ハトが豆鉄砲食らったような顔をしていた。

「早く片付けろよ」

 ぽかんと口を開け呆然とこちらを見ていたが、一言かければ、大慌てで手を動かし始めた。

「あ、服も綺麗にしておきましょうか」

 俺の装備品や服を洗浄するのに丁度いいと気付いたらしい。脱ぎ散らかしたものを手に取り集めて、また部屋の隅に座った。
 男が服を浄化し、畳み始めるのをぼんやりと眺めた。収納袋に突っ込んだだけで服が綺麗になるわけじゃないらしい。こいつがしてたんだな。
 俺が眺めているのに気付いて、キョトンとしてからへらっと笑う。何の毒気もない笑み。雑用を全く苦とも思っていない様子だった。何考えてるかわかんねぇな。

 風呂から上がり、ベッドに横になりながらも、ボーっと外を眺めていれば、移動の疲れもあって、すとんと眠りに落ちてしまった。
 あいつが部屋にいるのを忘れていたのは俺の所為じゃなく、あいつの存在感がないからだ。

 その日から、風呂に入っている間、雑用係が荷物の整理をし、俺の脱ぎ散らかした服を片づけて、弱っちい浄化魔法で一つ一つ丁寧に綺麗し畳んでいくのを、時に長すぎて逆上せそうになりながらも眺めるのが習慣になった。

 すると、「勇者様、一つお願いが…」と珍しく自分から声をかけてきた。却下する態で、こいつが何を望むのかと黙って聞いていれば、
 
「お菓子は一日一つにしませんか? その…体にもあまり良くありませんので…」

 女共のために買い溜めていた焼き菓子をちょろまかしていたのがバレていたらしい。聞こえていないふりをして、返事はしなかった。
 

 しばらくすると、調子に乗って来たのか、媚びの売り方に躊躇がなくなって来た。よほど魔王討伐の報酬がいいんだろう。それがなければ俺に諂う必要ねぇからな。
 朝俺を起こし、洗顔後にはタオルを差し出す。朝食後にはいつのまにか受注した依頼票を持ってくる。出発すれば、女共の邪魔をしないためかひっそりとついて来て、昼食にはスープとパン又はワンプレートを用意。町に着けば、俺と女共が夕食を取っている間に街に出かけ、夜は俺の部屋に来て荷物の整理。そして俺より後に寝る。
 
 昼間は戦わないとはいえ、俺と同じ距離を移動しているのだから、そんな生活をしていれば当然男の目の下にはクマができ、そのクマは濃くなる一方だった。体調管理できねぇとか、バカだろ。
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