冷血青年

海月大和

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エピローグ

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 明くる日の朝、6人の教会の狩人(ハンター)たちがケネス・オルブルームの元居城に辿り着き、悪しきヴァンパイアを討伐せんと突入した。しかし、屋敷の中はもぬけの殻。彼らは既に対象が逃走したと考え屋敷内とその周辺の捜索を開始した。

「隊長! 少しいいですか? ちょっと見てもらいたいものが」

 白い衣の上に外套を羽織った若い狩人が年長の狩人に呼びかける。

「分かった。今行く」

 屋敷前で部下の報告を待っていた隊長格の男が、別の狩人からの報告を切り上げて頷いた。

 馬に乗って案内された場所は村のはずれにある開けた場所で、そこには木の十字架を刺して作った墓と思わしきものが多数あった。その数、ざっと30弱。

「まだ新しいな。というより作ったばかりといったところか」

 墓に彫られた名前をなぞり、隊長格の男は呟いた。無人の村に作られたばかりの墓。今回の事件に関係しているとみて間違いないだろう。

「村の責任者の家に行って名簿を探してこい。生存者の情報が分かるかもしれん」
「ハッ!」

 若い狩人は歯切れの良い返事を返して馬に飛び乗った。そうして村長宅と思われる家から住人の名簿を持って帰ってきて、さっそく照合を行った。

「どうだ? なにか分かったか?」
「それが……」

 照らし合わせが終わった頃を見計らって声をかけた隊長に、若い狩人は困ったような顔で言う。

「いないんです」
「なに?」
「ここには住人全ての墓があります。村人の生存者はいない……と考えられます」
「なんだと?」

 隊長は軽く目を見開いた。それはおかしなことだ。墓がある以上、それを作った者がいなければならない。てっきり生き延びた村人の誰かだと思ったのだが。

「自分の墓を作った奴でもいたのか? いや、まさかな」

 それとも村人でない何者かが墓を建てたか。だとしたら、それは一体誰だ?

 隊長は村と屋敷を振り返り、遠くを見るように目を眇めた。



 同時刻、一本の街道を幌馬車が走っていた。御者の男は商品を別の街に売りに行くため、朝早くから自分の住む街から出てきていた。

 途中、道の真ん中で大きく手を振る男がいて、御者は仕方なく馬を止めることになった。

 男は年の頃20半ばといったところで、紺色のスラックスに白いシャツ、スラックスと同色のベストの上に外套を羽織っていた。

「兄ちゃん、道の真ん中にいたら危ないよ」
「やあ、すみません。馬の足音が聞こえたのでつい」

 淡い金髪の男は申し訳無さそうに眉尻を下げて謝った。御者の男はまあ、いいがね、と男の身なりを確かめる。物取りの類ではなさそうだが。

「申し訳ありませんが次の街まで乗せていってもらえませんか? 駄賃はきちんとお支払いしますので」

 そう言って男は胸元からちゃりちゃりと音を立てる小袋を取り出した。

「金はあるんだな?」
「はい」
「分かった。乗ってきな」
「ありがとうございます」

 いささか軽率かと思ったが、その分多めに運賃を取ってやろうと御者の男は企んだ。金を払わずに逃げようとしたらふん捕まえて憲兵にでも突き出してやろう。

「あんた、名前は?」

 名を聞かれた男は人好きのする笑みを浮かべて答える。

「リチャードといいます。どうぞよろしく」
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感想 2

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みんなの感想(2件)

crazy’s7@体調不良不定期更新中

続き

【物語の魅力】
この物語では前述したように、主人公が際立っている。周りの登場人物一人一人と対峙しているというよりは、何かを企んでいる村人たちという印象が強く、名前はあるものの主人公に焦点が合った物語だと感じた。タイトルでは想像できない何かが起きるのは間違いない。だが、何が起きるのか中々分からないところが魅力だと思う。気になってつい読む手が止まらなくなる、巧い書き方だと思われる。7話あたりから本格的に、オリジナル設定部分が明かされていく。無理のない設定なので、すんなりと納得がいく。しかし、物語はすんなりとはいかない。

【この物語の見どころ】
この物語には、転換期が数度あるように感じる。読者はきっとその時が訪れるまで気づかないだろう。そのくらい巧い書きかたがなされており、あっと驚くに違いない。多くを語るとネタバレになったしまうので、書くことは出来ないが、意外な展開となっていく物語だ。村の秘密がわかっても、その先の展開は予測不能であった。現在10話にて、この先どうなっていくかも、まだ分かっていない。匂わせ部分もあるので、どんな展開になっていくのか想像しながら読むのも面白いと思われる。

果たしてあなたの予想は当たってただろうか?
是非お手に取られてみてくださいね。お奨めです。

2021.05.02 海月大和

こちらにもありがとうございます。作品の魅力をがっつり語っていただけてとってもありがたいです!モチベーションが上がります!

解除
crazy’s7@体調不良不定期更新中

【物語は】
主人公がある馬車に乗ったことがターニングポイントのようである。この後、ある女性が知り合いに似ているという話から一転、馬車は盗賊に襲われ主人公の素性が明らかになってしまう。そこで、この物語の世界観も分かっていく。盗賊に襲われる場面は戦闘シーンが丁寧で分かりやすく、主人公の戦闘能力の強さを裏付ける大事なシーンでもある。素性がバレてしまったことが、運のつきなのかそれとも…。

【登場人物の魅力】
主人公はこの世界の中で、一目置かれるほどの特殊な職業の者ではある。しかし奢ることもなく、良心を持った人物だと感じる。というのも、この世界の中には用心棒として、金をせびる様な人もいるし、主人公と同じ立場であってのそういうことをする人がいるからである。彼はとても冷静で、余計な争いを好まないようにも感じる。賢い人という印象。この物語では、たくさんの登場人物が出ては来るが、馬車に同乗した人々や村の人たちという一括りとして考えることが出来る。つまり、主人公と主人公を巡る人々という感じがする。それは、主人公が際立つ物語という意味合いである。主人公が何を考えているのか分からないミステリアスな部分もあり、物語の先の読めない仕様となっている気がした。

全体的に登場人物が多い作品ではあるが、一括りとして考えると混乱はしない。

解除

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