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12.
今日は花嫁教室の日で、料理を習う。俺は受付や材料道具の準備、記録写真を撮ったりする係だ。
「セナ君は最近オメガになったんだよね?」
「うん」
「ビックリしたでしょ」
今はオーブンで完成を待つ時間で、やることがないため参加者との交流を楽しんでいる。これはサボっているわけではなく、オーナーから「私はアルファだから。同じオメガとの方がより気も楽になるでしょ?」と、参加者に混じるよう言われているからだ。
「すごくビックリしたよ。今までベータ寄りで生きていたからさ」
「突然オメガになる方が大変だよね。世界観ひっくり返るじゃない?」
心配気な表情を見せるこの人は麻木さん。ものすごく可愛くて良い匂いがする男の人だ。結婚適齢期になったからと、花嫁修行と見合いを強要されているらしい。
良いお家のオメガは良いお家のアルファの番になることが一番の幸せだと言われているそうで、少しでも自分の価値を高めるための花嫁教室はいつだって人気なのだと先生が言っていた。しかもここは珍しくアルファが先生をしているから、アルファ側の好感に沿った授業をしてもらえるからより人気なのだと麻木さんたちが言っていた。
「うん。全然オメガってことが受け入れられなくて」
「生きづらいもんね。僕も毎週見合いで本当に大変なんだよ」
麻木さんなら引く手数多だろうなと思った。
「セナ君は? オメガになると、正直アルファと付き合うのが一番だってことは否定出来ないからさ。恋人いる?」
「いないよ。アルファは好きじゃないし」
「そうなんだ。じゃあベータかオメガ紹介してあげようか?」
オメガを紹介して欲しい、と言おうとしたが、俺より先に他の声が返したので一旦口をつぐむ。
「セナちゃんには怖い保護者がいるから下手なことしない方が良いわよ~」
「先生」
可愛らしい声の主は花嫁教室のオーナーで先生だ。俺の雇用主であり志貴の知り合いでもある。
先生はアルファの女性だ。俺よりも背が高く、モデルのように綺麗な人で生徒の殆どが憧れを持っている。
「セナ君の保護者? 怖いんですか?」
「そうよ~。なんて言ってもあの連城志貴なんだから」
「「え!?」」
「――っ!?」
麻木さんだけでなく周りのオメガからも驚いた声が突然上がる。驚いて全身が跳ねた。
「連城志貴さん!? 嘘!?」
「本当よ~」
「本当なの!?」
全員の視線が俺に向く。これほど注目されることがないためしどろもどろになってしまう。
「うん、ん? え、分かんない。保護者?」
保護者、ではないと思う。だからと言って適切な関係性も分からない。強姦されて人生無茶苦茶にされたから責任を取ってもらっている、とは言えない。
「セナちゃん、志貴君のことは保護者って思っておきなさい。ね?」
「はぁ」
「どうして保護者なんですか? どういう関係なの?」
「別に、色々あって」
「うわ~すごい。羨ましい~」
麻木さんがそう言うと、周りの参加者も大きく頷く。
「ですよね~!? 良いな~。連城さんとお近づきになれるとか羨ましい」
「志貴さんってすごいカッコ良いですよね。優性アルファだし」
「パーティーで会ったことあるんだけど、他のアルファとはやっぱ違ってましたもん」
「一度で良いから志貴さんみたいな方とお付き合いしたい~」
……誰の話をしているんだ? 連城志貴って、俺の知るあいつのことじゃないのか?
「あの、連城志貴って、そんなにすごいの?」
おずおずと、興奮し盛り上がる皆に聞いてみる。するとすごい勢いで「当たり前じゃん!」と答えられた。
「連城グループは国内経済を動かすくらいすごい企業なんだから! 志貴さんはそこの三男なんだけど! 皆優性アルファなの!」
「そう! 顔も良くてステータスも最上級! 連城グループのホテル事業の代表をしていて! 業績は右肩上がり!」
「アルファの中で番にしたいナンバーワンなんだよ! 多くのオメガが番の座を狙っているんだから!」
熱気がすごく、無意識のうちに体が引いてしまう。
あいつがそんなに人気なんて信じられない。最近は一緒にいるけどあいつの良さは一ミリも分からない。
「へー」
だから、興奮気味に教えてもらってもそんな反応しか出来ない。
「セナ君は一緒にいて良いなって思わないの?」
「うん」
「えー? 嘘ー? クラっとこない?」
「こないよ」
「良い匂いしない?」
「……」
それは、するかもしれないけど。でもだからなんだって話だ。
「本当に興味ないんだ~。オメガになったばかりだからかな?」
麻木さんは驚いた顔でそう納得する。
「志貴さんのこと紹介して欲しいな~」
「こらこら。セナちゃんを困らせちゃダメよ? 変なことも教えちゃダメだからね」
先生がそうまとめたところでタイミング良くオーブンが鳴る。お喋りは終わり、最後の飾り付けが始まった。
「セナ君は最近オメガになったんだよね?」
「うん」
「ビックリしたでしょ」
今はオーブンで完成を待つ時間で、やることがないため参加者との交流を楽しんでいる。これはサボっているわけではなく、オーナーから「私はアルファだから。同じオメガとの方がより気も楽になるでしょ?」と、参加者に混じるよう言われているからだ。
「すごくビックリしたよ。今までベータ寄りで生きていたからさ」
「突然オメガになる方が大変だよね。世界観ひっくり返るじゃない?」
心配気な表情を見せるこの人は麻木さん。ものすごく可愛くて良い匂いがする男の人だ。結婚適齢期になったからと、花嫁修行と見合いを強要されているらしい。
良いお家のオメガは良いお家のアルファの番になることが一番の幸せだと言われているそうで、少しでも自分の価値を高めるための花嫁教室はいつだって人気なのだと先生が言っていた。しかもここは珍しくアルファが先生をしているから、アルファ側の好感に沿った授業をしてもらえるからより人気なのだと麻木さんたちが言っていた。
「うん。全然オメガってことが受け入れられなくて」
「生きづらいもんね。僕も毎週見合いで本当に大変なんだよ」
麻木さんなら引く手数多だろうなと思った。
「セナ君は? オメガになると、正直アルファと付き合うのが一番だってことは否定出来ないからさ。恋人いる?」
「いないよ。アルファは好きじゃないし」
「そうなんだ。じゃあベータかオメガ紹介してあげようか?」
オメガを紹介して欲しい、と言おうとしたが、俺より先に他の声が返したので一旦口をつぐむ。
「セナちゃんには怖い保護者がいるから下手なことしない方が良いわよ~」
「先生」
可愛らしい声の主は花嫁教室のオーナーで先生だ。俺の雇用主であり志貴の知り合いでもある。
先生はアルファの女性だ。俺よりも背が高く、モデルのように綺麗な人で生徒の殆どが憧れを持っている。
「セナ君の保護者? 怖いんですか?」
「そうよ~。なんて言ってもあの連城志貴なんだから」
「「え!?」」
「――っ!?」
麻木さんだけでなく周りのオメガからも驚いた声が突然上がる。驚いて全身が跳ねた。
「連城志貴さん!? 嘘!?」
「本当よ~」
「本当なの!?」
全員の視線が俺に向く。これほど注目されることがないためしどろもどろになってしまう。
「うん、ん? え、分かんない。保護者?」
保護者、ではないと思う。だからと言って適切な関係性も分からない。強姦されて人生無茶苦茶にされたから責任を取ってもらっている、とは言えない。
「セナちゃん、志貴君のことは保護者って思っておきなさい。ね?」
「はぁ」
「どうして保護者なんですか? どういう関係なの?」
「別に、色々あって」
「うわ~すごい。羨ましい~」
麻木さんがそう言うと、周りの参加者も大きく頷く。
「ですよね~!? 良いな~。連城さんとお近づきになれるとか羨ましい」
「志貴さんってすごいカッコ良いですよね。優性アルファだし」
「パーティーで会ったことあるんだけど、他のアルファとはやっぱ違ってましたもん」
「一度で良いから志貴さんみたいな方とお付き合いしたい~」
……誰の話をしているんだ? 連城志貴って、俺の知るあいつのことじゃないのか?
「あの、連城志貴って、そんなにすごいの?」
おずおずと、興奮し盛り上がる皆に聞いてみる。するとすごい勢いで「当たり前じゃん!」と答えられた。
「連城グループは国内経済を動かすくらいすごい企業なんだから! 志貴さんはそこの三男なんだけど! 皆優性アルファなの!」
「そう! 顔も良くてステータスも最上級! 連城グループのホテル事業の代表をしていて! 業績は右肩上がり!」
「アルファの中で番にしたいナンバーワンなんだよ! 多くのオメガが番の座を狙っているんだから!」
熱気がすごく、無意識のうちに体が引いてしまう。
あいつがそんなに人気なんて信じられない。最近は一緒にいるけどあいつの良さは一ミリも分からない。
「へー」
だから、興奮気味に教えてもらってもそんな反応しか出来ない。
「セナ君は一緒にいて良いなって思わないの?」
「うん」
「えー? 嘘ー? クラっとこない?」
「こないよ」
「良い匂いしない?」
「……」
それは、するかもしれないけど。でもだからなんだって話だ。
「本当に興味ないんだ~。オメガになったばかりだからかな?」
麻木さんは驚いた顔でそう納得する。
「志貴さんのこと紹介して欲しいな~」
「こらこら。セナちゃんを困らせちゃダメよ? 変なことも教えちゃダメだからね」
先生がそうまとめたところでタイミング良くオーブンが鳴る。お喋りは終わり、最後の飾り付けが始まった。
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