転生者支配下のFクラス ~転生を繰り返した少年は問題児クラスを再生する~

せんぽー

文字の大きさ
1 / 8
序章

1 裏切りの世界

しおりを挟む
 「レノくん、君はここで死んでもらうよ」

 ドラゴン討伐後、突如仲間から言われた言葉。

 「え?」

 思わず出た少年の声が洞窟に響いていた。

 少年の仲間、ノートンの言葉を受け、少年は呆然。
 仲間の3人の目つきはすっかり変わり、その瞳は邪魔者を見るかのように、こちらを睨んでいた。

 ―――――俺が何をしたっていうんだ。俺は勇者として、ここまで頑張ってきていたというのに。

 そんな感情が少年の胸に湧き出てくる。
 少年が黙っていると、ノートンが再度話し始める。

 「なぜだ、とでも言いたげな顔を浮かべているね…………確かに君は勇者として活躍してくれた。そのたびに君は周りから評価され、遂にはドラゴン討伐まで任されていた。こんな10歳の子どもは世界のどこを探してもいないだろうね」
 「…………」
 「でも」

 その瞬間、ノートンの顔が見たことのないぐらい歪む。他の2人も不気味な顔を浮かべていた。

 「ガキに指示されるのはもううんざりだ。なんで俺たちがガキに指示されて動かないといけないんだ? 勇者だから? ガキのお前に勇者の紋章があるから? 周りはみんな勇者、勇者、勇者。メンバーの俺たちになんて気にもとめない」

 ノートンに続き、女も男もぶっちゃけていく。

 「私の家族は『小さい子どもといえども、あの子は勇者だから、いい顔をしておきなさい』と口を揃えていうの。本当にうんざり」
 「でも、俺たちがそんな風に苦しむのは今日で終わり。お前が死ぬからだ」
 「俺を殺せば、お前ら捕まるぞ」

 そういうと、3人は一斉に笑いだした。その笑いはまるで少年をバカにしているかのよう。

 「お前は俺たち・・・に殺されるんじゃないんだよ。お前はドラゴンにやられて戦死。死体も全て燃え尽きて、回収できなかったという報告をするんだ。どうだ? いいだろう?」

 まただ。
 また裏切られた。
 前世で散々裏切られてきたのに。この世界でもまた裏切られるのか。

 バックの中の魔石の数をそっと確認。中には10個の魔石しかない。
 これだけしかないのか…………まぁ、逃げることはできる数か。
 少年は覚悟を決め、その場を去るように走り出す。

 「おい! 待て!」

 はっ。殺されるっていうのに誰が待つか。
 幸い、少年の背後は洞窟の出口に繋がる方向だった。
 小さな体を動かし、必死に走り続ける。洞窟には複数の足音が響いていた。

 ――――やばいな。このままでは追いつかれる。

 バッグの中の魔石を取り、魔石の魔力を自分の体へと流す。
 少年の体がもう少し魔力を保持しやすいものであれば、彼はこんな苦労しなかっただろう。

 ――――今回の体も厄介だ。

 少年は自分の体に文句を言いつつ、自分に魔法をかけ、移動速度を上昇させる。すると、足が軽くなり機敏に動かせるようになった。

 これで追い付かれることはないだろうけど…………。

 ちらりと後ろを見る。予想通り仲間のメリアスが弓を構え、少年を狙っていた。
 メリアスは弓使い。狙いは少年の足。

 「チェーシングザラット」

 メリアスがそう唱え矢を放つと、猫が具現化し、少年に向かって走り出す。
 必死に逃げるも、1本の矢が少年の右足に刺さった。

 「つっ!」

 自分が教えた魔法にやられるとは。このやろう。あの魔法を教えるんじゃなかった。

 でも。
 ここで死ぬわけにはいかない。どうせ死んでも同じようなことを繰り返すだけだ。どうせまた裏切られる。

 少年は痛みを堪えながらも、出口に向かって走り続ける。
 女以外の2人はというと走って追いかけていた。

 これは外に出ても追いかけてくるな。
 しかし、この洞窟は国境近く。彼らもさすがに国外にまで追いかけはしない。国外に出れば少年の勝ちであった。

 「っあ゛!」

 出口目前で右足に走る激痛。一瞬視界がぐらりとゆがむ。
 足には1本の矢が刺さっていた。
 
 「ざんねーん。その毒矢はレンのためにわざわざ用意していたの! だから、観念して止まりなさい! ガキンチョ! そんでもって死になさい!」

 そんな女の叫びが聞こえてくる。

 クソっ! クソっ!
 彼らなら信頼できると思っていた少年。
 しかし、その考えがバカであったことに気づき、歯を食いしばる。

 結局少年には信頼できる人間はいない。結局みんな裏切る。
 それでも生きないと――――――――また知らない世界へ送り込まれる。

 死んで、また最初からなんてもうまっぴらだ。
 元の世界に戻りたい。あのクラスに戻りたい。

 少年、レノはそう自分を鼓舞して、月明かりが差し込む出口に向かって、そして、国境を目指して走り続けた。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです

忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...