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『勇者』について
しおりを挟む妹の通う小学校には現在、悪役令嬢『イライザ』と素朴美人ちゃん、それに勇者くんがいる。勇者くんは素朴美人ちゃんが好きらしいが、イライザはソレを気に入らない。クラスの大半をコネやらなんやらでまとめて、素朴美人ちゃんへ問題になるかならないか程度の嫌がらせをしている。
妹が言うには、勇者くんが、それで素朴美人ちゃんを庇ったりしてしまうものだから、余計に燃え上がっているらしい。嫉妬の炎という奴だな……変なスキルに目覚めないといいけどなイライザ。この場合あれか目覚めるとしたら「レヴィアタン」とかになるのか? ははは、恐ろしい話だな。
「…で妹よ……、あそこで爽やかに立っているのが勇者くんかな?」
「兄、間違いない……そして邪魔」
僕らの前方に人のよさそうな真面目そうなイケ小学生メンが立っている。妹に用があるものの、その横に、いやむしろ、妹がしっかりと僕の服の裾をしっかりと握っており、彼から見れば僕は屈強な戦士の様に見えるのではないだろうか。
「あ、あのはじめまして……」
勇者くんはそういって僕らに声をかけてきた。
「勇者くん、何?」
妹は理由を察しているもののなるべく素っ気なく対応をしているようだ。
「妹さん、あの素朴美人ちゃんのことで相談が……」
「……(兄との大事な時間に何という面倒ごとを……)」
妹としては素朴美人ちゃんの事は助けてあげたいと思うものの、この地雷原の様な勇者くんには、なるべく関わりたくないようだ。内なる声では別の事を言っていそうな気配も漂うのだが、さすがの僕にもそこまではわからない。
「妹よ、これも我々に課せられた世界からの命題やもしれない……」
「ん……不本意ながら、わかった。兄、かいぎをはじめます……」
※
勇者……、勇気のある者のことを指す。〇才の誕生日に城へ連れていかれ、強制的に世界を救う旅に出されることが多い。また、人の出来ないことをすることから、他者が痺れたり憧れたりというパラライズの効果を付与することもある。時には『勇者だからパン買ってきて』『勇者だからお金貸して』等と便利に使用されることもある。主に勇者召喚は罠が多いのも忘れてはいけない。
「さて……」
目の前の勇者くんは、まさにそういう感じの男の子。強きを挫き弱きを助ける。無害そうに見えて、芯の強い、アイムジャスティスなのだろうか。きっともてるだろう。
「兄、どうやら素朴美人ちゃんがまた、イライザにいじめられているらしい」
「はい……どういうわけか、イライザちゃんは素朴美人ちゃんを……」
そうかこの子は根本的にわかっていないのだな。まぁ若さゆえのっていう奴だよな。ぶっちゃけこいつリア充じゃね? なんとなくだが俺の右腕にはるか昔刻まれた呪印がざわめく……気がする。
「兄、気持ちはわかる……」
そうかわかるか妹よ。流石わが妹よ、魂の共鳴というやつだな。
むしろ古の呪術にて滅ぼすべき相手の様な気がするよ兄は。さて、もう少し真面目に聞くか。
「で、君はどうしたいの?」
「僕は……できればみんな仲良くしてほしいです。同じクラスの仲間ですから」
あぁ、この子はやはり根本的な勘違いを……(二度目)。
いいか、ア〇ーナが外にいて、ク〇フが居ても、ブラ〇は結構邪魔なんだよ。言ってしまえば、ラ〇アンなんか最初だけだぞ? トル〇コに至っては……。ほかのメンバーなぞ、そのうち馬車の肥やしだ。わかってないなこの世界に平等という者などないのだよ。
「妹よ、よくわかった……」
「兄、ため息しか出ない」
妹が面倒だと思うのも確かだ、これはなかなか強敵だよ。
「勇者くん、そうだな……部外者の僕が言うのもなんだけど、普通に先生に言ったほうがいいよ? この解決は個人レベルでどうにかなるものじゃない。おおきなテコ入れがないと無理だからね? どうやっても一人では不可能だよ?」
「そうですか……」
おや、納得できないようだな。少し下を向いて悔しそうだ、だがそれが現実だ若人よ。現実を知り最良の策を練るのも戦場では大事なことなのだから。
「勇者……くん、もう仲良しという理由だけでは、どうにかはならないと思う。だから私も先生に言う。勇者くんが言いづらいなら私が言えばいい」
妹よ……何と健気なのだろうか……。あぁわが妹よ、自らが泥をかぶるなんて、兄はそんな妹が心配でありながら誇りでもある。面倒くさいにもかかわらず頑張って凛々しく、キッとさせている横顔も兄は可愛いと思うぞ。
「いや…僕が言うよ……」
勇者くんが、妹の決意に押されて決断をした。
「そう……」
妹が一瞬、にやっと笑った気がする。そんな策士な妹も兄は可愛いく思うよ。ならば兄として妹への援護射撃だ。
「そうか……では勇者くん、君に任せることにしよう。正しき人の道を是非君の手で取り戻してくれたまえ!」
僕は決心に満ち満ちた勇者くんへ、わざと厨二的ワードを交え、鼓舞する様に言う。
「わかりました!やってみせます!」
強い決心と信念を胸に秘め、勇者くんは僕らに一礼すると去っていった。
「妹よ……あれは面倒くさいな」
「兄、だから言った」
妹は僕を見上げると眉を八の字にして口を少し歪ませる。
「よしよし、妹よ、気分治しにもう少し散歩してから帰るか」
見事大任を果たした妹への褒美の意味も込めて、僕は妹の頭を優しく撫でる。
「ん……兄……だいすき…」
頭を撫でられて、機嫌の良くなった妹が僕に何か言っていたが、近所の子供たちの声がうるさくてよく聞こえなかった。これもお約束という奴か……。
「さぁ……行くか~」
僕は妹の手をそっと握って、別ルートで家へと向かっていった。
「ん、勇者ある意味GJ……」
このお話は、どこにでもいる家族、どこにでもいる兄妹のお話し。
ただ、少しだけ違うのは、この妹は、小学一年生にして既に厨二病だということ……だったのです。
そうこれは、どこにでもありそうでない、妹と僕の世界の真実の会議のお話し……なのです。
「僕がみんなを救ってみせる!」
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