7 / 8
第1章
7 レノ、Fクラスへ
しおりを挟む
レノが学校に入学して約1ヶ月後の、7月。
その日もレノはいつも通りに学校に登校。
寮から教室に向かっていると、Fクラスの話題がいつも聞こえてくる。
今日はレノの前方にいる女子生徒2人が話しているようだった。
「Fクラスが最近荒れなくなったらしいって聞いたんだけれど、何か知ってる?」
「ええ、知ってるわ。どうも最近転入してきた方がFクラスをまとめているらしいの」
「ええ!? あの問題児クラスを?」
「そうなの。Fクラスは彼が支配したようなものよ」
「噂によると、あの人転生者らしいわ」
「ウソでしょう? 転生者だなんて」
「本人が言っていたそうよ。ほら、あそこにいる人。あれがFクラスの…………」
そんな声が彼の耳に入ってくる。
訝し気な視線を送られているにも関わらず、彼は晴れやかな表情を浮かべていた。
「おはよう! レノ」
「おはよう」
転生者の彼はFクラスの支配者と呼ばれていた。
★★★★★★★★
1ヶ月前。
「…………レノくん、本当にいいのかい。今なら副校長に交渉はできると思うよ」
「はい、いいんです。俺はFクラスに行きます」
「僕は…………その…………おすすめしないよ。君のような子がFクラスに行くことはね。引き返す気はないかい?」
レノの事情なんて知りもしないソーンズ先生。
彼はレノのことを本当に心配しているようだった。つまりFクラスはそれだけヤバいところ。
様子からするにこの人はFクラスの担任なのだろう。
「ないですよ、先生。僕はFクラスじゃないとダメなんで」
「そ、そうかい」
教室からはただならぬ臭いとオーラがしてきた。
まさか、こんなところにアシュレイがいるのか?
生粋のお嬢様がこんなところにいれば、精神状態もおかしくなるのも当然のこと。
レノは思わず鼻を押さえる。
しかし、ソーンズ先生は慣れているのか、表情一つ変えなかった。
レノはソーンズ先生に促され、教室に入る。
入る前に予想していたことではあったが、思った以上に教室の雰囲気もひどいものだった。
細身の男子を中心にして会話をするグループ。
男気のありそうな女子を中心としたグループ。
楽しそうにおしゃべりをしている男女5人組。
そして、各々で勉強や読書をしている人たち。
Fクラスは誰がどう見てもバラバラだった。
アシュレイはどこにいるのだろうか、と教室を見渡す。
ノエリアと2人で過ごしているのだろうが。
しかし、どこを探してもFクラスにアシュレイの姿はない。ノエリアの姿もなかった。
後ろの方には何個かの空席。
アシュレイの手紙を考えたレノは、アシュレイたちは休んでいると判断した。
「どうも、レノ・キーロックです」
レノが挨拶をするが、クラスの一部だけが拍手。男たちは見向きもしなかった。
「あのー! 俺、レノ・キーロックって言います! よろしくお願いします!」
と叫んでやっと男たちがこちらに向いてくれた。まぁ、レノに向けられたのは睨みだったが。
空けてもらっていたのかは分からないが、レノは一番後ろの席に座ることになった。
レノの左側には金髪美少女、前の席には黒髪の少年がそれぞれ座っていた。
右隣の席は空席。
「君の右隣の席はアシュレイさんがいつも座っているよ」
とご親切に金髪美少女が教えてくれた。
アシュレイの前の席にも空席があった。きっと休んでいるノエリアの席だろう。
レノはもう一度Fクラスの教室を見渡す。
学校が始まってまだ2か月。
ここまで険悪な雰囲気になるのだろうか。
一体このクラスに何があったのだろうか。
そして、レノはふと窓の外を見る。
しかし、空に雲があるかどうか確認できなかった。
★★★★★★★★
その日の放課後。
レノはFクラスの女子寮へ向かっていた。
もちろん、アシュレイに会うためである。
寮長に許可を貰えれば、男子でも女子寮に入ってもいいことになっているらしい。優しいことだ。
レノは女子寮の寮母に案内してもらい、アシュレイの部屋に向かう。
彼女は静かに外を眺めていた。
「アシュレイ、俺だけど…………」
レノが話しかけても、反応なし。アシュレイは背中を向けたまま、外を眺めていた。
侍女の方に目線を送っても、侍女は肩をすくめるだけ。
アシュレイはどうやらずっとこんな調子のようだ。
しかし、レノがアシュレイの方に近づいた瞬間。
「え」
アシュレイがレノに向かって走り、そして、彼の胸に飛び込んだ。
ぎゅっとハグをするアシュレイ。
どうしたものかと悩むレノは、彼女の頭をそっと撫でる。
「レノ、レノ…………」
その声は震えていて、彼女の瞳からは涙でいっぱいになっていた。
アシュレイの体はずっとずっと震えていた。
その日もレノはいつも通りに学校に登校。
寮から教室に向かっていると、Fクラスの話題がいつも聞こえてくる。
今日はレノの前方にいる女子生徒2人が話しているようだった。
「Fクラスが最近荒れなくなったらしいって聞いたんだけれど、何か知ってる?」
「ええ、知ってるわ。どうも最近転入してきた方がFクラスをまとめているらしいの」
「ええ!? あの問題児クラスを?」
「そうなの。Fクラスは彼が支配したようなものよ」
「噂によると、あの人転生者らしいわ」
「ウソでしょう? 転生者だなんて」
「本人が言っていたそうよ。ほら、あそこにいる人。あれがFクラスの…………」
そんな声が彼の耳に入ってくる。
訝し気な視線を送られているにも関わらず、彼は晴れやかな表情を浮かべていた。
「おはよう! レノ」
「おはよう」
転生者の彼はFクラスの支配者と呼ばれていた。
★★★★★★★★
1ヶ月前。
「…………レノくん、本当にいいのかい。今なら副校長に交渉はできると思うよ」
「はい、いいんです。俺はFクラスに行きます」
「僕は…………その…………おすすめしないよ。君のような子がFクラスに行くことはね。引き返す気はないかい?」
レノの事情なんて知りもしないソーンズ先生。
彼はレノのことを本当に心配しているようだった。つまりFクラスはそれだけヤバいところ。
様子からするにこの人はFクラスの担任なのだろう。
「ないですよ、先生。僕はFクラスじゃないとダメなんで」
「そ、そうかい」
教室からはただならぬ臭いとオーラがしてきた。
まさか、こんなところにアシュレイがいるのか?
生粋のお嬢様がこんなところにいれば、精神状態もおかしくなるのも当然のこと。
レノは思わず鼻を押さえる。
しかし、ソーンズ先生は慣れているのか、表情一つ変えなかった。
レノはソーンズ先生に促され、教室に入る。
入る前に予想していたことではあったが、思った以上に教室の雰囲気もひどいものだった。
細身の男子を中心にして会話をするグループ。
男気のありそうな女子を中心としたグループ。
楽しそうにおしゃべりをしている男女5人組。
そして、各々で勉強や読書をしている人たち。
Fクラスは誰がどう見てもバラバラだった。
アシュレイはどこにいるのだろうか、と教室を見渡す。
ノエリアと2人で過ごしているのだろうが。
しかし、どこを探してもFクラスにアシュレイの姿はない。ノエリアの姿もなかった。
後ろの方には何個かの空席。
アシュレイの手紙を考えたレノは、アシュレイたちは休んでいると判断した。
「どうも、レノ・キーロックです」
レノが挨拶をするが、クラスの一部だけが拍手。男たちは見向きもしなかった。
「あのー! 俺、レノ・キーロックって言います! よろしくお願いします!」
と叫んでやっと男たちがこちらに向いてくれた。まぁ、レノに向けられたのは睨みだったが。
空けてもらっていたのかは分からないが、レノは一番後ろの席に座ることになった。
レノの左側には金髪美少女、前の席には黒髪の少年がそれぞれ座っていた。
右隣の席は空席。
「君の右隣の席はアシュレイさんがいつも座っているよ」
とご親切に金髪美少女が教えてくれた。
アシュレイの前の席にも空席があった。きっと休んでいるノエリアの席だろう。
レノはもう一度Fクラスの教室を見渡す。
学校が始まってまだ2か月。
ここまで険悪な雰囲気になるのだろうか。
一体このクラスに何があったのだろうか。
そして、レノはふと窓の外を見る。
しかし、空に雲があるかどうか確認できなかった。
★★★★★★★★
その日の放課後。
レノはFクラスの女子寮へ向かっていた。
もちろん、アシュレイに会うためである。
寮長に許可を貰えれば、男子でも女子寮に入ってもいいことになっているらしい。優しいことだ。
レノは女子寮の寮母に案内してもらい、アシュレイの部屋に向かう。
彼女は静かに外を眺めていた。
「アシュレイ、俺だけど…………」
レノが話しかけても、反応なし。アシュレイは背中を向けたまま、外を眺めていた。
侍女の方に目線を送っても、侍女は肩をすくめるだけ。
アシュレイはどうやらずっとこんな調子のようだ。
しかし、レノがアシュレイの方に近づいた瞬間。
「え」
アシュレイがレノに向かって走り、そして、彼の胸に飛び込んだ。
ぎゅっとハグをするアシュレイ。
どうしたものかと悩むレノは、彼女の頭をそっと撫でる。
「レノ、レノ…………」
その声は震えていて、彼女の瞳からは涙でいっぱいになっていた。
アシュレイの体はずっとずっと震えていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです
忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる