愛に変わるのに劇的なキッカケは必要ない

かんだ

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 志貴との毎日は変わったようで変わっていない。
 外でのバイト以外は志貴の家でハウスキーパーをしたり映画を観たり好きに過ごした。
 珍しく、平和で何もない日々だった。昔のようにゆとりもなく働いていた時とは全く違う。これからもこのままでいて欲しいなと思ったけど、二月経った頃、ついに発情期がきてしまった。
 志貴の家でゆっくりしている時だ。志貴はダイニングテーブルでパソコンと向き合っていて、俺はクチコミの良かった映画を観ていた。
 急に背筋がぞくっとしたと思ったら、全身が熱くなった。風邪を引いた時と同じ感覚だ。
「志貴」
「どうした?」
「なんか、風邪っぽいかも」
 そう言うと、志貴はすぐに俺の額に手を当て体温計を渡してきた。結果は平熱よりも高い。
「ヒートの前兆だろうな。今すぐ入院しよう」
「お前も?」
「あぁ、隣室を取ってある。会いには行けないけどな」
 志貴は事前に用意してあった入院セットを持ち、タクシーを呼び寄せる。手を繋がれてオメガ専門病院へと向かった。
「セナ、ここはオメガとベータしかいないから安心しろ。このボタンを押せばすぐに看護師が来てくれるからな。本格的にヒートに入ったら、内側からは開けられなくなるから気を付けろ」
「ん。お前は?」
「俺もいるよ。安心して良い」
 志貴は俺が発情期に入るまでずっとそばにいた。全身が熱くなって風邪を引いたような感覚だ。
「苦しいか?」
「ん、風邪?」
「ヒートの前兆だよ」
「ん、しき」
「どうした?」
「怖い。……どうしよう」
「大丈夫だ。定期検診受けてるだろ? お前の体質を参考に抑制剤を処方するから、すぐに合うものが見つかるよ」
 ベッドで横になっている間、志貴はずっと俺の手を握っていた。
「ヒートの時も、そばにいろよ」
「それは無理だ。お前といたら襲う。嫌だろ?」
「いやだけど」
 一人も嫌だ。
「もし出来たら電話しような」
「そばに、いればいいのに」
「ヒートが終わっても同じことを思ってくれるなら、次のヒートは一緒に過ごそう」
 志貴は俺の額にキスする。それが気持ち良くてもっとして欲しくてねだってしまった。
 
 その日の夜、本格的な発情期に入ったのだった。
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