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8.神秘の薬
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クレーメンス伯別荘へとやって来た医者は、正に驚きの連続を体験する事になった。
「こ……これは、驚きです!」
まず医者は、目覚めたサリシュの診察を行った。そしてそれを終えた彼は、驚きと興奮を隠そうとはしなかった。
そりゃあ、そうだろう?
数日前に、手の打ち様が無いと判断した患者が目を覚ましているんだ。
これには医者の矜持が失墜したという話では無く、純粋に医術を学ぶ者として感動しているみたいだった。
「い……一体、何をどうすれば彼女が目を覚ますというのですか!?」
そしてその原因が俺の与えた「魔力の調剤」だったと知って、彼は俺に詰め寄って来ていた。
いやぁ、女性に言い寄られるのは悪い気もしないんだが、男に詰め寄られても全く嬉しくはない。
「す……すみませんが、それは俺の一族の秘密でして……」
だから俺は、そう返答して言葉を濁しておいたんだ。
俺がこの「調剤」の薬箋を教わった時に、実は約束した事がある。それは、決してこの事を口外しないというものだった。
……まぁ、それはこれから「10年後の話」になる訳なんだけどな。
それでも、この製法はその郷の秘密と言う事だった。
そうする事には意味がある訳で、約束したからには可能な限り秘密にしておくのが筋だろうな。……例え世界が変わっちまったとしても。
「そ……そうですか。それは……残念です」
俺の返答に、医者は随分と項垂れて残念がっていた……んだが。
「ですが、医術の可能性を知りました。私めも、ここで満足せずに精進しましょう」
どうやら、彼に新たな向上心の火を点けたみたいだ。
何事も、あっさりと得てしまっては有り難味が無い。自分で努力し苦労して得た方が、何倍も達成感はあるだろう。彼はその事を良く分かっている様だった。
「サリシュさんには、もう体に異常は伺えません。ただし、これまで長い間寝ており栄養も不足しているみたいですので、体力が幾分衰えています。数日は体力の回復を図り、無理をせずに過ごさせて下さい」
サリシュの診断の最後に、彼はそう付け加えて次の患者の元へと向かったんだ。
次の患者はと言うと、言うまでも無くそれはエリンだった。
先日彼女を診たのも、この医者だったそうだ。ならば、その時との違いはすぐに分かるだろう。
「こ……これは、驚きです!」
サリシュの時と同じ様に、そして同じ台詞でこの医者は再び一驚していた。
勿論、エリンが目覚めているという事は無く、未だ寝たきりなのは変わらない。それでも彼は、間違いなく起こったエリンの身体の変化に驚嘆していたんだ。
「お……お医者様ぁ。そ……それではぁ!?」
驚きを隠しきれていない医者に深刻な感情は伺えず、ただ只管に吃驚している事だけが伺えた。そこからシャルルーは、吉兆を感じ取ったみたいだ。
「あ……いや。お嬢様、これは失礼いたしました」
余りにも場を弁えずに仰天していた事に気付いたんだろう、医者は咳払いを一つして落ち着きシャルルーに謝罪した。
如何に寛容とは言え、彼女も大家の令嬢なんだ。診察中に取り乱す様な真似を、シャルルーの前でして良い筈はない。
「こ……これももしや、あなたの〝秘薬〟の効果で……?」
落ち着き払って見せて、医者は俺に目を向けて問い質して来た。それに俺は、頷いて答える。
まぁ、その処方箋は秘中の秘で教える気は無いんだけどな。
「……くぅ。何と言う、医術の奥深さでしょう」
それでもその診断結果に、この医者はまたまた感動しているみたいだった。
「良いですか、お嬢様。エリン殿のお身体は、先日伺った時からは考えられない程に好転しております。具体的には、以前はただ緩やかに死を迎えようとしていたのに対して、今は急速に元気を取り戻そうとしております」
声を弾ませて説明する医者の言葉を聞いて、シャルルーの眼がみるみる輝きだしていた。それは、この場にいる者全員がそうだった。
特に、セリルの表情の変化は非常に分かりやすかったな。
「……ですが」
ただし、医者の話はそんな「良い話」だけでは終わらなかったんだ。
「……残念ながら、彼女がいつ目を覚ますのかは、流石に分かり兼ねます。それだけ、彼女の心身は非常に疲弊しているのです。……そして、問題がもう一つ」
医者の語った内容は、俺の想像通りだった。そして恐らくは、シャルルー達も同様だっただろう。
それでもその話自体には、彼女達の悦喜を消沈させる効力は無かったんだが。
何せ、エリンが快方に向かっていると医者のお墨付きを貰ったんだ。それなら、時間が経てば彼女が快癒する事は疑いない事実なんだからな。
でも本当に問題なのは、この医者が言い淀んだもう1つの話にある。
「……問題が……もう1つ?」
喜色ばむ一同の中で、俺の次に冷静だったバーバラがその疑問を口にした。
彼女がその部分を言うと、どうにも深刻に聞こえるんだから不思議だ。まぁ確かに、こっちの方が切実な訳だが。
「はい……。確かに、エリン殿は快方に向かっております。ですが、目を覚ますのがいつなのかは……分かりません。辛うじて分かるのは、サリシュ殿の時の様に短い期間ではなく……数か月、数年と言った長さだと言う事でしょう」
「すう……かげつぅ……?」
医者の口調は静かで落ち着いていたにも関わらず、その台詞はそれまでの陽気を吹き飛ばすだけの威力を持っていた。そしてその言葉には、誰一人として反応出来なかった。
それもそうだろう。
人は、寝ていれば飲食をせずとも生きて行けるという程に便利な体はしていない。寝ている間も栄養は必要だし、色々と多くの世話が必要となるんだ。
とりわけ問題なのは、眠っている彼女にどうやって栄養を与えて延命させるかという事だろう。
1カ月程度ならば、ポーションを与えるだけで生き長らえさせる事が出来る。ポーションにはそれだけの栄養があり、また即効性が期待出来るからな。
眠り続けているエリンは自発的に飲食が出来ないけど、液体を僅かずつ口に含ませる事は出来る。そしてポーションならば、今のエリンに与え続ける事が可能だ。
でも人間の身体は、そんな偏った栄養だけで満足する様には出来ていない。
穀物だけ与えても、肉だけを食してもいずれは弱ってしまう様に、ある程度調和の取れた食事が必須となるんだ。
そして残念ながら、この大陸には眠れる人を数か月、数年と生き長らえさせる様な医術は……ない。
「そ……そんな」
喜びから落胆へ。
マリーシェは絶句し、項垂れてしまった。それはカミーラやバーバラ、セリルも同様だった。
ただ1人、シャルルーだけは顔を下には向けていない。
いや……あまりのショックに硬直し、目は焦点を失い、硬直して固まっていたと言って良いだろう。
笑みを浮かべたままで呆然とする彼女は、まるで良く出来た蝋人形みたいだ。
このままじゃあ、またまたこの場は悲哀に満ちた空気で充満しちまう。そして俺には、そんな景色を眺めて喜ぶ様な趣味はない。
「……その事に付いて、俺に考えがあるんだが」
しん……と静まり返っていたこの部屋に、俺の声はやたらと響き渡った。
そして、全員が勢いよく俺の方へと目を向けたんだ!
その食い入る様な視線は、なんだか取って食われちまいそうで……怖いぞ。
「ア……アレクゥッ! それはぁ、本当なのぉっ!?」
しがみ付く様にして、シャルルーは俺の方へにじり寄って来た。
もはや何かに憑りつかれたんじゃあないかとさえ思える彼女の表情に、流石の俺も恐怖を感じない訳が無かった。
「あ……あくまでも考えだよ。とにかく、その為には色々と相談すべき事があるんだがそれには……」
出来るだけ優しくシャルルーを引き剥がして、俺は言葉の最後に医者の方を向いた。彼はこの場に合っては流石に冷静で、俺の視線を確りと真顔で受け止めている。
「それには、エリンを『ジャスティアの街』にあるクレーメンス邸へ運ばなきゃならない。そして、今のエリンにその旅に耐えるだけの余力は残されているのでしょうか?」
何にしても、まずはシャルルーも含めて俺たちは「ジャスティアの街」に戻る必要がある。
シャルルーの生活も日常に戻す必要があるし、俺たちもこのままここで留まり続けるという訳には行かない。ここは保養地であり、長く暮らすには色々と適さない事の方が多いんだ。……特に物価とかな。
暫く考え込んだ医者だったがゆっくりと顔を上げ、そして。
「……結論から申しますと」
その結果を、俺たちへ静かに告げたんだ。
「こ……これは、驚きです!」
まず医者は、目覚めたサリシュの診察を行った。そしてそれを終えた彼は、驚きと興奮を隠そうとはしなかった。
そりゃあ、そうだろう?
数日前に、手の打ち様が無いと判断した患者が目を覚ましているんだ。
これには医者の矜持が失墜したという話では無く、純粋に医術を学ぶ者として感動しているみたいだった。
「い……一体、何をどうすれば彼女が目を覚ますというのですか!?」
そしてその原因が俺の与えた「魔力の調剤」だったと知って、彼は俺に詰め寄って来ていた。
いやぁ、女性に言い寄られるのは悪い気もしないんだが、男に詰め寄られても全く嬉しくはない。
「す……すみませんが、それは俺の一族の秘密でして……」
だから俺は、そう返答して言葉を濁しておいたんだ。
俺がこの「調剤」の薬箋を教わった時に、実は約束した事がある。それは、決してこの事を口外しないというものだった。
……まぁ、それはこれから「10年後の話」になる訳なんだけどな。
それでも、この製法はその郷の秘密と言う事だった。
そうする事には意味がある訳で、約束したからには可能な限り秘密にしておくのが筋だろうな。……例え世界が変わっちまったとしても。
「そ……そうですか。それは……残念です」
俺の返答に、医者は随分と項垂れて残念がっていた……んだが。
「ですが、医術の可能性を知りました。私めも、ここで満足せずに精進しましょう」
どうやら、彼に新たな向上心の火を点けたみたいだ。
何事も、あっさりと得てしまっては有り難味が無い。自分で努力し苦労して得た方が、何倍も達成感はあるだろう。彼はその事を良く分かっている様だった。
「サリシュさんには、もう体に異常は伺えません。ただし、これまで長い間寝ており栄養も不足しているみたいですので、体力が幾分衰えています。数日は体力の回復を図り、無理をせずに過ごさせて下さい」
サリシュの診断の最後に、彼はそう付け加えて次の患者の元へと向かったんだ。
次の患者はと言うと、言うまでも無くそれはエリンだった。
先日彼女を診たのも、この医者だったそうだ。ならば、その時との違いはすぐに分かるだろう。
「こ……これは、驚きです!」
サリシュの時と同じ様に、そして同じ台詞でこの医者は再び一驚していた。
勿論、エリンが目覚めているという事は無く、未だ寝たきりなのは変わらない。それでも彼は、間違いなく起こったエリンの身体の変化に驚嘆していたんだ。
「お……お医者様ぁ。そ……それではぁ!?」
驚きを隠しきれていない医者に深刻な感情は伺えず、ただ只管に吃驚している事だけが伺えた。そこからシャルルーは、吉兆を感じ取ったみたいだ。
「あ……いや。お嬢様、これは失礼いたしました」
余りにも場を弁えずに仰天していた事に気付いたんだろう、医者は咳払いを一つして落ち着きシャルルーに謝罪した。
如何に寛容とは言え、彼女も大家の令嬢なんだ。診察中に取り乱す様な真似を、シャルルーの前でして良い筈はない。
「こ……これももしや、あなたの〝秘薬〟の効果で……?」
落ち着き払って見せて、医者は俺に目を向けて問い質して来た。それに俺は、頷いて答える。
まぁ、その処方箋は秘中の秘で教える気は無いんだけどな。
「……くぅ。何と言う、医術の奥深さでしょう」
それでもその診断結果に、この医者はまたまた感動しているみたいだった。
「良いですか、お嬢様。エリン殿のお身体は、先日伺った時からは考えられない程に好転しております。具体的には、以前はただ緩やかに死を迎えようとしていたのに対して、今は急速に元気を取り戻そうとしております」
声を弾ませて説明する医者の言葉を聞いて、シャルルーの眼がみるみる輝きだしていた。それは、この場にいる者全員がそうだった。
特に、セリルの表情の変化は非常に分かりやすかったな。
「……ですが」
ただし、医者の話はそんな「良い話」だけでは終わらなかったんだ。
「……残念ながら、彼女がいつ目を覚ますのかは、流石に分かり兼ねます。それだけ、彼女の心身は非常に疲弊しているのです。……そして、問題がもう一つ」
医者の語った内容は、俺の想像通りだった。そして恐らくは、シャルルー達も同様だっただろう。
それでもその話自体には、彼女達の悦喜を消沈させる効力は無かったんだが。
何せ、エリンが快方に向かっていると医者のお墨付きを貰ったんだ。それなら、時間が経てば彼女が快癒する事は疑いない事実なんだからな。
でも本当に問題なのは、この医者が言い淀んだもう1つの話にある。
「……問題が……もう1つ?」
喜色ばむ一同の中で、俺の次に冷静だったバーバラがその疑問を口にした。
彼女がその部分を言うと、どうにも深刻に聞こえるんだから不思議だ。まぁ確かに、こっちの方が切実な訳だが。
「はい……。確かに、エリン殿は快方に向かっております。ですが、目を覚ますのがいつなのかは……分かりません。辛うじて分かるのは、サリシュ殿の時の様に短い期間ではなく……数か月、数年と言った長さだと言う事でしょう」
「すう……かげつぅ……?」
医者の口調は静かで落ち着いていたにも関わらず、その台詞はそれまでの陽気を吹き飛ばすだけの威力を持っていた。そしてその言葉には、誰一人として反応出来なかった。
それもそうだろう。
人は、寝ていれば飲食をせずとも生きて行けるという程に便利な体はしていない。寝ている間も栄養は必要だし、色々と多くの世話が必要となるんだ。
とりわけ問題なのは、眠っている彼女にどうやって栄養を与えて延命させるかという事だろう。
1カ月程度ならば、ポーションを与えるだけで生き長らえさせる事が出来る。ポーションにはそれだけの栄養があり、また即効性が期待出来るからな。
眠り続けているエリンは自発的に飲食が出来ないけど、液体を僅かずつ口に含ませる事は出来る。そしてポーションならば、今のエリンに与え続ける事が可能だ。
でも人間の身体は、そんな偏った栄養だけで満足する様には出来ていない。
穀物だけ与えても、肉だけを食してもいずれは弱ってしまう様に、ある程度調和の取れた食事が必須となるんだ。
そして残念ながら、この大陸には眠れる人を数か月、数年と生き長らえさせる様な医術は……ない。
「そ……そんな」
喜びから落胆へ。
マリーシェは絶句し、項垂れてしまった。それはカミーラやバーバラ、セリルも同様だった。
ただ1人、シャルルーだけは顔を下には向けていない。
いや……あまりのショックに硬直し、目は焦点を失い、硬直して固まっていたと言って良いだろう。
笑みを浮かべたままで呆然とする彼女は、まるで良く出来た蝋人形みたいだ。
このままじゃあ、またまたこの場は悲哀に満ちた空気で充満しちまう。そして俺には、そんな景色を眺めて喜ぶ様な趣味はない。
「……その事に付いて、俺に考えがあるんだが」
しん……と静まり返っていたこの部屋に、俺の声はやたらと響き渡った。
そして、全員が勢いよく俺の方へと目を向けたんだ!
その食い入る様な視線は、なんだか取って食われちまいそうで……怖いぞ。
「ア……アレクゥッ! それはぁ、本当なのぉっ!?」
しがみ付く様にして、シャルルーは俺の方へにじり寄って来た。
もはや何かに憑りつかれたんじゃあないかとさえ思える彼女の表情に、流石の俺も恐怖を感じない訳が無かった。
「あ……あくまでも考えだよ。とにかく、その為には色々と相談すべき事があるんだがそれには……」
出来るだけ優しくシャルルーを引き剥がして、俺は言葉の最後に医者の方を向いた。彼はこの場に合っては流石に冷静で、俺の視線を確りと真顔で受け止めている。
「それには、エリンを『ジャスティアの街』にあるクレーメンス邸へ運ばなきゃならない。そして、今のエリンにその旅に耐えるだけの余力は残されているのでしょうか?」
何にしても、まずはシャルルーも含めて俺たちは「ジャスティアの街」に戻る必要がある。
シャルルーの生活も日常に戻す必要があるし、俺たちもこのままここで留まり続けるという訳には行かない。ここは保養地であり、長く暮らすには色々と適さない事の方が多いんだ。……特に物価とかな。
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