どこまでも醜い私は、ある日黒髪の少年を手に入れた

布施鉱平

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第四章

奉仕

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「んっ、ふっ、ふっ、んぅっ……」
「□$○%……」

 テントの中には、シャーラの吐息と少年の切なげな喘ぎ声、そして、ヌチヌチというねばり気のある水音が響いていた。

 防音や遮光に重きを置いているため通気性が悪く、また、発見されにくくするために普通のものよりもやや低い天井を持つ、特注のテントの中だ。
 
 互いの体から発せられた熱は逃げ場のない狭い室内に充満し、温度と湿度を際限なく上昇させ、ふたりの体を内からだけではなく外からも熱している。

 そんな蒸し風呂サウナのような空間の中、シャーラと少年は同じように顔を赤らめ、同じように息を荒くしながら、周りのことなど全く目に入らないかのように行為・・に没頭していた。






 ────しかし、ふたりには決定的にことなる部分がある。





 
 それは、ただひたすらに快楽を享受きょうじゅしている少年と違い、シャーラの顔には苦悶にも似た表情が浮かんでいる、ということだ。

 蒸し暑さに嫌気が差している訳でも、少年に奉仕をすることが苦痛だからでもない。

 その理由は、異性との性的な経験が皆無であった彼女にとって、いま少年に奉仕しているその方法が、非常に難易度の高いものだったからである。
 
 









 シャーラが少年のチンポをこすりあげているのは、手によってではなかった。










 口ではなく、胸でもなかった。










 もちろん素股すまたでもない。










 シャーラが少年のチンポを擦りあげている場所、それは────




















 ────足の裏、だったのである。




















 俗に言う、『足コキ』というプレイだ。
 これは男に奉仕する方法としては、決して一般的なものではない。

 むしろ使い手が存在しないために消えていった、『失われた手法ロストテクニック』のひとつだといってもいいくらいだろう。
 
 ガサツな女の足の裏なんかで、繊細なチンポに触れられて喜ぶ男などいないのだから当然だ。

 それなのになぜ、性的な経験もないシャーラがこんな特殊かつ高難易度なプレイに挑んでいるのか……

 それには、とうぜん理由があった。

 シャーラとて、最初は普通に手でやろうとしたのだ。

 しかし、チンポに触れようと覚悟を決めて少年の股間に近づいたその瞬間、いきなり被っていたフードを捲くり上げられてしまったのである。

 突然の暴挙にシャーラは驚愕し、硬直し、狼狽し────そして恐怖した。

 まだ少年には見せていない、醜い素顔。

 人とは違う、異形の相貌そうぼう

 それを晒してしまったことにより少年が自分を恐れ、拒絶し、ほかの人間と同じように化物を見るような目で見てくるのではないか、と思ったのだ。




 
 ……しかし、ここでも少年はシャーラの予想を遥かに超えた行動に出た。




 
 なんと、シャーラのことを恐れて拒絶するどころか、彼女の頭を両手で鷲掴わしづかむと、その口にチンポを押し付けてきたのである。

 唇に当てられた熱と、舌先に感じるわずかな苦味。

 そして脳を蕩けさせるあまりにも濃厚なおすの匂いに、シャーラの意識は束の間、恍惚として遠ざかった。

 我に返ることができたのは、少年がさらに奥まで咥えさせようと両手に力を込め、カリの辺りまでが口の中に侵入してきたからだ。

 口の中に熱く、硬く、太いものを感じながら、シャーラはフードを捲くり上げられた時などとは比べ物にならない衝撃を受けていた。

 
 自分の顔を見ても、嫌悪しない人間がいる。


 怖がりもせず、泣き出しも、逃げ出しもしない人間がいる。


 いや、それどころか、顔を見てなお求めてくれるがいる。

 
「……っ」


 そのときシャーラの心に渦巻いた感情をひとことで言い表すには、彼女が送ってきた人生は余りにも孤独で、そして長すぎた。

 母と慕う女性を失った、深い喪失感。

 そして、その母からの愛情に報いる為に不幸な子供たちを拾い育てても、自分が直接関わることはできず、愛されることもないという寂しさ。

 長きに渡り蓄積されて続けてきた負の感情は、間違いなく彼女の人格を形作る一部となっている。





 だが、その一部・・が崩れていく音を、シャーラは聞いた気がした。



 






 口が塞がれているからだけではなく、胸が詰まって言葉など出なかった。









 
 その代わりに、ただ、褐色の頬を涙がこぼれ落ちていった。















 ……そこからなぜ足コキへとつながったのかといえば、このままでは『アタシがやってやる』という自分の言葉を守れそうになかったからである。

 自分よりもはるかに年下の少年に対する、大人の女としての矜持きょうじ

 そして、自分を受け入れてくれた感謝とともに芽生えた、少年に対する恋慕にも似た感情。
 
 それが、シャーラに心から『少年に奉仕をしたい』という気持ちをいだかせた。

 しかし奉仕をしようにも、上半身を近づけると問答無用でイラマチオされてしまうので、苦肉の策として編み出したのがった状態でも行える、この特殊なプレイだったというわけである。

 最初はまるでぎこちなかった足コキだが、シャーラは持ち前の器用さと集中力で、次第にその技術を向上させ、モノにしていった。
 
 ただ上下に動かすだけではなく、スピードの緩急や締めつけの強弱、さらには指の腹でカリの溝を刺激できるくらいの余裕も生まれてきた。





 ────そしてその余裕は同時に、チンポだけに集中していたシャーラに、他の部分へ視線を向けさせるだけの余力を与えた。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
「%○△$……!」

 シャーラの呼吸がさらに荒くなり、少年のチンポに対する愛撫も激しさを増す。

 見てしまったのだ。
 少年の視線が、自分のどこに向けられているのかを。

 少年が見ていたのは────シャーラの股間だ。

 チンポを左右から挟み込むためガニ股に開いている、両脚の付け根。

 外套がいとうの下に身につけている、露出が多いボンテージスーツのような夜間偵察服の股間の部分からは、既に抑えきれなかった愛液が溢れ出している。

 そこに、少年が熱い視線を注いでいるのである。

 その若さで、まさかボンテージフェチということはあるまい。

 だとするならば、当然少年が見ているのは、布地に隠されたその奥。


 ────シャーラの性器だろう。


 少年は足の裏でチンポをしごかれながら、想像しているのだ。


 シャーラの濡れた膣口を貫き。


 蠢く肉襞にくひだを掻き回し。


 子宮の入口を何度も叩き。


 そして、一番奥に押し付けて、熱い欲望の塊を吐き出すことを。


 
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ…………!」

 
 少年の視線を意識してしまった瞬間から、シャーラもまた、足の裏から感じ取った少年のチンポの形や、熱や、硬さを、自らの膣内なかに迎え入れた時のことを想像してしまっていた。

 それは、自制心や忍耐力には自信のあるシャーラにすら、耐え難いほどの誘惑だった。

 理性が切れかけ、何度少年を押し倒してしまいそうになったか分からない。

 それでもシャーラは耐えた。

 歯を食いしばり、手のひらに爪をたて、痛みによって欲望に流されそうになる自分を律しながら、脚を上下に動かし続けた。

 そして────





「□&%$○……!」

 びゅーっ、びゅるっ、びゅるるっ!

「あっ……はぁっ……♡」

 少年が切なげな声を上げると同時に、足の裏に脈動が伝わってきた。
 
 シャーラの脚に、胸に、顔に、勢いよく精液が降りかかり、褐色の肌に白のコントラストを描き出していく。

 シャーラは無意識に、その熱く粘り気のある液体を胸元からすくうと、舌を出してチロリと舐め取った。

(あぁ……♡)

 決して、美味いものではない。
 だが、何かを口にしてここまで満たされたことなど、これまでに一度もなかった。
 
 どんなに難関な依頼を成し遂げた時よりも強い達成感が、じんわりと広がっていく。

 なにせ、男を絶頂さイカせることができたのだ。

 自分の手で…………いや、足で。

 奉仕を始める前に抱いていた不安はいつの前にか消え去り、その代わりに自信と喜びが胸を埋め尽くしていた。















「…………」















 ────だが、少年が射精したことで『終わった』と思っていたシャーラは、気づいていなかった。

 少年のチンポが、未だに熱と硬度を失っていないことを。

 そして、むしろ射精前よりも興奮した目つきで、シャーラの股間を見つめていることを。
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