世界一大好きな番との幸せな日常(と思っているのは)

かんだ

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11.不安(R-18)

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 マンションに帰った後、俺は何のやる気も出なくてソファーに倒れ込む。考えることは蒼さんのこと。もしも俺がヒートになれば、仕事を置いてそばにいてくれただろうか、そんな馬鹿なことを考えてしまう。
 番になったことでフェロモンが安定し、周期は三ヶ月から半年になった。喜ばしいことなのに今は不満でしかない。
「蒼さんに会いたいな……」
 会いたい。会いたくてたまらない。
 一度そう思うと会いたい気持ちが止まらなくなる。
「連絡、してみようかな」
 スマホを手に、蒼さんの連絡先を眺める。今も仕事中だから出られない可能性が高いけど、時間が出来た時に折り返してくれる。
 邪魔をすると分かっていても寂しくて堪らず、指は発信ボタンを押してしまいそうになる。
 だけど、そのタイミングで「ただいま」と蒼さんの声が聞こえた。
「――っ!」
 驚いて飛び起きる。玄関に走れば蒼さんがいた。
「蒼さん!?」
「和佐? どうかしたのか?」
 会いたいと思っていたところで会えた。それがただ嬉しくて、俺は蒼さんに飛び付いた。しっかりと抱き止めてもらう。
「会いたかったのか?」
「……はい」
「そうか」
 蒼さんは俺をそのまま抱き上げて、リビングのソファーまで運んでくれる。膝の間に座らされてあやすように背中や頭を撫でられた。
「最近忙しくて、会えない時間が多かったからな。大丈夫か?」
「大丈夫ではないです。でも、仕事なので、我慢します。いつかは落ち着くでしょう?」
「あぁ。ただ……」
 蒼さんはそこで言いにくそうに言葉を切る。言い淀む姿が珍しく、嫌な予感がした。
「ただ、来週から二週間ほど海外へ行くことになった」
「え、海外?」
「和佐は仕事を休めるか? 俺はいつものように着いて来て欲しいんだが」
 休めるかどうかなら、多分休めない。ようやく三人での回し方に慣れ余裕が出来てきたのだ。急きょ二週間もなんて無理だ。
 だけど、二週間も一切顔を合わせられないことも、無理。
 俺は答えられなくて俯くしかなかった。
「仕事、辞めるか?」
 その言葉にも、反応出来なかった。
「俺は和佐と二週間も離れるなんて考えたくはない。もし店側が良ければ、和佐の代わりに入れる人間を探しても良い」
「……いや、そんなワガママ、言えません」
「だがお前を置いて海外へ行くことは出来ないし、後回しにも出来ないんだ。和佐は我慢出来るか?」
「出来ません」
 はっきり答えれば額にキスをされた。
「俺もだ。着いて来てくれるか? それとも、お互い我慢する?」
 俺は一人残されるところを想像し、やめた。わざわざ想像しなくても俺が耐えられないことは分かっている。
 蒼さんの服を掴み、緩く首を振る。……俺は社会人失格だ。
「離れたくないです」
「ありがとう。仕事の方は俺が何とかしよう」
 蒼さんが立ち上がろうとすると、俺の体は反射的にそれを阻止しようと抱き付いた。
「和佐?」
「……あの、離れたく、ないです。そばにいてください」
「悪い。不安にさせて」
 蒼さんは俺を抱き上げ、書斎へと移動する。電話をしたり、パソコンを開いたり、全て俺を抱き締めたまま続けてくれた。
「和佐、フェロモンが不安定になっている」
「ぇ、そうですか?」
「あぁ。今日はもう離れないから安心して良い」
「でも」
 今日はそばにいられても、明日はまた顔を合わせられない時間が増える。
「大丈夫だ。少し横になろう」
 蒼さんはやることを終わらせられたのか、俺を抱き締めたままベッドに横になる。
「蒼さん、キスしてください」
「分かった。今日はずっと和佐がしたいことをしよう」
 なら、ずっとキスをしていたい。体を繋げる行為は一番蒼さんを感じられるが、頭が馬鹿になってしまう。今はちゃんと蒼さんがそばにいるという実感を得たかった。
「和佐、好きだよ」
「……俺も」
 その日はずっと、意図的に出してくれた蒼さんのフェロモンに包まれて過ごした。……そのせいか、翌日お互いが仕事のため家を出るという瞬間になって、俺のフェロモンは不安定になり、精神面にも影響が出てしまった。
 玄関先で一歩も足が進まなくなる。
「和佐?」
「あおい、さん」
「どうした?」
「はなれたく、ないです」
 俺は生理的な涙を流しながら、気付けば蒼さんに縋っていた。アルファを誘惑するフェロモンと共に。
「――っ和佐、落ち着け」
「いやです。離れないでください」
「離れない。大丈夫だ」
 抱き締められると、昨日よりも薄いフェロモンに不安になる。昨日は俺を落ち着かせるために意図的に多くフェロモンを溢れさせていただけで、今は普段通り心地良く香る量なのに、それが、不安を煽ってくる。
 もっと蒼さんのフェロモンが欲しくて、俺はアルファを刺激するフェロモンを出す。
「和佐!」
 蒼さんは余裕のない声を荒げたと思えば、すぐに俺を抱き締めキスをしてきた。そのまま俺を壁に押し付け、服を乱していく。蒼さんもスーツを乱暴に投げ捨てた。性急な手付きが全身を這う。
「ぁ」
 蒼さんの指が後ろの穴に差し込まれた。フェロモンを出すと同時に濡れ始めたそこはローションも必要ない。俺を感じさせるというよりも、繋がるために広げることを優先された動きが感じられる。
「っあ、あ゙、ぅん」
 あらかた広げられると、俺の体は軽々と持ち上げられる。すぐに腹がいっぱいになるほど大きく硬いものが下から押し込まれた。
「――っ」
 挿れられたと同時に俺は射精する。久しぶりの刺激に体が驚いたのか、痙攣が止まらなくなる。
「和佐、息をしろ」
「……ぁ、は」
 切羽詰まった声は音として通り過ぎるだけだった。俺の頭は馬鹿になって、ただ蒼さんからの刺激に喜ぶしか出来なかった。
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