追放された宮廷錬丹術士、山奥で仙人ライフ始めます 〜薬草を煎じてるだけなのに、王女や弟子が次々やってくる件〜

甘夏蜜柑

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元弟子との再会 〜交錯する信念と裏切り〜

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 王都からの使者が去った翌日、霧雲堂の調薬室には、朝から強い薬草の香りが漂っていた。
 シュウランは、王都で流行している病を治す薬を、細心の注意を払いながら調合していた。

「シャオケイ、この処方には一点の狂いも許されません。薬量をきっちりと量るように」

「はい、師匠!」

 シュウラン達が奮闘する中、村の入口に一台の豪奢な馬車が現れる。周囲の子どもたちが目を丸くしながら見つめていると、馬車から一人の青年が降り立った。

「まさか、こんな山奥に来ることになるとはな……。随分、趣のある村だ」

 高級な錦の衣を身にまとい、鋭い目を持つ青年。その名は――ユエンシン。
 かつて、シュウランの最年少の弟子であり、彼を宮廷から追い落とすきっかけを作った張本人だった。

「カフェ、霧雲堂……ふん、確かに薬草の香りは立派だ」

 ユエンシンが入ってきた瞬間、店内の空気が一変する。立ち上がったシュウランは、黙ってその顔を見つめた。

「あなたが来るとは思いませんでしたよ、ユエンシン」

「久しぶりだな、師匠。いや、もう“元”師匠か。……あの時はすまなかった、とでも言えば満足か?」

「言葉を並べるより、行動で示してください。今日は何の用で来たのですか?」

 シュウランの声は静かだったが、張りつめた刃のような緊張感がにじんでいた。

 ユエンシンは腕を組んだまま、ふっと笑う。

「王都の病、想像以上に厄介だ。お前の薬が必要だというから、俺が直々に取りに来たんだよ」

「薬なら、もう準備はできています。届けるのは使者で十分だったはずですが?」

「だが、それを黙って受け取れば、王都の評判は再びお前のものになる。それが面白くない連中もいる。……俺もな」

 ユエンシンは、少しだけ視線を逸らすようにして言った。

「師匠、お前が去ってから……薬殿はずいぶん変わった。形式ばかりが増えて、誰も患者を見ていない。……俺は、お前のようになりたかったんだ」

 沈黙の中で、薬茶の湯気が二人の間を満たす。シャオケイは気まずそうに、厨房の奥へと姿を消していた。

「……ならばなぜ、あの時、裏切ったのですか」

「怖かったんだ。お前があまりにも完璧だったから、ずっと追いつけない気がして……。その嫉妬が、俺をあの決断へと向かわせた」

 シュウランは、深く息を吐いた。

「過去は戻りません。ですが、これから何を選ぶかは、あなたの自由です」

「……俺に、まだ選べる道はあるか?」

「ありますよ。あなたが本当に、人を救いたいと思うのならな」

 しばしの沈黙のあと、ユエンシンはゆっくりと腰を下ろした。

「ならば、教えてくれ。この病に、どう立ち向かえばいい?」

 シュウランは少しだけ微笑んだ。

「それにはまず、自分を見つめなおすことです。過去を見つめなおし、今の自分の位置を見定めることで、未来への道が見えてきます」

「過去を見つめなおす…か。そう、だな…」

 そうしてユエンシンは薬を持って去っていった。新たな志を胸に抱えて。
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