世界一大好きな番との幸せな日常(と思っているのは)

かんだ

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6.久しぶりの仕事

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「おかえりなさい」
 出迎えればすぐに抱擁される。冬の匂いとフェロモンが混ざったものがふわっと鼻腔を掠めた。キスをされると外の寒さが伝わってくるようだ。
「弟と会えて楽しかったか?」
「はい。蒼さんに会いたがっていましたよ」
「ならすぐにでも食事会を開かないとな」
 蒼さんが帰宅すれば寝るまで二人の時間をひたすら堪能する。周りから飽きないのかと驚かれるほど、ずっと近くにいながら会話をするのだ。俺は家にしかいないのに喋ることはたくさんある。
「それで渚佐から働いてみないかって」
 会話の途中、軽い感じで言ってみる。俺はそのつもりないんだけど、という雰囲気を出しながら。
「へぇ? 和佐は何て答えたんだ?」
 ……蒼さんの反応が分からない。口元はいつも通り笑ってはいるし声のトーンは一緒。
「えと、考えてみるよって。せっかく色々調べてくれたみたいだから」
「和佐は働きたいか?」
 頬を撫でられ、真っ直ぐと見つめられる。
 どうせ蒼さんに嘘は通じない。俺は思ったことを素直に言ってみる。
「ちょっと、働きたいとは思います。お菓子作りは好きなので。でも、一人で外に出るのは、怖い、です」
 一人で外に出て、もしもまた運命の番と出会してしまったら――そう思うと外に出るのは怖い。二度と蒼さんを不安にさせたくない。
「俺も、和佐を一人で外に出すのは怖い」
 ぎゅっと抱き締められる。強い力は縋っているように思ってしまう。
「でも、和佐がやりたいことを応援したい。だから、せめて俺が探してきても良いか?」
「探すって、働き先?」
「そうだ」
 顔を覗き込んでくる蒼さんはいつもと変わらない自信に満ちた表情をしている。
「良いか?」
「……良いんですか? 本当に」
「あぁ。俺もそろそろ、和佐には好きなことをして欲しいと思っていたんだ。このままじゃダメだともな」
 蒼さんは働く俺が好きだと言ってくれた。自分のせいで家にいるしか出来ないことに、ずっと罪悪感を抱いていたということも、教えてくれた。
「罪悪感なんて……俺が好きで専業主夫しているだけなのに」
「俺がみっともなく泣いたりしたからだろう? 悪かった」
「謝らないでください。俺は何よりも蒼さんが大切なんです」
「ありがとう」
 それから、蒼さんとどういうところで働きたいか、安心するか、お互いの条件を話す。
 その結果、元々仕事が早い蒼さんは翌日には候補先を見繕い俺に提案をしてくれた。しかも、すぐにでも働けると言う。
「ここは俺の部下の知り合いがやっている洋菓子店だ。場所は俺の通勤路の途中だから朝は一緒に行けるし、帰りは店員が菓子の配達をするのに合わせて送ってもらえる」
「え、そこまで? というかお菓子を配達しているんですか?」
 送迎の話にも驚いたが、洋菓子店が配達をしていることにも驚く。
「通勤時に何かあったら怖いからな。立地も勤務時間も良い。その店には得意先があるんだと。毎日決まった時間に配達をしていて、マンションを通る。どうだ?」
「そこまで甘えて良いのかな……」
 ものすごく好条件な店だが、配達のついでだとしても送ってもらって良いのだろうか。周りに迷惑をかけるくらいなら働かない方が良い気がしてしまう。
 悩んで答えられない俺に、蒼さんは「大丈夫だ」と隣に座り直す。
「ここは短時間の働き手が欲しいが、フルでの希望者しかいなくてずっと見つからなかったらしい。だから働いてくれる人材がいるなら早く来て欲しいと言っているくらいだから」
「そうなんですか?」
 頷く蒼さんに、迷惑にならないなら良いかなと揺れる。
「じゃあ、働かせてもらおうかな?」
「あぁ」

 俺はこの一週間後、久しぶりに働くことになった。
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