妹×僕・かいぎ

十四年生

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『ふたつのふくらみ』について

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 粉雪舞う季節は……危ない危ない。

 さて街もゆっくり都会特有のぼた雪っぽいものに包まれるころ。
 季節はとうに冬になっている。

 クリスマス、大掃除をやりぬき、某所における道化祭りもつつがなく終了し、
 正月を迎えた。

 晴れ着姿の妹に例年通り僕は萌え上り、心は有頂天で幼馴染の着物姿を誉め忘れ、瞬間マックス絶対零度と化し、まさにキュンキュンでコキュートスになったのは懐かしい思い出だ(少し前の話だが)。

 因みになんでか知らないが、絶対零度の世界を指してしまったりするが、
 多分あれはダンテの神曲の第一編、地獄篇での表現とかが原因なのかもしれない。本当はなんか川らしいけどね、実際のところは。云々。

 ともあれ、その後ちゃんと幼馴染の機嫌もとりつつ、なぜか若干勝ち誇っていた妹を愛でながら現在へと至っているわけだ。

 今日の妹は少し髪をアップにしている。着物などを着て出かけていたせいもあるのだろう。うなじが少し見えており、なかなか今後を楽しみに思わせる。妹の着物は薄いピンクの桜柄。たしか大地母神の母、すなわち祖母からの妹への貢物。ただ桜があるだけではなく、要所要所に攻めの要素もあり、なんともジャストミートな着物だった。うん、妹はきっと大人になったら可愛いうえに、セクシーも担当できるのだろうな。

「あんたいい加減にしときなさいよ?」
「はっ……!? なんだね? あ、そうそう幼馴染よ。うむ、お主もなかなかに趣あって良いぞ」
「え?! あ、うん……そう?」
「うむ、実によく似合っている(妹のだいぶ更に次くらいには)良いと思うよ」
「あ……ありがと」

 妹をまさに瞳で愛でている僕に呆れたように言ってきたので、回避も含めて、幼馴染も褒めておく。はっはっは、これで先ほどの不審者扱いは回避できたな。なお幼馴染は橙色系のオーソドックスな着物だ。

「むぅ……」
「もちろん妹よ、とてもびゅーちふるだ、そしてそーきゅーとだ。その姿はまるで妖精の園で踊る妖精の如くだぞ」
「むぅ……」

 妹は僕の誉め言葉に少し照れたようになり、そっぽを向くが先ほどからつないでいた手には少し力が入っていた。


 ※


「はっはっは、そういうわけで初詣も済ませ、我が家だよ」
「……こたつ……」
「ふっ、軟弱ね妹さんは」
「そういうお前はダッシュで着替えて戻ってくるとかどっかの役者か?」
「何か文句でも?」
「いや……」

 俺とのやり取りの間、時折妹の視線と幼馴染の視線がキッという擬音と共にぶつかりあってすぱーくぅしているのが見受けられる。仕方ないなぁこの二人は(苦笑)

 さてさて、竜虎相まみえている、決してマミってはいない二人は置いておき、冬といえば、正月過ぎといえば、これである。

「あら、お餅じゃない」

 幼馴染がいち早く気付いたようだ。さすが食い意地がはっている。

「ん? なにか失礼なこと考えてない?」

 いや、何も考えていない気のせい火の精、水の精だ。

「兄……二つ食べたい。あと光と闇の精もいれたい」

 うん、そうくるよな、わかっているぞ妹よ。砂糖醤油に黄な粉がいいかな? あと闇の精はまだ昼だしいいんじゃないか? 入れなくても

「あ、私も二つでいいわ」

 うん、お前も食うんか~い! まぁいいですよ。まだお餅は用意してあるからね。さてこれを先ほどから部屋を暖めているストーブの上にアルミホイルを惹きましてわざわざこうやって、台座を置き焼き網を置きます。

 そして餅が置かれる。鎮座マシマシである。なお、お残しは許しまへん。そして見つめ合う瞳にレーザービームが、焼き網へと注がれている恋模様などとしていたら、ふと妹がこっちを見たあと、幼馴染のいるせいかやや控えめにだろう、そっと伝えてきた。

「……兄……かいぎを……はじめます……」

 今日も妹の会議が始まるようだ。
 妹曰く、世界の真実を知る会議が……。
 なお幼馴染は呆れた顔をしつつも付き合ってくれる気のようだ。

「兄……お餅は甘美で危険……そしてメタモルフォーゼする」
「たしかにな。お餅は千変万化にて、イッツ・ア・デンジャラスモンスターだな」

 ぷくぅーっと焼き網の上で餅が膨れる。

 餅……。もち米を加工して作る。呼び方としてはお餅と呼ばれ、粒状の米を蒸して杵でついたつき餅と穀物の粉を練り、蒸しあげた練り餅の二種類に分けられる。

「はじまったわね……」

 幼馴染が僕が話し始めたのを聞いて小さくため息をつくが、そんなことはどうでも良い些細なことなので続ける。

 触法は神饌として残って、日本ではこれを『しとぎ』といったらしい。モチの語源については、古語の「モチヒ」「モチイヒ」から、もしくは望月の形状から等、まぁ色々ある。

「兄……神饌?」
「新鮮?」
「妹よ今説明する。幼馴染よそれはかなり違う」
「神饌というのは、神社や神棚に備える供物のことだな。お供え物だな」

「「あぁ……」」
「兄は私に供え物を……」

 どうやら二人とも納得したらしい。妹のソレは間違っていないが、あっているとも言い難く悩みどころだ。
 ちなみに沖縄のぞいて、たいていのところでは、餅といえばつき餅のことで、練り餅はあれだ、団子のことになるらしい。

「……団子もいい」
「そうね」

 因みに、日本の書物だと、『豊後国風土記』に餅の内容が載っていたりもする。他にも沢山の書物に出てくるようなので、気になる良い子は調べてみると面白いぞ。団子についてはそのうちまた気が向いたらな。

「誰に言ってるのよそれ」
「良い子だ……気にするな」

 さてお待ちかねの食べ方だな。これはもう、ものすごいあるんだよ。

 なので一気に行くぞ!

 揚げ餅、飴餅、餡餅、大福、磯辺餅、えび餅、かき餅、おかき、柿餅、草餅、
 豆餅、からみ餅、かんころ餅、きなこ餅、巾着餅、くるみ餅、凍り餅、笹餅、
 酢餅、ずんだ餅、栃餅、納豆餅、菱餅、へぎ餅、水餅、バター餅、あ、あとピザ餅もいい。

「また色々出てきたわね~」
「……まさに千変万化……」

 後は定番のお汁粉だの雑煮だの、力うどんなんてのもあるな。まさにお餅は、その地域の特色なんかも出るからな。育成タイプとしては万能型も特化型もいけるな。

「お餅は確かに素晴らしい……だが、その実、危険な食べ物だってことも忘れちゃぁいけないんだ」
「そういえば危険だって言ってたわね」
「……でんじゃらすくぃーん?」

 くぃーんかどうかさておき、餅を詰まらせて亡くなってしまう方が実は毎年、千三百人超いるらしいんだ。

「それは極悪人レベルよ?!」
「……でんじゃらす……」

 くぃーんじゃなくなったんだな。そうまさに犯人はこいつだ。死因はもちろん窒息死だな。詰まった時は掃除機で吸い出すとかあるみたいだが、呼吸器を痛めかねないので注意が必要だな。なんか民間薬では鶏冠の血を飲ませるとかあるらしいが、なんかアレだよな。効くんかそれ?

 まぁ何はともあれ餅っていう奴は油断大敵な奴だってことだ、おっと、餅が焼けたな。

 焼けた餅を皿に移し、味付けをするために台所へと僕は移動する。外では元気よくこの寒いのに近所の子が遊んでいて、向こうの声がよく聞こえないが、なんか仲良さそうに話しているのでいいだろう。

「ふーん、餅ねぇ……」
「幼馴染は焼きもち焼きなところがある……」
「はぁ~?!」
「……でも兄は私の兄……幼馴染の餅で窒息するようなことは……(じー……)ない」
「別にそんなんじゃないけど~ってか何見てるのよ!?」
「……(じーっ)きっと私のほうが大きくなる……」
「ちょっ!!」

 餅の味付けをそれぞれ済ませ、部屋へと持っていく。冷蔵庫に餡子や大根もあったので、磯辺、砂糖醤油、餡子、大根、あとピザ餅を持って戻る。

「ん? なんか仲良く話していたな」
「え? それはアンタの妹が……」
「兄、何も問題はない。それよりお餅」
「ちょっ?」
「ん? そんなに幼馴染も待ち遠しかったのか? 餅は切り餅二個で、ゴハン一杯分って言われているからな。食べすぎは要注意だぞw」

 どうやら本日の会議はこれで終了らしい。このあと幼馴染と妹がお代わりを要求してきたので、再度念を押してお代わりを用意した。

 まぁあれだよ。ようは世界は平和で今日も妹は断然可愛い! それでいいのだ。今年も良い年になりそうだなぁ……それでは本日の妹と僕の会議、おまけに幼馴染の会議を終えます。

「……まだ私だって伸びしろがあるんだからね?」
「ふっ……伸びしろがないものほどそう言う……」

 このお話は、どこにでもいる家族、どこにでもいる兄妹のお話し。
 ただ、少しだけ違うのは、この妹は、小学一年生にして既に厨二病だということ……だったのです。
 そうこれは、どこにでもありそうでない、妹と僕の世界の真実の会議のお話し……なのです。

「今が二月だっていうのは気にしちゃダメ……」
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