追放された宮廷錬丹術士、山奥で仙人ライフ始めます 〜薬草を煎じてるだけなのに、王女や弟子が次々やってくる件〜

甘夏蜜柑

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裏切りの宮廷と、山奥の隠居

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 霊真れいしん王国の都、華清宮かせいきゅう
 夕日が宮廷の廊下を茜色に染め上げ、豪華絢爛な装飾、絹織物が風に揺れ、侍女たちの控えめな笑みが見え隠れする。
 だが、その美しさの裏側で、一人の男の運命が大きく揺れていた。

「シュウラン、お前の錬丹術は度を過ぎている。王命に反した罪を許すわけにはいかぬ」
 厳しい声が室内に響き渡る。
 その声の主は、王国の最高評議会の長官、ライジョウ。
 シュウランは深く頭を下げ、言葉を失った。

「なぜ……なぜ私がこんな目に遭わねばならないのですか」
 胸の奥が締めつけられ、悔しさで目に涙が滲む。
 彼ーシュウランーはかつて霊真王国で最も名高い錬丹術士だった。
 数々の秘薬を生み出し、王族や貴族の命を救い、王からの信頼も絶大だった。

 しかし、その信頼は一夜にして崩れ去った。
 裏切りの矢は弟子、ユエンシンから放たれた。
 彼はシュウランの研究を盗み、危険な秘薬を密かに王族に献上しようとしていたのだ。

「ユエンシン……あなたが……」
 シュウランは弟子の裏切りに言葉を失い、深い絶望に沈んだ。

 宮廷を追放されたシュウランは、何もかも失い、都の雑踏から逃げるように山奥へと足を進めた。
 険しい山道を幾日も歩き、霧に包まれた雲渓うんけい村へと辿り着く。

「ここなら、誰にも邪魔されずに静かに生きられる」
 疲れ果てた心に、小さな希望の火が灯る。

 彼は村のはずれにある古びた小屋を借り、隠居生活を始めた。
 しかし、かつての錬丹術士としての技術は捨てきれず、試行錯誤の末に始めたのは薬草を煎じる漢方茶カフェ、霧雲堂むうんどうだった。

「薬草の力で、人の心と体を癒せたら」
 シュウランは静かにそう決意し、日々薬草の研究と茶の調合に没頭する。

 村の人々は最初、都会から来たよそ者に警戒心を隠せなかった。
 しかし、シュウランが淹れる薬膳茶の香りと味に触れるたびに、彼らの態度は変わっていく。

「この茶は、胃に染み渡るようだ」
「体がぽかぽかして眠れたよ」

 そんな声が徐々に村のあちこちから聞こえ始めた。

 そんなある日、村長のホウリョウがシュウランの元を訪れた。
「シュウランさん、娘の体調が悪くてな。ぜひ助けてほしい」
 シュウランは自ら調合した漢方茶を差し出し、丁寧に説明する。
 数日後、村長の娘は食欲を取り戻し、村全体にシュウランの評判が広がった。

 だが、この平穏な暮らしも長くは続かない。
 王女や、かつての弟子たち、さらには王都からの使者までもが運渓村にやってくることになる。

「こんなはずじゃなかった」
 そんな追放から始まったのは、思いもよらないスローライフだった。
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