ヴァニッシュ~錯綜の迷宮~

麻井祐人

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Chapter 10  終わりの始まり

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廃工場の戦いで、ダークウッドに顔面ひざりをくらった
FBI捜査官ジェイク・ハリスは病院のベッドに寝ていた。

右手には、催眠誘導薬の点滴がされていた。
ベッドのかたわらの椅子に座り精神科医が催眠法でジェイク・ハリスから

デバイスの暗号を聞き出そうと必死になっていた。


「先生。どうですか?デバイスの暗号は聞き出せましたか?」
FBI捜査官のトム・ミラーが病室に入ると精神科医にたずねた。


「ジェイク・ハリスはデバイスの暗号をアダム・タイラーという
 架空の人物像を作り、その意識の中にデバイスの暗号を閉じ込めていました。
 ですが、何とか聞き出すことが出来ました」と言って

精神科医は額の汗を右手で拭った。


FBI捜査官のトム・ミラーは手帳とペンを胸元のポケットから取り出すと
「で、デバイスの暗号は?」と精神科医に聞いた。


「デバイスの暗号は、85673455です。たぶん間違いないでしょう」
と言うと精神科医は安堵あんどの表情を見せた。


「先生、ありがとう」とトム・ミラーは精神科医の肩に手を添えてねぎらった。


トム・ミラーが、病室を出ると携帯電話が鳴った。


ノヴァリア合衆国のジョンソン大統領からの電話だった。
「はい、トム・ミラーです。」
病院の廊下を歩きながらトム・ミラーは、大統領が何を言うのか緊張した。


「トムか、海は良いぞ!お前もクルージングに来たらどうだ」
ジョンソン大統領は、沖合の海でボートに乗ってリフレッシュしているようだった。


「いえ、大統領。まだ仕事が残っていますから」とトム・ミラーは断った。


「ジェイク・ハリスからデバイスの暗号は聞き出せたか?」
とジョンソン大統領は真剣な声でトム・ミラーに聴いた。


「はいデバイスの暗号が分かりました」とトム・ミラーは答えた。


「テロ集団の廃工場から小型爆弾ヴァニッシュは、奪い取ったし、
 デバイスの暗号も分かったし、まあ、テロ集団を逃したのは問題だが、
 弱体化さることが出来た。ご苦労だったなトム・ミラー。後で報告書を書くように」

そう言って、ジョンソン大統領の電話は終わった。


トム・ミラーは、病院を出ると駐車場に置いてある車に乗り
エンジンを始動させた。時計を見ると3時を少し過ぎていた。


スマホを取り出すと、トム・ミラーは、ある男に電話を掛けた。
「デバイスの暗号は、85673455です」


「了解だ。友よ」とその男は冷静な声で返し電話を切った。


「小型爆弾ヴァニッシュを奪い取っただ?あれはダミーだよ大統領。
 本物はあんたの船の中だ」と

トム・ミラーはつぶやくと、ハンドルを握りしめ車を発進させた。


ある男の手の中には、小型爆弾ヴァニッシュのデバイスが握られていた。
「85673455」と指が迷わずに暗号を入力した。


ボートに乗ってクルージングを楽しんでいる
ジョンソン大統領と船の周りが一瞬、


真空状態のように静まり返ったかのように感じられると
眩しい光が談笑している大統領や船を静かに包み込んでいった。

遅れて大きな轟音ごうおんと共に衝撃波が空に広がり、大気を貫いた。
水柱ときのこ雲が遠くからも分かるように見えた。


ゾラクス・ダークウッドは、遠くから、そのきのこ雲を眺めていた。
「トム・ミラーもテロ集団「Blast(ブラスト)」のメンバーだとは
 ジェイク・ハリスも大統領も気付くまい」

そう言ってゾラクス・ダークウッドは、
小型爆弾ヴァニッシュのデバイスを海に投げ込むと

ポケットから煙草を一本取り出し、ジッポのライターで火をつけた。


   【THE END】
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