【R18】渾沌の七竅

無憂

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七竅

23、チャーンバー家の姉妹*

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 蝋燭の淡い光が灯る薄暗く湿った地下室に、男たちは囚われていた。
 いずれも身体の自由を奪われ、両手首を縄で縛られ、壁に打ち込まれた杭に繋がれている。衣服も剥ぎ取られて鍛え上げた肉体を晒し、力なく項垂れている。もはや六人のうちの二人はピクリとも動かず、残る四人も衰弱して荒い呼吸を繰り返し、苦し気に呻くのみだ。
 
 ただ一人、やや年かさの騎士だけが、ぐったりとしながらも凛とした気力を維持し、背中を石壁に凭せ掛けて薄目を開け、周囲の状況を理解しようとしていた。――それは、自らが確実に死につつあるという絶望的な現実を知るだけだが、それでも男はその事実をしっかりと見極めようとしていた。

 先ほどまで、彼らは散々に嬲られ、辱められ、媚薬によって幾度も強制的に昂らされて責め苛まれ、その魔力のある精を吐き出すことを余儀なくされた。これがはや三日。魔力を吸いつくされれば、命は尽きる。魔力の弱い二人の聖騎士は、おそらくすでにこと切れているだろう。残りの者たちの生命も、風前の灯火だ。

 年かさの騎士――ゼクトは名門ソアレス家の生まれだけに魔力は強い。それ故にまだ気力を保っているが、それもいつまで保つだろうか。魔力不足による頭痛と倦怠感、そして肉体の疲労は極限まで達している。

(殿下――)
 
 彼らの主は別室に囚われていて、様子を伺い知ることができない。

(殿下の魔力は我らの比でない。ちょっとやそっとのことでは死んだりはなさらないが――)

 厲蠻レイバンの女たちによる責め苦はしかし、常軌を逸して激しいものであった。ゼクトは尊厳も貴種としての誇りも、全て砕かれ、奪われて命の瀬戸際にいる今、ただ、ずっと仕え、慈しんできた皇子の無事だけを願っていた。

 ふっと人の気配がして薄眼を開けると、自身の暗部がそこにいた。

「ゼクト様――今、脱出を」

 ゼクトは微かに首を振った。

「無駄だ――もう、助からぬ。それより――殿下を――」
「殿下には監視がきつくて近寄れません。せめてあなた様だけでも――」
「――ここまで吸われたら、穴の開いた袋と同じ。どれだけ〈補給〉しても、魔力は戻らない。――成郡王殿下がそうであった」

 三年前、北の魔物に凌辱され魔力を吸われ尽くして死んだ皇子を思い出す。弟の恭親王が禁じ手ではあるが、肉体を繋いで魔力を〈補給〉したが、無駄であった。治療して苦しみを長引かせるよりも、ひと思いに吸い尽くされて死んだ方がマシだった。

「殿下を――お救いしろ――命にかえても――」
「ゼクト様――」

 暗部の者は悔しさに唇を噛んだようであった。ゼクトは、目を閉じた。眠れば、少しは回復する。今は、ただ主の無事を祈るのみ――。




 廉郡王は別室にやはり繋がれていた。
 その両脚の間に女が蹲り、昂り漲った彼の陽根に舌を這わせ、口に含んで吸い上げ、敏感な筋を舐め上げて甚振っていた。

「くっ……うっああ……」

 彼の鍛えて硬い両胸の、小さな飾りには別の二人の女がそれぞれ取りつき、チロチロと赤い舌で舐めている。普段は特に何も感じないその場所だが、強い媚薬を飲まされて全身が敏感になった彼には、堪らない刺激となって責め苛む。

「くそっ……厲蠻の女ってのは痴女ばかりなのかよっ! 男を甚振る以外に、することはねーのかよっ!」

 快感に抗うために憎まれ口を叩く廉郡王に、彼の肉茎をしゃぶっていた女が顔を上げて妖艶に嗤った。黄緑色の瞳が蝋燭の光を反射して煌めいた。

「これだけ強い〈王気〉を持つ男なんて滅多にいない。お前をしゃぶり尽くして力を増す、これ以上に必要なことが今、あろうか?」
「……他の、奴等は、……うあっ!」

 ぐっと肉茎を強く握りこまれ、廉郡王は思わず快感に声を上げてしまう。

「他の男のことなど考えている場合か? ほら、お前はここが弱かったな? ほらほら、さらに固くなってきたぞ?」
「うううっ……やめっ……つっ……くううう……」
 「貴種の精にも魔力は含まれておる故、もちろん吸うたが……そろそろ限界のようでな。その点、お前はけた外れの魔力に溢れていて味も最高。さあ、ほら、そろそろ出るのではないか?」
「くそっ……だれがっ……ああっ……あああっ……くっ……」

 激しく扱かれて廉郡王は奥歯を噛みしめ、首を仰け反らして快楽に耐える。頭上で縛られた両腕にぐぐっと力を入れれば、縄が軋んで手首が擦れ、血が滲んだ。

「ぐ……あああっああっ」

 女が昂った先端を口に含み、強く吸い上げると、廉郡王の全身を激しい快感が走り抜ける。

「うあっ……やめっ……あああああっ」

 襲い来る快感に抗えず、廉郡王は逞しい喉ぼとけを晒して全身を張りつめるようにして絶頂に達し、精を吐き出す。女はそれを残らず吸い上げて喉を鳴らして美味そうに飲み干した。最後の一滴までずるると吸われる感覚に、廉郡王の目の奥が白くチカチカした。

 大量に吐精して、がっくりと項垂れて肩で荒い息をしている廉郡王を、女は追い打ちをかけるように嘲った。

「ふふふ、何度目か? 大きな図体で、女に嬲られて、いい気味じゃの」
「ばっ……このっ痴女が、ふざ、けんな……」

 それでも鋭い瞳で女を睨みつける気力だけは残っていて、廉郡王の端正な野性味のある顔は、壮絶な色気を放っていた。

「ラクシュミ姉さま」

 部屋の外から呼びかける声がして、女が振り向く。肉感的な身体に更紗を巻き付けた女が入ってきて、言った。この娘の瞳もまた、黄緑色だった。

「どうした、ヴィサンティ」
「ラジーブが、さっきから用があると言って待っているわ。……それに、そろそろわたしにも交代してよ。姉さまばっかり、ずるいわ」
「そうか。すまなんだ」

 女は立ち上がると、ちらりと廉郡王を見てから踵を返し、部屋を出ていく。周囲にいた女たちが二人を見て指示を待つのを、ヴィサンティが言った。

「あとはわたし一人で大丈夫。皆、上に戻って」
 
 女たちが皆、ラクシュミと呼ばれた女について地下牢から去っていくのを確かめてから、ヴィサンティは廉郡王に近づく。

「ほら、お水」
 
 ヴィサンティは廉郡王の横に跪くと、持って来た水の入った瓶を差し出した。

「……なんだよそれ、また、媚薬入りじゃねぇだろうな?」

 ぎろりと黒い瞳で睨みつける廉郡王に、ヴィサンティは肩を竦める。

「違うわよ、わたしも飲むから。それなら信じるでしょ?」
 
 ヴィサンティは瓶から一口飲んでみせ、もう一口、口に含むと廉郡王の頬に左手を添えて唇を合わせ、水を流し込む。ごくり、と嚥下した廉具王が毒吐く。

「ふざけんな、もっと寄こせ、この性悪が!」
「ほんと、口が悪いわね、皇子のくせに」

 そう、嘯きながらも、ヴィサンティは何度も、廉郡王に口移しで水を飲ませてやる。

「……何しにきたんだよ、この、性悪の嘘つき女が!」
「……ほんっと、減らず口がやまないわね、この下品皇子! 前に見かけたあんたに顔だけはよく似た皇子は、もっと上品そうだったのに!」
「うるせぇ! 俺と違ってあいつはお利口さんだから、おめぇらの罠にはかからねーんだよ!」

 一しきりやり合ってから、ふうっとヴィサンティが溜息をついた。

「あんたこのままだと、姉さまに吸いつくされて、殺されちゃうわよ?……さっき見て来たけど、あっちの部屋の男のうち、二人は死んでたわ。残りの四人もたぶん数日のうちに……」
「おめぇがくだらねぇ罠なんか張るからだろ。救けにきた男たちを食い殺して、魔物ってのは因果な生きモノだな」

 いかにも嘲るように廉郡王が言うと、ヴィサンティが赤い唇を歪めた。

「……好きで魔物を身の内に飼っているわけじゃないわ。三年前の洪水の後、あの豚刺史は被害を受けた地域にロクな救援も行わず、厲蠻の民は絶望して蛇神ヴリトラに縋った。民の恨みが嵩み、陰陽の調和が乱れて蛇神が甦った。それを鎮めるために姉さまがその身を差し出したのよ! それなのに、あの豚刺史は堤防の修理費まで懐に入れて手抜き工事なんかするから、また堤防が破れて……もう一匹、魔物が甦ってしまった。チャーンバー家の人間はもう、わたしたち姉妹だけなのよ。わたしたち姉妹が魔物を飼っておかなかったら、今頃この辺りの人間を食い散らかして、どんどん増えていってしまう」

 廉郡王は精悍な眉を顰めてヴィサンティを見る。

「だからって、聖騎士の魔力を喰らっていい理屈にはならねぇだろう。女の、それもこのあたりの旧王家の娘が、男のイチモツ咥えて精液飲み干して、みっともねぇったらねーな!」
「うるさい! 魔蛇族……蛇神の末裔のわたしたちしか、魔物を飼えないんだから、しょうがないでしょ!」

 ヴィサンティが悔しそうに廉郡王に叫んだ。

「このまま、どうするつもりなんだよ。男の精液啜って生き続けるつもりか? 何とかならねぇのかよ」

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