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少年期・学園編
2-17 魔王様、寮に入る
しおりを挟む「皆さん初めまして! 1年のSクラスを担当することになりましたスィニアです! 魔法クラスでも教えます。みんな宜しくね!」
「「「 よろしくお願いします 」」」
残念美人教師スィニアの挨拶で、俺の学園生活はスタートした。
「では皆さんにも自己紹介をしてもらいます。まずはエルリック君から順番に挨拶していきましょうねー。得意な魔法とか武術も混ぜてね。できるかなー? エルリック君?」
うわ、子供扱いはやめてくれ。
子供だけどさ。
孤児院の常連であるスィニアは子供の扱いに慣れているんだろうなー、などとどうでもいいことを思いながら、あらかじめある程度考えておいた挨拶を思い浮かべたエルリック。
「俺はエルリック・マクシュガル、五歳です。得意な魔法は、火魔法とか水魔法ですね。ある程度、剣も使えるので魔法剣士型を目指してます。好きな魔法は召喚魔法とかです。スライムと従魔契約してるので、呼び出せます。宜しくお願いします」
みんなからパチパチと拍手が送られる。
他にも色々と得意な魔法はあるが、これくらいなら自重した良い自己紹介だろうな。
「テイミングできるなんて凄い! エルリック君可愛いのにカッコいいよ~」
スィニア先生に言われると背筋がゾクッとするからやめてくれ。
生物の本能が危機感を感じてしまう。
本当に小さい子に手を出してないよな?
「では次にプリュムさん、どうぞ」
「はい、私はプリュムと申します。エルリック様お付きのメイドですが、学園では単なる学生ですので、気軽に話しかけてください。得意な魔法は火魔法と風魔法です。ただ、エルリック様に教えていただいたのですが、私は治癒魔法の適性が高いので、今は治癒魔法の修行もしています。これから宜しくお願い致します」
プリュムの次にメリーナ、ララと続き、当たり障りない挨拶をしていった。
そして受験の7位までのマクシュガル家ばっかりの自己紹介が終わり、8位から15位までの子が挨拶し始めた。
Sクラスは15人のクラスのようだ。危うくマクシュガル家だけで半数を占めるところだったが、ギリギリセーフだ。
何がセーフなのか分からないが。
「ココレラと申します。姫という立場ですが、王族という柵なく、皆様仲良くしてくださいね。勉強は得意というわけではありませんが、少しだけできます。魔法は風魔法を少々。これから同じ学園で学ぶ仲間として、一緒に頑張っていきましょう」
俺以外の男子の三名が、ココレラを見てとろ~んとした表情になっている。
あーあ、魅了されたな。ココレラはまだ癖が治ってないようだ。
「セニャです。姫様の侍女を務めています。得意な魔法は水属性の中でも氷魔法です。武術にも自信はあります。宜しくしたくありませんが、どうぞ宜しく」
冷たい目でクラスメイトに挨拶するセニャ。
これはこれで、隠れファンとかできそうだ。
「私はイリシア・デンタナと申しますわ! エルリック様と同じ魔法剣士を目指していますの。目指す人物はエルリック様、尊敬する人物はエルリック様ですわ! ついでに好きな人もエルリック様ですわ! マクシュガル家の皆様、宜しくお願いしますわね!」
は?
ちょっと待ってくれ、何を言ってるんだこいつ。
「エル君は渡さないよ!」
「エル君はメリーナのものです!」
「兄さまは、あげない!」
「お兄ちゃん、女作るの早すぎ!」
「オレがお嫁さんだぜ!」
何を言ってるんだ君たち。
俺は誰のものでもないからな?
「外堀からと思いましたが、難しそうですわね。それならマクシュガル家の皆様とは徹底抗戦ですわ。宣戦布告といきますことよ!」
「いやいや、公爵家が勝手に決めたらダメだろ。親に怒られるぞ?」
「あら、身分なんて関係ありませんのではないこと? 二人の間に愛があればいいのですわよ!」
それは俺が分かって欲しかった意味と違うんだがなー。
「いやいや、愛とか全く無いから」
「でしたら、これから愛を・・・」
「はいはーい、イリシアさん。エルリック君が困ってるし、まだ他の人の自己紹介があるからやめましょうねー」
良いタイミングでスィニア先生の注意が入り、その場はなんとか収まった。
ナイスだ先生。
だが、これからイリシアを鍛えようと思っていたから、ある程度好意を持ってもらえる分には構わないか?
心配だな。
◇
一日の授業が無事に終わり、少し疲れ気味の俺たちは学生寮に帰っていった。
そう、あの学生寮だ。
王都に暮らしている者も、自宅から通学するのではなく学生寮で生活をするらしい。
俺は男子寮だろうから、ようやく男の友達を作れるかなー、とワクワクした気持ちになっていた。
周りが女の子ばかりだと、できる会話も限られてくるからな。
「エルリック様、どちらに行かれるのですか?」
「え、男子寮だけど? 荷物は既に運ばれてるんだよね?」
プリュムが不思議そうな顔で聞いてきたので答えてみたのだが、プリュムは更に頭の上にクエスチョンマークを付けてしまった。
「あっ。あの、エルリック様は貴族ですので貴族寮ですよ? ご案内致しますね」
「マジか! 説明とか全然聞いてなかった」
プリュムに感謝だ。
俺はプリュムに連れて行かれるまま貴族寮と呼ばれるところに向かった。
建物は何とも壮観だった。
黄金比でも意識してるのではないかと思うほど整っていて、お金がいくらかかっているか想像できないほどだった。王都にある建築物の中でもトップクラスの高級感が出ている。
もちろん、マクシュガル家の屋敷よりも広い。
どっかの高級ホテルにでもやって来たような気持ちにさせられるなー。
「こちらが、エルリック様のお部屋です」
「おーなかなか広い! あ、ベッドが二つある! 他の貴族男子と相部屋とか?」
「え? あの、私がお付きのメイドなので、一緒の部屋で過ごすことになります」
「へ? いやいや、女の子と一緒の部屋とか何かの間違いじゃないの?」
「エルリック様は私と一緒だと嫌ですか?」
「そういうわけじゃないんだけど・・・」
こんな可愛い子と一緒の部屋とか無理だぞ?
何が無理かと言うと、俺の理性が持ちそうにない・・・あ、俺はまだ五歳だったな。
それなら大丈夫かな?
「あたしはエル君と隣の部屋だ!」
「メリーナもエル君とお隣ですよ」
「兄さま、ボクのおへや前だよ!」
「私は斜め前ですか。近いですね」
「夜はオレが遊びに行ってやる!」
あーうん、部屋割りに作為的な何かを感じる。
お隣二つは姉のアイリスとメリーナ。向かい側が妹のミルシャで、その隣がいとこのケリャとララのようだ。
親族同士で固まったなー。
これだとみんな俺の部屋に遊びに来そうだ。
まあ、それだといつもの光景にケリャとララが加わるだけなんだけどな。
「ご主人様、カレンさんがお荷物に紛れ込んでいたみたいなのですが、この寮ってペット可なのでしょうか?」
「ニャー、ンニャニャ!(魔王様、来ちゃいましたわー!)」
子猫状態のカレンは俺の従魔のリラシャに抱き抱えられながら、ぶんぶん手を振っていた。
正確には前足か? 肉球がかわゆいな、プニプニしたい。
さておき、どうやら俺の荷物に紛れ込んでついて来てしまったみたいだ。
確かどこの寮もペットは禁止なはず。だから家に置いて来たんだよな。
「カレンだめだろー。寮はペット禁止なんだぞー」
「ニャーニャニャン!(魔王様と一緒が良いですわ!)」
「ちょくちょく遊びに行くって言っただろ?」
「ニャニャーニャン!(置いて行かれる気分ですわ!)」
それを言われたら嫌とは言えないなー。
バレないようにこっそり飼っちゃうか。
「よし、じゃあ誰かにバレそうになったら、子猫のぬいぐるみのフリをすること。いいな?」
「ニャン!(はいですわ!)」
普通の人なら誤魔化せるだろうが、鑑定とか気配察知とか使われたら一発アウトなんだよな。
家族以外は極力部屋に近づかせないようにしないといけない。
「エル君、さっそく校則破っちゃうなんて、イ・ケ・ナ・イ・コ! でもあたしは許しちゃう!」
アイリスは今日もアイリスだな。
ちなみにリラシャは従魔なので、届け出を学園側に出しておけば連れ歩いてもオッケーだ。
加えて一緒に授業を受けることもできる。
リラシャに聞いたら、是非一緒に勉強したいと言っていたから、先生にも事前に許可をもらっておいた。
明日からは一緒だな。
「あ、エルリック様。今日は屋敷の方で用事があるので、朝になったら戻りますね」
「メリーナもお部屋に忘れものしちゃったので、今日は家に泊まることにします」
学園から家は近いし、すぐに行き来できる距離だ。
送って行こうかと思ったが、どうやらちゃんと護衛を付けていくらしい。
「おー、そうか。気をつけてなー」
夜な夜な屋敷で何かの集まりが行われていることなど知らずに、プリュムが一緒の部屋で寝ないことで少し安堵したエルリックであった。
◇あとがき
休憩パート(´・ω・`)ですね
応援ありがとうございます!
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