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使者来訪 〜再び交わる過去と現在〜
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静かな朝、雲渓村の空に一羽の使い鷹が舞い降りた。くちばしに咥えた白い文が、霧雲堂の前に落とされる。封には、シュウランがよく知る紋章が刻まれていた。
「……これは、霊真王国の王室印」
手に取った瞬間、記憶が一気に蘇る。かつての宮廷、薬殿の緊張感、弟子たちとの日々、そして裏切りの瞬間。
シュウランは、文をそっと開く。そこには、こう記されていた。
錬丹術士シュウラン殿
王都にて、未曽有の疫病が蔓延しつつあります。貴殿の知識と技術を、どうか再び王国のためにお貸し願いたく、使者を遣わしました。
霊真王国 宮廷薬殿筆頭錬丹術士 シュウケイ
「……シュウケイ、あの時、私を追放する決定を下した男が」
苦い思いが胸をよぎる。だが今、雲渓村の人々と過ごす日々の穏やかさが、それを洗い流してくれた。
その日の昼過ぎ、使者が村に到着した。灰色の旅装に身を包んだ若き文官が、馬から降りて深く頭を下げる。
「霧雲堂のシュウラン殿でいらっしゃいますね。私は霊真王国より遣わされました、ジュンガと申します」
「ご苦労さまです。中へお入りください」
シュウランは、静かに彼をカフェの一角に通した。シャオケイは奥で黙って茶を淹れている。
「王都で疫病が……?」
「はい。急速に広がっており、薬殿でも対処に苦慮しております。貴殿の処方した解毒茶の噂が宮廷に届き、シュウケイ殿より直々に要請があったのです」
「……あの男が私を?」
シュウランの眼差しに鋭さが宿る。だが、声は冷静だった。
「私は追放された錬丹術士。今さら王都に戻れと言われても、簡単に応じるわけにはいきません」
「もちろんです。ただ、これは王命であり、また、貴殿の技術を最も必要としている者たちがいるのです」
そのとき、奥からシャオケイが盆を手に現れた。
「師匠、これは行くべきです。過去に何があったとしても、病に苦しむ人たちがいるなら、助けてあげてください。私も、師匠を支えます」
シュウランはしばらく沈黙した。そして、窓の外に広がる薬草畑を眺める。
かつて、命じられるまま薬を作っていた日々。しかし今は、自らの意志で、誰かを救うために動ける。
「……条件があります」
シュウランはジュンガに向き直った。
「今回の件は、あくまで“協力”です。私は王都には戻りません。この村を拠点とし、必要があれば王都に薬を届けましょう。そして私が宮廷に戻ることは、決してありません」
「……承知いたしました」
ジュンガは深く頭を下げた。
「では、まずは詳細な症状を記した報告書をお見せください。それを見て、どのような処方が必要かを判断します」
文官が取り出した巻物には、患者の発熱、咳、体力低下、目の充血といった症状が列挙されていた。なかには、宮廷の高官の名も含まれている。
「これは……瘴気系の伝染性疾患。発生源を突き止める必要があります」
シュウランはすぐに調合棚に向かい、必要な薬材を選び始めた。
「シャオケイ、リュウカとホウセン花を、乾燥して粉にして。キョウレンの樹皮も追加しよう。熱と瘴気を同時に抑えられる」
「はい、師匠!」
その様子を、ジュンガは目を見張りながら見つめていた。これが、かつて“錬丹の鬼才”と呼ばれた男の技か——。
こうして、再び王国と関わることになったシュウラン。過去を乗り越え、今は己の意志で道を選ぶ。
そしてこの先、王都との再接触が、思わぬ再会と新たな因縁を呼び起こすことになるのだった。
「……これは、霊真王国の王室印」
手に取った瞬間、記憶が一気に蘇る。かつての宮廷、薬殿の緊張感、弟子たちとの日々、そして裏切りの瞬間。
シュウランは、文をそっと開く。そこには、こう記されていた。
錬丹術士シュウラン殿
王都にて、未曽有の疫病が蔓延しつつあります。貴殿の知識と技術を、どうか再び王国のためにお貸し願いたく、使者を遣わしました。
霊真王国 宮廷薬殿筆頭錬丹術士 シュウケイ
「……シュウケイ、あの時、私を追放する決定を下した男が」
苦い思いが胸をよぎる。だが今、雲渓村の人々と過ごす日々の穏やかさが、それを洗い流してくれた。
その日の昼過ぎ、使者が村に到着した。灰色の旅装に身を包んだ若き文官が、馬から降りて深く頭を下げる。
「霧雲堂のシュウラン殿でいらっしゃいますね。私は霊真王国より遣わされました、ジュンガと申します」
「ご苦労さまです。中へお入りください」
シュウランは、静かに彼をカフェの一角に通した。シャオケイは奥で黙って茶を淹れている。
「王都で疫病が……?」
「はい。急速に広がっており、薬殿でも対処に苦慮しております。貴殿の処方した解毒茶の噂が宮廷に届き、シュウケイ殿より直々に要請があったのです」
「……あの男が私を?」
シュウランの眼差しに鋭さが宿る。だが、声は冷静だった。
「私は追放された錬丹術士。今さら王都に戻れと言われても、簡単に応じるわけにはいきません」
「もちろんです。ただ、これは王命であり、また、貴殿の技術を最も必要としている者たちがいるのです」
そのとき、奥からシャオケイが盆を手に現れた。
「師匠、これは行くべきです。過去に何があったとしても、病に苦しむ人たちがいるなら、助けてあげてください。私も、師匠を支えます」
シュウランはしばらく沈黙した。そして、窓の外に広がる薬草畑を眺める。
かつて、命じられるまま薬を作っていた日々。しかし今は、自らの意志で、誰かを救うために動ける。
「……条件があります」
シュウランはジュンガに向き直った。
「今回の件は、あくまで“協力”です。私は王都には戻りません。この村を拠点とし、必要があれば王都に薬を届けましょう。そして私が宮廷に戻ることは、決してありません」
「……承知いたしました」
ジュンガは深く頭を下げた。
「では、まずは詳細な症状を記した報告書をお見せください。それを見て、どのような処方が必要かを判断します」
文官が取り出した巻物には、患者の発熱、咳、体力低下、目の充血といった症状が列挙されていた。なかには、宮廷の高官の名も含まれている。
「これは……瘴気系の伝染性疾患。発生源を突き止める必要があります」
シュウランはすぐに調合棚に向かい、必要な薬材を選び始めた。
「シャオケイ、リュウカとホウセン花を、乾燥して粉にして。キョウレンの樹皮も追加しよう。熱と瘴気を同時に抑えられる」
「はい、師匠!」
その様子を、ジュンガは目を見張りながら見つめていた。これが、かつて“錬丹の鬼才”と呼ばれた男の技か——。
こうして、再び王国と関わることになったシュウラン。過去を乗り越え、今は己の意志で道を選ぶ。
そしてこの先、王都との再接触が、思わぬ再会と新たな因縁を呼び起こすことになるのだった。
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