2 / 18
女戦士
しおりを挟む
「…………おい」
頭のずっと上の方から低い声が聞こえてきて、僕は顔を上げた。
そこには────赤くて面積の少ない胸甲に守られた、巨大な胸があった。
「な、なんだてめぇは!」
「…………! そ、その赤い軽装鎧は、まさか!」
さっきまで強気だった二人の女の人が、怯えたような声をあげる。
僕はさらに視線を上に向け、無理もないと理解した。
僕たちの行先を阻むように立っていたその女の人は、すごく大きい人だった。
身長はたぶん、190センチくらいはあるだろう。
胸と腰周り以外の露出している体はどこも筋肉質で、腕も肩も脚もがっしりと逞しく、腹筋なんかは六つに割れていた。
まさに戦士の中の戦士といった風貌だ。
その明らかに強そうな女の人が、僕を抱えている二人に威圧的な視線を送っているのだ。
「な、なんだ、おい、なんの用だよ!」
「おい、やめろ、こいつは…………こいつはアマンダだぞ!」
「なっ…………アマンダって、『赤い狂戦士』のアマンダか!?」
『赤い狂戦士』…………僕も聞いたことがある。
というより、この世界でその名前を知らない人はいないだろう。
今から二年前、勇者様(女)とともに魔王討伐の旅に出かけ、わずか半年で魔王を倒して魔王討伐最短記録を大幅に更新した伝説の人。
自分の戦闘能力に絶対の自信を持っているため、身に付ける鎧は軽装鎧のみ。
百を越える戦、万を越える戦いを全て無傷で勝利し、敵の血で赤く染まったその姿は、敵からも味方からも『赤い狂戦士』と呼ばれ恐れられた最強の女戦士。
それが…………目の前のこの人が、そのアマンダ…………?
僕はさっきまでの恐怖も忘れ、伝説的な戦士の姿に魅入ってしまった。
「…………去れ」
「ひぃっ!」
「すいません! すいません! 失礼します!」
ただ一言。
アマンダさんが呟くようにそう言っただけで、ふたりの女の人は脱兎のごとく逃げ出した。
「あっ…………!」
僕の体を支えていた二人が急に消えたせいで、僕は地面に投げ出されてしまう。
いたた…………どうやら膝を擦りむいてしまったみたいだ…………うぅ、ヒリヒリする。
「…………大丈夫か?」
かけられた声に顔を上げると、アマンダさんが僕に向かって手を出してくれていた。
「あ、ありがとうございます…………」
僕は服で手についた土をぬぐい取ると、アマンダさんの手を取った。
固くて、大きくて、すごく女らしい手だった。
これが伝説の戦士の手なのだと思うと、緊張と興奮で手が震えてしまう。
「あの、おかげで助かりました。なんとお礼を言ったらいいか…………」
アマンダさんに引き起こしてもらい、僕は改めてお礼を言った。
「…………気にするな」
僕の言葉に、アマンダさんは小さく首を振ってそう答えた。
か、かっこいい…………!
ただ首を軽く左右に振っただけなのに、やっぱり伝説とまで謳われる人は、ほんの些細な動きでも絵になる。
そして、無言のまま背を向けて去っていこうとするアマンダさん。
その背中を見ていると、僕はなぜだかすごく切ない気持ちになって、思わず声をかけていた。
「あ、あの、待ってください、アマンダさん! 僕に何か出来ることがあれば…………あっ」
ちゃんとしたお礼がしたくて、僕はアマンダさんを引きとめようと一歩踏み出した。
だけど、さっき擦りむいた膝が痛んで、バランスを崩してしまう。
躓いた先にあるのは、当然アマンダさんの体だ。
僕は恩人であるアマンダさんに抱きつくような形で、転ばないよう自分の体を支えてしまった。
うぅ…………情けない。
「…………どこか、怪我をしたのか?」
「あの…………少し膝を擦りむいちゃって」
僕がそう言うと、アマンダさんは道具袋の中から薬草を取り出し、自分の口に放り込む。
そして、噛み潰した薬草を僕の膝に塗ってくれた。
「…………あ、ありがとう…………ございます…………///」
うわーっ、うわーっ、僕、伝説の戦士に薬草を塗ってもらっちゃったよ!
「…………」
顔を赤くして俯きながらお礼を言う僕のことを、アマンダさんはじっと見ていた。
─────────────────────────────────
※後書きです。
おやぁ?
短くまとめるつもりだったのに、書いてるうちになんだか長くなってきたぞ?
…………どうしよう。
頭のずっと上の方から低い声が聞こえてきて、僕は顔を上げた。
そこには────赤くて面積の少ない胸甲に守られた、巨大な胸があった。
「な、なんだてめぇは!」
「…………! そ、その赤い軽装鎧は、まさか!」
さっきまで強気だった二人の女の人が、怯えたような声をあげる。
僕はさらに視線を上に向け、無理もないと理解した。
僕たちの行先を阻むように立っていたその女の人は、すごく大きい人だった。
身長はたぶん、190センチくらいはあるだろう。
胸と腰周り以外の露出している体はどこも筋肉質で、腕も肩も脚もがっしりと逞しく、腹筋なんかは六つに割れていた。
まさに戦士の中の戦士といった風貌だ。
その明らかに強そうな女の人が、僕を抱えている二人に威圧的な視線を送っているのだ。
「な、なんだ、おい、なんの用だよ!」
「おい、やめろ、こいつは…………こいつはアマンダだぞ!」
「なっ…………アマンダって、『赤い狂戦士』のアマンダか!?」
『赤い狂戦士』…………僕も聞いたことがある。
というより、この世界でその名前を知らない人はいないだろう。
今から二年前、勇者様(女)とともに魔王討伐の旅に出かけ、わずか半年で魔王を倒して魔王討伐最短記録を大幅に更新した伝説の人。
自分の戦闘能力に絶対の自信を持っているため、身に付ける鎧は軽装鎧のみ。
百を越える戦、万を越える戦いを全て無傷で勝利し、敵の血で赤く染まったその姿は、敵からも味方からも『赤い狂戦士』と呼ばれ恐れられた最強の女戦士。
それが…………目の前のこの人が、そのアマンダ…………?
僕はさっきまでの恐怖も忘れ、伝説的な戦士の姿に魅入ってしまった。
「…………去れ」
「ひぃっ!」
「すいません! すいません! 失礼します!」
ただ一言。
アマンダさんが呟くようにそう言っただけで、ふたりの女の人は脱兎のごとく逃げ出した。
「あっ…………!」
僕の体を支えていた二人が急に消えたせいで、僕は地面に投げ出されてしまう。
いたた…………どうやら膝を擦りむいてしまったみたいだ…………うぅ、ヒリヒリする。
「…………大丈夫か?」
かけられた声に顔を上げると、アマンダさんが僕に向かって手を出してくれていた。
「あ、ありがとうございます…………」
僕は服で手についた土をぬぐい取ると、アマンダさんの手を取った。
固くて、大きくて、すごく女らしい手だった。
これが伝説の戦士の手なのだと思うと、緊張と興奮で手が震えてしまう。
「あの、おかげで助かりました。なんとお礼を言ったらいいか…………」
アマンダさんに引き起こしてもらい、僕は改めてお礼を言った。
「…………気にするな」
僕の言葉に、アマンダさんは小さく首を振ってそう答えた。
か、かっこいい…………!
ただ首を軽く左右に振っただけなのに、やっぱり伝説とまで謳われる人は、ほんの些細な動きでも絵になる。
そして、無言のまま背を向けて去っていこうとするアマンダさん。
その背中を見ていると、僕はなぜだかすごく切ない気持ちになって、思わず声をかけていた。
「あ、あの、待ってください、アマンダさん! 僕に何か出来ることがあれば…………あっ」
ちゃんとしたお礼がしたくて、僕はアマンダさんを引きとめようと一歩踏み出した。
だけど、さっき擦りむいた膝が痛んで、バランスを崩してしまう。
躓いた先にあるのは、当然アマンダさんの体だ。
僕は恩人であるアマンダさんに抱きつくような形で、転ばないよう自分の体を支えてしまった。
うぅ…………情けない。
「…………どこか、怪我をしたのか?」
「あの…………少し膝を擦りむいちゃって」
僕がそう言うと、アマンダさんは道具袋の中から薬草を取り出し、自分の口に放り込む。
そして、噛み潰した薬草を僕の膝に塗ってくれた。
「…………あ、ありがとう…………ございます…………///」
うわーっ、うわーっ、僕、伝説の戦士に薬草を塗ってもらっちゃったよ!
「…………」
顔を赤くして俯きながらお礼を言う僕のことを、アマンダさんはじっと見ていた。
─────────────────────────────────
※後書きです。
おやぁ?
短くまとめるつもりだったのに、書いてるうちになんだか長くなってきたぞ?
…………どうしよう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
227
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる