どこまでも醜い私は、ある日黒髪の少年を手に入れた

布施鉱平

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終章

戦う意味

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「────ぃ────おいっ、もう終わったかい?」
「ペロペロ……はっ」

 尻尾を振りながら夢中で舌を動かし続けていたレアンは、シャーラの声で我に返った。

 本当に、全くの無意識で、射精後もチンポを舐め続けてしまっていたのだ。

 恐る恐る視線を上げると、少年は顔を真っ赤にしながらキュッと目を閉じ、半開きの口から熱い吐息を漏らしていた。
 エロかわいい。

 また腹の奥がズン、と重くなり、目の前で自分の唾液に濡れ光るチンポに舌を伸ばしたい衝動に駆られるが、レアンは鋼の意思でそれを封じ込めると、素早く少年のズボンを引き上げた。

「ん……こほん、あ、ああ、終わった。もうこっちを向いても大丈夫だ」

 そして立ち上がり、背を向けている二人に声を掛ける。

「わかった」

 シャーラが応え、マァルと共に振り向き、近づいてきた。
 
 ふたりとも、顔が赤い。
 それに、隠しようもないくらい雌の匂いを漂わせている。

 少年の喘ぎ声や、レアンがチンポを舐めしゃぶる音で発情してしまったのだろう。

「……で、どうだい。『証拠』はちゃんと取れたのかい?」

 チラチラと、ズボンを押し上げている少年の股間に視線を送りながら、シャーラが聞いてくる。

「証拠……?」

 それに対し、レアンはオウム返しに聞きかえした。
 一瞬、何を言われたのか理解できなかったのだ。

 だがその直後に、自分が何のために少年のチンポを舐めていたのかを思い出し「あっ」と声を上げた。

 そもそもレアンが少年のチンポを舐めていたのは、アイーシャに『自分が少年を抱いた』ことを証明するために、その証拠となる精液が必要だったからだ。

 だがレアンは途中からそれを忘れ、少年が射精した精液を一滴残らず飲み干してしまっていた。
 
 しかも、尿道の中に残っていたものすら、全て吸い込んで。

「……アンタ、まさか」
「…………すまない」

 自らの犯してしまった失態に、レアンは耳をぺたんと伏せながらうなだれた。
 シャーラは「はぁ」とため息を吐くと周囲を見回し、近くに置いてあった布を手に取る。

 そしてその布をマァルに渡すと、

「マァル、これでこの子の体とアレ・・を拭いてあげな」
「わ、わかったっす」

 シャーラに指示され、養護施設で少年少女の扱いに慣れているマァルが「ちょ、ちょっとごめんっす」と言いながら、少年の体と敏感な部分を布で拭っていく。

 わずかに抵抗を示す少年の全身をマァルが拭き終えると、シャーラは布を受け取り、レアンに渡した。

「その布の匂いを、アイーシャに嗅がせてやればいいよ。
 あの女のことだ、さぞかし経験豊富なんだろう? 男の匂いくらい、すぐ分かるだろうさ」
「…………すまない」
「いいさ。……でも、これだけの事をやったんだ。アンタには、何があってもこの子の事を逃がして貰うよ」
「ああ、もちろんだ」

 レアンは自分でも信じられないくらい自然に、そう答えていた。

 ほんの少し前まで真剣に悩んでいたのが嘘のように、『少年を助けなければ』という気持ちが心に根付いている。

「……でも、はぐれ者たちマーヴェリックスとは戦うんすよね?」
「……そうだ」

 次にマァルに質問され、レアンは頷いた。

「この子は、あの人たちのところに帰りたいんだと思うっす。あの人たちだって、この子のことを助けるために……」
「それでもだ。この戦いは避けられない」

 マァルの言葉を遮り、レアンが断言した。

 アイーシャははぐれ者たちマーヴェリックスを取り込むことを望んでいるのだろうが、まず間違いなく、それは叶わない。

 少年と性的な関係を持った今、レアンにはそれがよく分かっていた。

 男とは、デリケートな生き物だ。

 どれだけチンポを刺激されようと、相手の女にほんの少しでも嫌悪感を抱いていたなら、勃起などするはずがない。

 だが少年は、醜い容姿を持つ先祖返りの獣人であるレアンに舐められて、勃起したのだ。
 途中で萎える事も無く、口の中に射精までしてくれた。

 ここまで大きく、広く、深い『愛』を持つ人間を、レアンは知らなかった。

 アイーシャもレアンを蔑むことはないが、それは彼女が実力至上主義者であるからだ。

 そして、そんな愛情深い少年と、はぐれ者たちマーヴェリックスは長い時間を共に過ごしてきたのである。

 おそらく少年は、一方的に愛されるだけではなく、彼女たちのことを愛しただろう。

 性奴隷としてではなく、恋人として愛を交わしたのだろう。

 自分を愛してくれる男を奪われた時、女がどういう行動に出るか……

 それを、アイーシャは理解していない。

「アイーシャ様を見捨てることは出来ない。彼女は私の恩人で、私は彼女の部下だからな」

 マァルに自らの意思を伝えると、レアンは少年に視線を移した。
 
 未だ射精の余韻が抜けきらないのか、赤く染まった顔でぼんやりとレアンを見上げてくる。

 愛らしいその姿に、また体の奥が疼いた。

 彼がはぐれ者たちマーヴェリックスと心を通わせているのはおそらく間違いないが、例えそうなのだとしても、レアンには負けるつもりも、手加減をするつもりも毛頭無かった。

 はぐれ者たちマーヴェリックスたちは、すでに一度少年を奪われている。

 彼女たちが噂通りの実力者だというなら、不運もあったのだろう。
 
 だがそれでも、守り切れなかったのは確かな事実だ。

 レアンが協力して少年を返してやるのは簡単なことだが、それでは納得ができない。

 確かめなければならなかった。
 
 彼女たちの強さを。

(奪い返して見せろ、はぐれ者たちマーヴェリックス。そして証明して見せろ。この子に愛される資格があるのだということを……)

 少年の頭に手を乗せ、レアンはテントの入り口を見つめた。

 戦いが迫っている。

 獣の本能が、そう告げていた。

 そしてそれが正しいことを証明するように、テントの外から慌ただしい気配が伝わってきた。
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