魔王やめて人間始めました

とやっき

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少年期・ギルド編

3-15 魔王様、婚約する?

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「英雄エル様ぁ! 村を救っていただきありがとうごぜぇますだぁ!」

「俺はただ依頼を受けたまでですから。村長さん、これから復興頑張ってください」

「はいでさぁ! 村の特産品ピリーマンができあがったら一番に英雄様にお届けしまさぁ!」

「マジか。まあ、ありがとうございます」

 突然変異によってSランクに進化したモンスターを退治し、村を救ったら英雄扱いされてしまった。

 ただのギルド依頼で難しそうなのあるかなーっと思って軽い気持ちで引き受けたんだが、まあ感謝されるのは嫌な気分にならないし良かったかな。

 しかしSSランク冒険者エルの名前がどんどん広まっているらしく、王都だと歩いている人々に黄色い声をあびせられたり、拝まれたりされてしまった。

 強い人を拝むとか、何かそんな風俗や習慣的なものがあるのだろうか。
 全くもって謎である。

「エルリック様、明日も学園お休みですがどうなさいますか?」

 冒険者活動の最中ではプリュム改めて冒険者プリンも一緒に行動している。

 ちなみにカレノアとエルビナは冒険者としてではなく使い魔として登録することにした。
 そのときに自分も混ざりたいと言ったシルキーナも使い魔登録し、リラシャ含め使い魔四体のテイマー冒険者として俺は名前が売れ始めてしまっている。

 あ、プリンは冒険者ランクSになりました。
 これでプリュムも人外認定だ。仲間が増えてるなによりだ。

 実力だけなら鍛えすぎじゃったイリシアもすぐにSランクになれるんだがな。

「えーっと、休みの予定か。たしかもうすぐ年度末テストがあるからな。冒険者ばっかりやってサボってないで、そろそろ勉強しないとまずいか」

「エルリック様は恐らく何もせずとも一万点だと思うのですが・・・」

「頼むプリュム、そのネタは勘弁してくれ」

 そう、学園入ってからちゃんと採点してるのかと思うほど、テストがオール一万点固定なのである。

 今まで一学期、二学期の中間テストと学期末テストがあったのだが、どの教科も一万点にされてしまった。

 余白に日本のときにちょっと覚えていた原理とかを書いたら新発見の学説だなんだと騒がれる始末である。
 例えば魔法科学のテストで梃子てこの原理を書いたら、魔法学会無魔法研究の部でなんかよく分からない賞をもらって金貨10枚ゲットするほどだ。

 いや、これはマジでツッコミ入れた。

 魔法学会なのになんで無魔法を研究する部があるんだよ!
 ただの科学でいいじゃん! なんで魔法メインで科学を付属にしたがるんだよ!
 そもそも俺のテストをそのまんま学会に提出するなよ! 恥ずかしいわ!

 というわけで今回のテストは本当にただ問題を解くことだけに集中したい。

 もう色んな学会に呼ばれて学園を公欠扱いにされるのは嫌だ。

 おじさんたちに「ここはどうなっとるのかね!?」とか言われながら迫られるのもうんざりだ。
 研究のことになると興奮する人ばかりみたいで、鼻息荒くしながら質問してくるのだ。悪い人たちはいないが、精神的ダメージがなぁ。

 これならSクラスの女の子たち12名に囲まれていた方がよっぽどマシだ。
 ちなみに男子は俺を含めて3名だ。例年は半々くらいになるらしいが、今回はマクシュガル家の女の子たちが上位を占めてしまったからな。

 だがとりあえず男子の一人とは仲良くなった。
 ついに男の友達ができてかなり嬉しい気分だ。

 名前はハーレ。
 男爵家の長男で姉が三人いるらしく、けっこう話があって会話していて楽しいやつだ。

 実を言うと最初は女の子と見間違えたんだが、少し話をする機会があり、ずっとハーレちゃんと呼んでたら「ボクは男だよぉ!」と怒られてしまった。
 
 スィニア先生に聞いたら性別は男だと言っていたから間違い無いのだろう。
 それから仲良くなって呼び捨てで呼び合っている。


 さて、学園のことはこれくらいにしよう。
 今は冒険者活動がメインのようなものだ。

 学園側にも俺がSSランク冒険者になったことは当然知られている。

 そのため冒険者活動のときは学園も公欠扱いにしてくれるほどの優遇だ。
 これは国王が「エルリック様、学長のレイブンに圧力をかけておきましたぞ!」とにこにこしながら言っていたことから、うまく口利きしてくれたのだろう。

 更に学園の寮を出て屋敷に暮らしても良いとの許可も出た。
 たまに休みの日に遊びに行くくらいの軽い気持ちだったのだが、奴隷たちの主人としてしっかり管理した方が良いと国王にアドバイスをもらったので、今は屋敷に寝泊まりしている。

 ちなみに屋敷の場所は学園と王城の両方にかなり近い。
 こんな場所に大きな家ってあったかと疑問に思ったが、ここ最近に建設されたようだ。

 これがご都合主義というやつなのかと考えてしまった。
 それとも誰かに仕組まれているのだろうか。

『・・・・・・』

 いや、流石にそれはないな。うん、ないな。


「エルリック様、それなら依頼達成報告をしたら王立図書館に行きませんか?」

「勉強するなら学園でもいいが、気分転換に図書館もありだな。よし、プリュムも一緒に行くか?」

「はい!」


 元気な返事をしたプリュムと俺は、そのまま依頼の報告をしにギルドに向かうと、今日も熱烈な声や視線に迎えられることとなった。

「おー! 小さな勇者様のご登場だ!」
「変異体Sランク討伐だってよ! かぁ! これだから勇者様のやるこたぁ違うねぇ!」
「エル様ー! はぁ、なんて愛らしいの!」
「お坊ちゃん立派になってアタシ嬉しいわ♡」

 なんか知り合いのオカマが一名混ざっているような気もするが、きっと見間違いだろう。

「ひっ。エル様、討伐ご苦労様でした!」

「ホイピー、いい加減俺が来るたびに怖がるのやめてもらえないかな?」

 受け付けに行ったらお馴染みの面白ネームなホイピーがビクビクしながら報酬を渡してくれた。

 彼女は三年後くらいに俺の奴隷となる予定だ。
 ギルド内ではエーリンテと次期ギルド長予定のガイツしか知らない情報なので、他の職員や冒険者みんなは、何故ホイピーがビビっているか不思議に思うことだろう。

 彼女は普通に仕事をしていたら、ギルド長エーリンテのミスに巻き込まれて奴隷落ちだもんな。

 そりゃ奴隷になるのは嫌だろうし、何をされるか分からなくて怖いだろう。
 こっちは特に何もするつもりは無いんだけどな。

「ももも申し訳ありませんでしたエル様。つ、次の依頼を受けていかれますでしょうか?」

「とりあえず受けないかな。なんか他の人には大変そうな依頼とかあったらまた教えてほしいよ」

「か、かか、かしこまりました! ではご機嫌よう!」

 ちなみにホイピーは俺の奴隷になるので暮らす場所は新しい屋敷に変わるのだが、仕事や生活とかはそのままでいいと伝えておいた。

 なのにいつもビクビクした反応だ。
 本当に何もしないし、今まで通りでいいって言ってるんだがなぁ。

 ホイピーが信者化していることを知らず、内心で喜びながら超緊張しているだけの彼女をエルリックは気の毒に思っているのであった。


「お、チビ勇者。これから俺様と一杯どうだ?」

「あ、ガイツさんどうも。自分で俺のことチビって言っておいて飲みに誘うんですか? それに勇者って言うのやめてくださいよ」

 口ヒゲが中々似合っているムキムキマッチョのガイツが話しかけてきた。
 誰がどう見ても未成年の俺を酒に誘うとか何を考えているんだこの人。
 ちなみに誕生日を迎えて今の俺は六歳になっている。

 ガイツが俺をチビ勇者と呼ぶようになってから、小さな勇者とか小さな英雄だとか、呼び名のように広まってしまっている。

「がっはっはっは! SSランクつったら勇者並みだろが!酒毒耐性もってんだろ? いいじゃねぇか一杯くらい付き合ってくれよ」

 飲んでないのに酔っ払いみたいな絡み方してくるガイツに小さな体をヒョイと持ち上げられ、そのままギルド内のバーに連行されてしまった。

「ほらよ、俺様の奢りだぜ! じゃんじゃん飲んじまってくれ!」

「さっき一杯付き合えって言いましたよね? なんで一気に三杯も注文してるんですかね?」

「男なら細けぇことは気にすんな! これは礼もかねてんだよ。俺様でもあの変異種には勝てなかった。エル、あの村救ってくれてありがとな。あそこ俺様の生まれ故郷なんだ」

 なんだ、さっきからのはただの照れ隠しか。
 ガイツ、意外といいやつだったんだな。

「あーもう、しんみりすんのはやめだ! 酒がまずくなっからよ! ほら、乾杯! じゃんじゃんいくらでも飲んじまえ!」

「分かりましたよ。高いお酒ばっかり飲みますからね? 後悔しても知らないですよ?」

「がっはっはっは! そうだそうだ、そうこなくっちゃな!」

 後ろでお預けをくらったように寂しそうな様子の忠犬プリュムに気付かずに、勉強を忘れてガイツと飲み始めてしまったエルリックであった。
 プリュムはまだお酒が飲めないので、ジュースにチビチビと口をつけながらエルリックをジーっと見つめつつ、大人しく待っているのであった。





「お帰りなさい、エルリック様。もう、遅かったです。待ちくたびれちゃいました」

「おう、ただいまココレラ・・・はっ?! ココレラ!?」

「はい、貴方の妻のココレラです」

「いやいや、勝手に妻を名乗るな」

 屋敷に帰ると何故かココレラが出迎えてくれた。
 こいつ、いつの間に妻になったというのだろうか。

「エルリック殿、急に押しかけてすまぬ。今日は大事な話があってお邪魔している」

「エルリック、陛下が話をしたいと来てくれているんだよ」

 国王やうちの父セドリックまでうちの屋敷に来ているのか。
 奥をチラリと覗いたら、母エリーゼがにやにやしながら座ってこちらを伺っていた。

「それじゃあエルリック、君の家だろうけどまずは座って話を聞いてくれるかい?」

「分かりましたよ父様。で、ココレラも座って話に参加する感じか?」

「はい。お隣失礼しますね」

 当然とばかりに俺の左隣に座ってきたココレラと、無言無表情で俺の右隣に座るココレラの侍女セニャ。

 向かい側には父セドリック、その隣に母エリーゼ、反対側の隣に国王デクスターといった席になった。

「簡単に言うとエルリックにはココレラ殿下と婚約してもらうことになったよ」

「はっ!?」

「末永く宜しくお願いしますエルリック様」

「ココレラよ、まだ婚約であるから結婚ではないぞ」

「いや待て待て、婚約も何も聞いてないんだが」

 早とちりな反応を見せるココレラと、それを見てちょっと嬉しそうな国王と、にやにやしてエルリックの反応を楽しむセドリックに、微笑むエリーゼ。

 エルリックは何がなんだか分からずにポカンとしてしまうのであった。




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