【R18】没落令嬢の秘密の花園――秘書官エルスペス・アシュバートンの特別業務

無憂

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第三章

初夜*

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 王宮から、王都のアパートメントに戻った時には、すでに夜半を過ぎていた。――ものすごく、眠い。

 アルバート殿下は王宮に自室もあるけれど、わたしを王宮内の王族専用エリアに泊めようと思うと、すごく大変な手続きが必要らしい。かといって、一般貴族用の宿泊スペースは、予約でいっぱいだ。それくらいなら、慣れた部屋でぐっすり眠りたい。

 だからもともと、その夜はアパートメントに戻るつもりで、ジュリアンとハンナがユールを連れて、先に待機してくれていた。

「お帰りなさいまし」

 専用のエレベータを降りれば、すぐにジュリアンが迎えに出る。……ユールはもう、眠ったらしい。

「さすがに疲れた。風呂にはすぐに入れるか?」
「ええ、もちろん。ハンナがスタンバっていますよ」

 殿下のトップハットとステッキを受け取り、ジュリアンが言う。わたしがまっすぐ自分の部屋に向かえば、待っていたかのようにハンナが出迎えてくれた。

「お帰りなさいませ」

 以前、このアパートメントのメイドは通いのノーラだけだったので、夜遅く帰るとメイドはいなかった。毛皮のついたケープを脱いで、ホッと息をつく。

「……疲れたわ」

 と、ガチャリとコネクティング・ドアが開き、上着を脱いだ殿下が部屋に入ってきた。

「リジー」
「せっかくのデビュタントのドレスを、脱いでしまうともったいないと思って」
「もう、散々、見たでしょう?」

 殿下はわたしの姿を上から下まで舐めるように見、後ろを向かせたりして、言う。

「いいや、見足りない。ステファニーのデビューの時は、特に興味もないのにずっと、横に張り付いていなくちゃならなくって、ウザくてたまらなかった。十分にいっぺんは、『もっとああした方がよかった』とか言い出して、『いやそれで十分だ』って言わなきゃなんなくて、閉口したのを憶えている」
「……たぶん、『すごく綺麗だ、女神みたいだ』って言って欲しかったのよ」
「意地でも言わなかったからな」

 そう言って、殿下はわたしの額に口づける。

「すごく綺麗だった、エルシー。お前が一番美人だった。謁見の間で見かけて、あんまり美人で、閣僚のジジイどももニヤニヤしているし、父上はあからさまに態度違うし、気が気じゃなかった。誰にも見せずに閉じ込めたかった」
「それであんなことなさったの。びっくりしましたわ」

 やり取りを聞いていたハンナが、躊躇いがちに声をかける。

「どうされます? もう遅いですし、そろそろヘッドドレスを外したいのですが……」
「ああ、わかってる。……じゃあ、そろそろ」

 殿下は名残惜しそうに、わたしの姿をもう一度上から下まで見て、言った。

「俺は先に風呂に入ってるから、後から来い」

 そう言って去っていく殿下を見送り、ハンナがやれやれと言う風に頭のヴェールと鳥の羽、ヘッドドレスを外しにかかる。

「ホント、殿下ってお嬢様に夢中ですよね。大きな犬みたい」
「……まあ、ランデルの狂犬って渾名だしね」

 ひっつめていた髪を解き、わたしは解放感でホッとする。

「ドレスも脱がせますね」
「ええ、お願い。……これ、今日の一回しか着ないなんて、勿体ないわよね」
「でも真っ白のはなかなか……最近は婚礼衣装を白にするのが流行のようですが、使いまわしってバレるのもまずいですよね」

 ハンナの発言で、わたしは思い出す。

「そうそう! 殿下ったら、ビルツホルンで、勝手に婚姻届けを出していたそうなの!」

 背後に回り、背中のボタンを外していたハンナが息を呑んだ。

「ええ? 本当ですか?!」
「ええ、一応、国王陛下は仕方ない、って感じで許可を出したけど、首相がカンカン! 議会に召喚されちゃったわ」

 なんだかもう、何がなんだかわからないし。王宮舞踏会で婚約破棄はするし、勝手に結婚はしているし、もう無茶苦茶だ。

「……やっぱり、慰謝料とか、取られるのかしら……」
「わたしは法律的なことはちょっと……」

 わたしが鏡台の上にサファイアの指輪を外し、白い長手袋を脱ぎながら言えば、ハンナが不安そうに鏡越しに言った。スリップの上から薄紫色のキモノ・ガウンを羽織ると、浴室の扉が開いて、殿下が声をかける。

「エルシー、早く来い」
 
 わたしは肩を竦め、ハンナに言う。

「ごめんなさい、呼んでるわ」
「ええ、ドレスは片付けておきますから」

 ハンナが微笑んだ。






 浴室で待っていた殿下に捕まえられ、泡だらけのバスタブに入れられて、髪と身体を洗われる。

「……今日は疲れているから……」
「明日は一日休みだ。それに……初夜だろう?」

 わたしは思わず殿下の顔をしげしげと見た。

「そう、そのお話。聞かなきゃって。やっぱりもう、婚姻届けは出ているってことですの? わたし、知らない間にもう、人妻でしたの?」
「それについても、洗いながら説明するから」

 殿下はそう言うと、わたしの身体に石鹸の泡を塗り付けた。

「……俺が一番恐れたのは、勝手にステファニーとの婚姻が成立させられることだ。さすがにそこまではしないと思っていたけれど、婚約の承認決議もされちまったしな。俺のサインが必要なはずだが、どんな手を使ってくるか、わからない」

 殿下はわたしの白い胸に石鹸の泡をなすりつけ、膨らみをたぷたぷと揺らす。

「ねえ、普通に洗って……」
「この柔らかおっぱいを素通りしたら男が廃るだろ。……婚約披露の晩餐会なんかに行ったら、無理矢理サインを強制されるかもと思い、それはぶっちしたし、ビルツホルンに行って留守にすれば、物理的にサインはできないから大丈夫なはずだが、気が気じゃなかった」

 そう言いながら、殿下は白い泡の間から覗く、わたしの胸の頂点をきゅっと摘んだ。

「んんっ……もう、ダメって……」
「列車の中でいろいろ考えて……大聖堂で懺悔するって話になった時に、思いついたんだ。どうせなら結婚を誓うサインをもらっておけばって。それで、大使館でいろいろ聞いたら、どうやら、大使館でも婚姻届けが出せるとわかった。大使館で仮受理し、本国に転送して正式に受理されると。それだ、と思って……」

 やわやわと怪しい手つきで胸からお腹を撫でられ、わたしはつい、息が荒くなる。

「だからって、相談もなく……はっ……ああんっ……」

 身体がぐずぐずと疼いて、つい、喉をさらして喘いでしまう。殿下はその、喉に食らいつくように唇を這わせて、べろりと舐めた。

「あと、子供ができたらって、お前が気にしていたから……」

 殿下は言うと、わたしをじっと見つめた。

「お前をローズの二の舞にはしたくなかった。秘密結婚でもなんでもいいから、とにかく届を出してしまおうと思って。ちょうど、世間知らずっぽい、押しに弱そうな若い司祭がいたし、フェルディナンドもいたから、これ幸いとサインをもらっておいたんだ。……言ったら、お前は反対するだろう?」

 そりゃあ、そうだ。わたしが頷く前に、殿下がわたしの胸の尖りをキュッと摘んで押し潰し、グリグリと苛めてくるので、わたしは快感に身体を捩る。

「あああっ……それ、だめぇっ……ちゃんと、洗って!」 
「ああ、わかってる。下も洗わないとな」

 殿下がわたしの脚を広げる。恥毛は昨日剃られたばかりなので、今はまだつるつるのそこに石鹸を塗りつけられる。花弁に殿下の手が優しく触れて、くちゅりと水音がするのが恥ずかしくて、わたしが思わず顔を逸らせば、殿下が喉の奥で笑ったらしい。

「ほんと、敏感になったな、最近はすぐに濡れる」
「……やめてください! そういうこと言うの」

 わたしが上目遣いに睨みつけると、殿下がくすっと笑って、それから脚全体に石鹸を塗り付ける。足の指の間まで丹念に洗ってから、長い腕を伸ばしてシャワーヘッドを掴み、蛇口を回す。ちゃんと温度を確認してから、それをわたしの身体に向け、泡を流していく。シャーと細かい水音とともに、白い泡がわたしの身体から流れ出していくのを、金色の瞳でじっと見送っていた殿下が、急にわたしの顔を見て、ニヤっと笑う。……すごい悪そうな、絶対によからぬことを思いついたと言う表情に、わたしが身体を強張らせる。

「……な、なに?」
「いや、ちゃんと、隅々まで、泡を落とさないとなーと思って」

 殿下はそう言うやいなや、わたしの片方の太ももを掴み、ぐいっと両足を広げると、熱いお湯のシャワーをわたしの秘所に当てた。

「やっ……ああああっ何をっ……ああっ……」


 敏感な場所に飛沫を当てられて、わたしが思わず腰を捩る。強烈な快感に一気に上り詰めそうになり、わたしは逃れようとするが、殿下が腰を抱くようにして動きを封じてしまい、わたしはなすすべもなく、身体をくねらせてイった。

「ああっ……ああ―――――――――っ」
「すごいな、もうイくのか、エルシー」

 からかうように言われているのに、気持ちよすぎて絶頂を止めることができない。びく、びくと身体を震わせていると、息も絶え絶えになったところで、ようやく水音が止んで、わたしはがくりと白い陶器のバスタブに身を預ける。

「色っぽ過ぎだ、エルシー」

 殿下がシャワーヘッドを戻して、わたしを抱き起し、キスをする。

「んん……」

 彼の肩に縋りつけば、膝の裏を掬われるようにして、抱き上げられる。

「今日は眠かったのに……」
「でも、今夜はしたい。お前はもう俺の妻だって、宣言した夜だから」

 殿下はわたしの身体を湯上りで包み、浴室を出て寝室に向かった。

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