呟きの箱

十四年生

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こいしひと

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こいしひと

月が笑い 犬が鳴く
猫はそばを通り過ぎ
一人が長い もう行く年を
空と街と雲と

寂しいだとか思いもしない
独りの気楽さを
誰も邪魔しない誰も壊さない
望むものは望むように

時を割く人を裂く
心を引き裂かれ
それでも大事
それでも愛しい
人は人に ただ壊されて

長い雨 長い夜
月は天を通り過ぎ
ひとつが長い もう幾千を
空と街と雲と

悲しいだとか思いもしない
ひとつの大事さを
ひとつを愛しひとつ尊き
願うものは願うように

時を欠く人を欠く
心を打ち砕かれ
それでもこいし
それでも欲しい
人は人に ただ遊ばれて

時を割く人を裂く
心を引き裂かれ
それでも大事
それでも愛しい
人は人に ただ壊されて

それでも望み
それでも苦しい
人は人に ただほだされて
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