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第四章
43.星月夜
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「さて、これで疑問には答えたわね。他には……と言いたいところだけど、そろそろお開きにしましょうか」
先ほどまでの貫禄いっぱいの態度から一変、柔らかな声色でロゼミナさんが私たちに告げる。
「ごめんなさいね、お疲れのところ色々喋っちゃって」
「いや、大丈夫だよ。貴重な話が聞けてよかっ……た?」
ソファから立ち上がったミェルさんが、何かに驚いたように自分の身体を見つめ、グルグルと肩を回し始める。
「どうしました?」
「身体が軽い。それに傷も塞がって……」
そういえばと彼女の肌を確認すると、痛々しかった切り傷が薄皮をはって、いつの間にか治りかけていた。
ミェルさんは止血こそできるが、治癒魔術はあまり得意ではなかったはず。とすれば……
「ふふ、早速効力が出たわね。お茶に溶かした私の魔術」
飲み干されたカップをまとめながらロゼミナさんが穏やかに語る。
曰く、身体の再生力を高める魔術を事前にお茶に仕込んで、疲労回復と治療を済ませてしまっていたらしい。なんて仕事の早い人だろう。
おかげさまですっかり今日一日の疲れが吹き飛んでしまった。
「さて。話も済んだことだし、屋敷の部屋を手配するから、ぜひゆっくりしていってちょうだい」
*
「は~、今日は特にキツかったなぁ。さすがの私でも死ぬところだった」
「なんで居るんですか、あなたは」
ロゼミナさんの屋敷の一室。
夕食からお風呂まで何不自由なく用意してくれたおかげで、心身ともに回復することができた。
当然部屋も二人分ある……のにも関わらず、なぜかミェルさんが私の部屋に来た。
「眠くなるまでの話し相手が欲しいもんだろう?」
豪華なベッドにミェルさんは身を投げ、ゴロゴロ転がりながら呟いた。
本当に自由な人だ。
「まぁ、別に私は要らないですけど?ミェルさんが欲しいって言うならいいですよ」
ちょっとした対抗心が湧いて、つい意地の悪い返しをしてしまった。
しかし、肝心の返答がない。
ミェルさんの方を見ると、うつ伏せのままピクリとも動かずじっとしている。
「あれ、ミェルさん?」
恐る恐る近づくと、微かに寝息のような音が聞こえてきた。
「この人はほんっとに……!!」
ゴロンと彼女をひっくり返すと、案の定だらしない顔で寝入っている。自分勝手が過ぎる。
どかすにしても面倒だし……しょうがない。後で私がミェルさん用の部屋に行けばいいや。
――ふとそんなことを考えていると、涼しい風がどこからか部屋に吹き込んだ。
見ると、少しだけ開かれたベランダのガラス扉。
誘われるようにして思わずベランダに出るとそこには、満天の星空が広がっていた。
「わぁ……!!きれい……」
澄み切った夜空を見上げて、風を受けるために両手を広げると、爽やかにそよ風が駆け抜けて私の肌を撫でていく。
漠然と感じていた不安も、心配も、和らいでいくようだった。
夜の匂いに紛れて運ばれてきた花の香りを感じながらぼんやりと村を眺める。
ここに来るまで大変だったけど、ひとまず落ち着ける場所に来れて良かった。
残る問題はリスルディアを相手に月水晶の奪取ができるかだけど、大丈夫。私は私にできることをやるだけだ。
――それにしても、花の香りが強い。
ベランダを見渡しても花なんてないし、いくら風が吹いていても村の花の香りがここまで届くとは考え辛い。
一体、どこから……。
そうこうしている内にも出所の分からない香りは強さを増していく。
ひょっとしたら何か良くないことが起こるかもしれない。万が一に備えてミェルさんを起こしに行こうとして振り向いた、その時だった。
『成功したようね……急ごしらえにしては上出来、かしら』
小柄な身体を覆う長い金の髪。透き通る桃色の瞳。
そこに居たのは紛れもない、花園の魔女――。
「プレジール、さん?」
先ほどまでの貫禄いっぱいの態度から一変、柔らかな声色でロゼミナさんが私たちに告げる。
「ごめんなさいね、お疲れのところ色々喋っちゃって」
「いや、大丈夫だよ。貴重な話が聞けてよかっ……た?」
ソファから立ち上がったミェルさんが、何かに驚いたように自分の身体を見つめ、グルグルと肩を回し始める。
「どうしました?」
「身体が軽い。それに傷も塞がって……」
そういえばと彼女の肌を確認すると、痛々しかった切り傷が薄皮をはって、いつの間にか治りかけていた。
ミェルさんは止血こそできるが、治癒魔術はあまり得意ではなかったはず。とすれば……
「ふふ、早速効力が出たわね。お茶に溶かした私の魔術」
飲み干されたカップをまとめながらロゼミナさんが穏やかに語る。
曰く、身体の再生力を高める魔術を事前にお茶に仕込んで、疲労回復と治療を済ませてしまっていたらしい。なんて仕事の早い人だろう。
おかげさまですっかり今日一日の疲れが吹き飛んでしまった。
「さて。話も済んだことだし、屋敷の部屋を手配するから、ぜひゆっくりしていってちょうだい」
*
「は~、今日は特にキツかったなぁ。さすがの私でも死ぬところだった」
「なんで居るんですか、あなたは」
ロゼミナさんの屋敷の一室。
夕食からお風呂まで何不自由なく用意してくれたおかげで、心身ともに回復することができた。
当然部屋も二人分ある……のにも関わらず、なぜかミェルさんが私の部屋に来た。
「眠くなるまでの話し相手が欲しいもんだろう?」
豪華なベッドにミェルさんは身を投げ、ゴロゴロ転がりながら呟いた。
本当に自由な人だ。
「まぁ、別に私は要らないですけど?ミェルさんが欲しいって言うならいいですよ」
ちょっとした対抗心が湧いて、つい意地の悪い返しをしてしまった。
しかし、肝心の返答がない。
ミェルさんの方を見ると、うつ伏せのままピクリとも動かずじっとしている。
「あれ、ミェルさん?」
恐る恐る近づくと、微かに寝息のような音が聞こえてきた。
「この人はほんっとに……!!」
ゴロンと彼女をひっくり返すと、案の定だらしない顔で寝入っている。自分勝手が過ぎる。
どかすにしても面倒だし……しょうがない。後で私がミェルさん用の部屋に行けばいいや。
――ふとそんなことを考えていると、涼しい風がどこからか部屋に吹き込んだ。
見ると、少しだけ開かれたベランダのガラス扉。
誘われるようにして思わずベランダに出るとそこには、満天の星空が広がっていた。
「わぁ……!!きれい……」
澄み切った夜空を見上げて、風を受けるために両手を広げると、爽やかにそよ風が駆け抜けて私の肌を撫でていく。
漠然と感じていた不安も、心配も、和らいでいくようだった。
夜の匂いに紛れて運ばれてきた花の香りを感じながらぼんやりと村を眺める。
ここに来るまで大変だったけど、ひとまず落ち着ける場所に来れて良かった。
残る問題はリスルディアを相手に月水晶の奪取ができるかだけど、大丈夫。私は私にできることをやるだけだ。
――それにしても、花の香りが強い。
ベランダを見渡しても花なんてないし、いくら風が吹いていても村の花の香りがここまで届くとは考え辛い。
一体、どこから……。
そうこうしている内にも出所の分からない香りは強さを増していく。
ひょっとしたら何か良くないことが起こるかもしれない。万が一に備えてミェルさんを起こしに行こうとして振り向いた、その時だった。
『成功したようね……急ごしらえにしては上出来、かしら』
小柄な身体を覆う長い金の髪。透き通る桃色の瞳。
そこに居たのは紛れもない、花園の魔女――。
「プレジール、さん?」
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