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【秋の幕間】山菜と月見と弟子の涙 〜スローライフ夜の宴〜
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秋の気配が深まりつつある雲渓村。
山々は黄金に染まり、空気は冴えわたり、夜には満月が澄んだ光を地上に降らせる季節だ。
「今日は中秋だし、ちょっと特別にしてみましょうよ」
そんな提案をしたのは、いつになく上機嫌なシャオケイだった。
カフェ「霧雲堂」の庭先に、竹の敷物と簡易の火鉢を用意し、料理と薬草茶を並べる。今宵は“月見の宴”――ささやかだが、心づくしの晩餐である。
「……山菜の天ぷらに、薬草団子、そして栗入りの粥。なかなかの献立ですね」
「へへっ、朝からがんばったんです。師匠、今日は料理もほめてくださいねっ!」
「火の通し方と香りの引き立て方、よく考えたな。合格だ」
「ほ、ほんとですかっ!? やった~~!」
シャオケイは満面の笑みを浮かべながら、湯気の立つ粥をすくって師匠の椀によそう。
栗の甘みと、陳皮と紫蘇の香りがふわりと立ち上り、食欲をそそる。
「うん、香りも味も秋らしくて、良いですね」
「よかった……。実は村の人たちにも少しずつ教えてもらって、こっそり練習してたんです」
「努力の味がしますよ」
そうして、二人は静かに夜の食卓を囲んだ。
焚き火の炎がぱちぱちと音を立て、頭上には冴え冴えとした満月が浮かんでいる。
しばらくして、食後の薬草茶を淹れたシャオケイが、ふと真剣な表情を見せた。
「……師匠」
「ん?」
「俺、ここに来てから――すごく変わった気がします。以前の俺は、すぐ怒って、焦ってばかりで……でも、薬草を扱って、お茶を淹れて、村の人と話して……。ああ、こんなに穏やかに生きられるんだって、初めて知ったんです」
月明かりに照らされたその瞳には、かすかな涙が光っていた。
「……俺、あの時、薬草を盗もうとしたこと、本当に後悔してるんです……」
シュウランはしばし無言だった。火の音と、秋虫の鳴き声だけが夜の静けさに溶けていく。
やがて彼は、少しだけ視線を上げて言った。
「過去に縛られるより、今どう生きるかです」
「……」
「今のあなたがどう動き、どう考え、どう人に接しているか。それを見ていれば、私はそれ以上は求めません」
「……っ、うぅ……師匠……」
シャオケイはとうとうこらえきれず、ぽろぽろと涙を流した。
「……うわああん……うれしい……うれしいですぅ……っ」
「薬草茶を飲みなさい。涙で味がわからなくなりますよ」
「うぇえ……でも……でも……っ」
泣きじゃくる少年の肩に、そっと一枚の布がかけられる。
それは、シュウランの羽織だった。
「月がきれいですね。……たまには、泣くのも悪くない」
静かな師の言葉に、シャオケイは鼻をすすりながら、笑った。
「……へへ、そうですね、師匠……」
焚き火がやわらかく揺れる中、二人はしばらく月を見上げていた。
薬草の香りと、栗粥のぬくもり。温かい茶と、静かな夜の優しさが、涙の跡を包みこんでいく。
今宵の月は、ただただ優しかった。
山々は黄金に染まり、空気は冴えわたり、夜には満月が澄んだ光を地上に降らせる季節だ。
「今日は中秋だし、ちょっと特別にしてみましょうよ」
そんな提案をしたのは、いつになく上機嫌なシャオケイだった。
カフェ「霧雲堂」の庭先に、竹の敷物と簡易の火鉢を用意し、料理と薬草茶を並べる。今宵は“月見の宴”――ささやかだが、心づくしの晩餐である。
「……山菜の天ぷらに、薬草団子、そして栗入りの粥。なかなかの献立ですね」
「へへっ、朝からがんばったんです。師匠、今日は料理もほめてくださいねっ!」
「火の通し方と香りの引き立て方、よく考えたな。合格だ」
「ほ、ほんとですかっ!? やった~~!」
シャオケイは満面の笑みを浮かべながら、湯気の立つ粥をすくって師匠の椀によそう。
栗の甘みと、陳皮と紫蘇の香りがふわりと立ち上り、食欲をそそる。
「うん、香りも味も秋らしくて、良いですね」
「よかった……。実は村の人たちにも少しずつ教えてもらって、こっそり練習してたんです」
「努力の味がしますよ」
そうして、二人は静かに夜の食卓を囲んだ。
焚き火の炎がぱちぱちと音を立て、頭上には冴え冴えとした満月が浮かんでいる。
しばらくして、食後の薬草茶を淹れたシャオケイが、ふと真剣な表情を見せた。
「……師匠」
「ん?」
「俺、ここに来てから――すごく変わった気がします。以前の俺は、すぐ怒って、焦ってばかりで……でも、薬草を扱って、お茶を淹れて、村の人と話して……。ああ、こんなに穏やかに生きられるんだって、初めて知ったんです」
月明かりに照らされたその瞳には、かすかな涙が光っていた。
「……俺、あの時、薬草を盗もうとしたこと、本当に後悔してるんです……」
シュウランはしばし無言だった。火の音と、秋虫の鳴き声だけが夜の静けさに溶けていく。
やがて彼は、少しだけ視線を上げて言った。
「過去に縛られるより、今どう生きるかです」
「……」
「今のあなたがどう動き、どう考え、どう人に接しているか。それを見ていれば、私はそれ以上は求めません」
「……っ、うぅ……師匠……」
シャオケイはとうとうこらえきれず、ぽろぽろと涙を流した。
「……うわああん……うれしい……うれしいですぅ……っ」
「薬草茶を飲みなさい。涙で味がわからなくなりますよ」
「うぇえ……でも……でも……っ」
泣きじゃくる少年の肩に、そっと一枚の布がかけられる。
それは、シュウランの羽織だった。
「月がきれいですね。……たまには、泣くのも悪くない」
静かな師の言葉に、シャオケイは鼻をすすりながら、笑った。
「……へへ、そうですね、師匠……」
焚き火がやわらかく揺れる中、二人はしばらく月を見上げていた。
薬草の香りと、栗粥のぬくもり。温かい茶と、静かな夜の優しさが、涙の跡を包みこんでいく。
今宵の月は、ただただ優しかった。
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