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こんなの顔が赤くなってしまいます!!

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「でもこうやって話してみたら実際お前はそんなこと考えてないし、しかも俺を倒れるまで追いかける時点でチャンとお前は自分の意見や気持ちで動いているということが分かって本当に反省した。」
「いやいやいや!ほんとにそんなことは考えてせんよ!私の親からも言われてないですし…。別に仲良くしろと誰からも言われたことありません。」
「ならなんで俺に近づこうとしたんだ?」

それはあなたが私の推しだからだとは言えない…。
でも何か理由を言わなければと頭の中で考えていると笑い声が聞こえた。
エイドリアン様はまた笑っていたのだ。

「あぁ、悪い。笑っては失礼だよな。」
「いえ、でも何も言ってないのでなぜかとは思いましたが…。」
「いや、なんて言おう?って考えているのが丸わかりでな。お前は思っていることが全て顔に出ているんだ。」
「え!?ほんとですか!?」
「あぁ。」

(うわぁ、恥ずかしいー!!顔が絶対真っ赤になってます!!)

そう感じて顔を手で抑えるとまたエイドリアン様は笑ったのだ。

「いや、笑ったのはバカにしている訳では無い。」
「ならどうして笑うんですか…?」

恥ずかしくてきっと涙目になってしまったと思う。
エイドリアン様はその表情に焦り始めた。

「いや、全然違うぞ!むしろ顔に出やすいのは普通に見ていて可愛いと思うし!全然、その、だな!」
「可愛い…?」
「いや、違う!いやいや、違わないんだが…!」

焦り始めたエイドリアン様もどんどん顔が赤くなってき出したので私も思わず笑ってしまった。
それに目を丸くしたエイドリアン様だったが私が笑った理由に気付いたのか一緒に笑い始めた。

お互い笑いが収まった時にエイドリアン様は話を続けた。

「本当に表情が分かりやすい者など貴族にはいないんだ。大人になればなるほどどんどん分からない。社交界は腹の探り合いなんだ。それが俺たちの年代でも大人ほどではないが色々派閥とかもある。お前はまだ社交界に出て色々なパーティーに出ていないし、辺境伯であるお前の父親や母親もしょっちゅう出ている訳じゃないからあんまりイメージもわかないかもしれないが…。」
「あれ?お母様は出られてると思うんですが…。」
「それはお前の母親と仲が良い所に出ていると思う。王都ではかなりの数のパーティーがほぼ毎夜行われている。その規模は大小様々だがな。だから有名な貴族のパーティーに出ていないお前の母親は社交界で神秘の華と呼ばれてるんだよ。まぁ辺境伯夫人だからこその特権だけどな。」

辺境伯という位はかなり貴族の中でもかなり高い位置なのだが、辺境と名がつくだけあって、国境と隣接している地域なのだ。
他国が攻めてくる時、1番狙われるのが辺境伯の地域なのだ。その中でもアタナシア家は1番戦が好きな国で何度もこのローズマリアに攻めてきている隣国、アルバリィと1番近い。
だからこそアタナシア家の主はどこよりも強くなければいけない。
そしていつ攻めてくるか分からないのでだいたい領地にいなければならないのだ。

「俺も色々と父様に付いてパーティーに出ているんだが、ほんとに疲れるんだ。だからこそお前のように表情が分かりやすい者というのは新鮮でつい笑ってしまったんだよ。」
「そうだったんですか…。」

そう言うとエイドリアン様は私に手を伸ばして私の髪をひと房掴み、そっとその髪を自分の顔に近づけて軽くキスをした。

「お前はそのままでいてくれ。ずっと分かりやすくいろとは言わない。でも俺の前ではそのままでいてくれ。」
「へ?え?!あの…その!」

そう言うとすぐ私の髪から手を離してイタズラが成功したように笑った。
また私の顔は真っ赤になっているのだろう。
いや、推しにこんなことされて赤くならない奴などいない!

「エイドリアン様がこんなにいじわるな方だとは思いませんでした!」
「ダメか…?」

やめてくれ、その上目遣い。

「ダ、ダメでは…。」
「アハハ!!ほんとに面白いな!!」
「あ、またからかいましたね!?」
「アハハハ!!」
「もう、エイドリアン様ったらー!」
「悪い、悪い。からかいすぎたな。」
「まぁもう良いですけど…。」
「ところでそのエイドリアン様っていうのやめろ。」
「え?」
「長い。よそよそしい。」
「えぇ?!でも…一応エイドリアン様は公爵家の方ですし…。」
「敬語もやめろ。」
「えぇー!」
「んーじゃぁ俺もお前っていうのやめる。」
「それとこれとは話が違います。」
「いや、違わない。」
「そんな無茶苦茶です…。それに敬語は癖のようなものなんです…。」

(そうしないと自分の素が隠せない気がするし、普通に推しがー!とか言いそうなのだ。)

「まぁ敬語はおいおいで構わないけど、俺のことはエイドって呼べ。」
「う、そう呼んでも、良いの、ですか…?」
「俺が良いって言ってるだろ?はい、じゃぁ練習!」
「へ?」
「はい、呼んでみろ。」
「エ、エイド、様…。」
「様はいらない。」
「そんなこと言っても身分が…。」
「気にするな。はい、もう一度。」
「エ、エイド…。」
「はい、よく出来ました、ルゥ。」

満面の笑みで私の頭を撫でた。
その後、熱が出てまた倒れたことは言うまでもない。
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