29 / 38
帰ってきた霧雲堂 ~猫たちのお出迎え~
しおりを挟む
「ただいま戻りました」
春の風に包まれながら、シュウは静かに霧雲堂の門をくぐった。
後ろではカリンとシャオケイが荷物を抱えつつ、深呼吸をしている。
「はぁ……やっぱり、帰ってくるとホッとするね」
「温泉旅館も楽しかったですけど、やっぱりここが一番落ち着きます」
「……あっ!」
シャオケイが突然声をあげた。
「ウーロンがいません! 子猫たちも!」
「また旅に出た……なんてことはないよね?」
カリンが慌てて縁側をのぞきこむと――
「にゃあっ!」
突然、ふわふわの毛玉が勢いよく飛び出してきて、カリンの足元にしがみついた。
「わっ!? こ、こんにちは……!」
それは、少し大きくなった子猫の一匹だった。続いて、縁の下からわらわらと残りの子猫たちも出てくる。
そして最後に、堂々と登場したのは、母猫ウーロン。
落ち着き払った態度で、しっぽを振りながら一行を出迎えた。
「……まるで“おかえりなさい”って言ってるみたいですね」
シュウが微笑みながらしゃがみ込み、ウーロンの額をやさしく撫でる。
「ウーロン、子どもたちの留守番、お疲れさまでした」
「にゃー……」
ウーロンは一声鳴いて、すぐ隣にすり寄ってくる子猫の頭をペロリと舐めた。
さっそく再開された霧雲堂の営業。
宿で学んだ新しい薬茶のレシピや、旅先で仕入れた薬草がメニューに加わった。
「こちらは、“温泉気分の薬湯茶”です。本日限定ですよ」
「おぉ……香りがやわらかくて、まるでお風呂に浸かってるみたいだな」
訪れた村人たちが目を細めているその傍ら、子猫たちがカフェの片隅でドタバタと追いかけっこを始めた。
「こらっ、そこは茶器の棚! 落としたら大変なんだから!」
シャオケイが慌てて駆け寄るが、子猫たちは小さな手足で棚の下に逃げ込み、いたずらっぽく「にゃっ」と鳴く。
「やれやれ……もう霧雲堂のマスコットになってますね」
シュウは苦笑しながら、薬棚から香草を取り出した。
「先生、なにしてるんですか?」
「子猫用の消化を助ける茶葉を調合しています。最近食べすぎているようですから」
「甘やかしすぎじゃないですか……?」
そんなシャオケイの言葉に、カリンが小さく笑う。
「でも、みんながここでの暮らしに慣れてきてるって、いいことよね」
「ええ、私たちも、ウーロンたちも――この村とこの店で、しっかり根を張り始めたのだと思います」
その夜、閉店後の霧雲堂。
月明かりが縁側に差し込むなか、シュウは茶を淹れながらぽつりと言った。
「……旅をして、帰ってきて、あらためて思いました」
「思ったって?」
カリンが聞き返す。
「この村が、私にとっての“帰る場所”になっているのだと」
湯気の立つ茶碗を手に、シュウは静かに目を細めた。
「薬も茶も、人を癒すのは、“誰と、どこで飲むか”ですから」
カリンとシャオケイも、それぞれの湯飲みを手にし、にこやかにうなずいた。
そして、そっと寄ってきたウーロンが、シュウの膝に飛び乗って丸まった。
「……あなたも、そう思っているのですか?」
シュウの問いかけに、ウーロンは「にゃ」と一声返した。
縁側には、春の虫の音と、夜の静けさと――
小さな家族の、やわらかな時間が流れていた。
春の風に包まれながら、シュウは静かに霧雲堂の門をくぐった。
後ろではカリンとシャオケイが荷物を抱えつつ、深呼吸をしている。
「はぁ……やっぱり、帰ってくるとホッとするね」
「温泉旅館も楽しかったですけど、やっぱりここが一番落ち着きます」
「……あっ!」
シャオケイが突然声をあげた。
「ウーロンがいません! 子猫たちも!」
「また旅に出た……なんてことはないよね?」
カリンが慌てて縁側をのぞきこむと――
「にゃあっ!」
突然、ふわふわの毛玉が勢いよく飛び出してきて、カリンの足元にしがみついた。
「わっ!? こ、こんにちは……!」
それは、少し大きくなった子猫の一匹だった。続いて、縁の下からわらわらと残りの子猫たちも出てくる。
そして最後に、堂々と登場したのは、母猫ウーロン。
落ち着き払った態度で、しっぽを振りながら一行を出迎えた。
「……まるで“おかえりなさい”って言ってるみたいですね」
シュウが微笑みながらしゃがみ込み、ウーロンの額をやさしく撫でる。
「ウーロン、子どもたちの留守番、お疲れさまでした」
「にゃー……」
ウーロンは一声鳴いて、すぐ隣にすり寄ってくる子猫の頭をペロリと舐めた。
さっそく再開された霧雲堂の営業。
宿で学んだ新しい薬茶のレシピや、旅先で仕入れた薬草がメニューに加わった。
「こちらは、“温泉気分の薬湯茶”です。本日限定ですよ」
「おぉ……香りがやわらかくて、まるでお風呂に浸かってるみたいだな」
訪れた村人たちが目を細めているその傍ら、子猫たちがカフェの片隅でドタバタと追いかけっこを始めた。
「こらっ、そこは茶器の棚! 落としたら大変なんだから!」
シャオケイが慌てて駆け寄るが、子猫たちは小さな手足で棚の下に逃げ込み、いたずらっぽく「にゃっ」と鳴く。
「やれやれ……もう霧雲堂のマスコットになってますね」
シュウは苦笑しながら、薬棚から香草を取り出した。
「先生、なにしてるんですか?」
「子猫用の消化を助ける茶葉を調合しています。最近食べすぎているようですから」
「甘やかしすぎじゃないですか……?」
そんなシャオケイの言葉に、カリンが小さく笑う。
「でも、みんながここでの暮らしに慣れてきてるって、いいことよね」
「ええ、私たちも、ウーロンたちも――この村とこの店で、しっかり根を張り始めたのだと思います」
その夜、閉店後の霧雲堂。
月明かりが縁側に差し込むなか、シュウは茶を淹れながらぽつりと言った。
「……旅をして、帰ってきて、あらためて思いました」
「思ったって?」
カリンが聞き返す。
「この村が、私にとっての“帰る場所”になっているのだと」
湯気の立つ茶碗を手に、シュウは静かに目を細めた。
「薬も茶も、人を癒すのは、“誰と、どこで飲むか”ですから」
カリンとシャオケイも、それぞれの湯飲みを手にし、にこやかにうなずいた。
そして、そっと寄ってきたウーロンが、シュウの膝に飛び乗って丸まった。
「……あなたも、そう思っているのですか?」
シュウの問いかけに、ウーロンは「にゃ」と一声返した。
縁側には、春の虫の音と、夜の静けさと――
小さな家族の、やわらかな時間が流れていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
異世界でホワイトな飲食店経営を
視世陽木
ファンタジー
定食屋チェーン店で雇われ店長をしていた飯田譲治(イイダ ジョウジ)は、気がついたら真っ白な世界に立っていた。
彼の最後の記憶は、連勤に連勤を重ねてふらふらになりながら帰宅し、赤信号に気づかずに道路に飛び出し、トラックに轢かれて亡くなったというもの。
彼が置かれた状況を説明するためにスタンバイしていた女神様を思いっきり無視しながら、1人考察を進める譲治。
しまいには女神様を泣かせてしまい、十分な説明もないままに異世界に転移させられてしまった!
ブラック企業で酷使されながら、それでも料理が大好きでいつかは自分の店を開きたいと夢見ていた彼は、はたして異世界でどんな生活を送るのか!?
異世界物のテンプレと超ご都合主義を盛り沢山に、ちょいちょい社会風刺を入れながらお送りする異世界定食屋経営物語。はたしてジョージはホワイトな飲食店を経営できるのか!?
● 異世界テンプレと超ご都合主義で話が進むので、苦手な方や飽きてきた方には合わないかもしれません。
● かつて作者もブラック飲食店で店長をしていました。
● 基本的にはおふざけ多め、たまにシリアス。
● 残酷な描写や性的な描写はほとんどありませんが、後々死者は出ます。
貞操逆転世界の「内助の功」~掃除と料理を極めた俺が、脳筋幼馴染を女王にするまで~
ありゃくね
ファンタジー
前世の記憶が目覚めたそこは、男女の貞操が逆転した異世界だった。
彼が繰り出すのは、現代知識を活かした「お掃除アイテム」、そして胃袋を掴む「絶品手料理」。 ただ快適に暮らしたいだけのマシロの行動は、男に飢えた女騎士たちを狂わせ、国の常識さえも変える一大革命へと繋がっていく。
#密売じゃありません!ミツバイギフトで最高に美味しい果物作ったら、領主令息が夫になった件について
国府知里
ファンタジー
「がんばっても報われなかったあなたに」“スローライフ成り上がりファンタジー”
人生に疲れ果てた北村めぐみは、目覚めると異世界の農村で少女グレイスとして転生していた。この世界では6歳で神から“ギフト”を授かるという。グレイスが得た謎の力「ミツバイ」は、果物を蜜のように甘くするという奇跡の力だった!村を、領地を、やがて王国までも変えていく果樹栽培の物語がいま始まる――。美味しさが未来を育てる、異世界農業×スローライフ・ファンタジー!
貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!
Levi
ファンタジー
前世は日本で超絶貧乏家庭に育った美樹は、ひょんなことから異世界で覚醒。そして姫として生まれ変わっているのを知ったけど、その国は超絶貧乏王国。 美樹は貧乏生活でのノウハウで王国を救おうと心に決めた!
※エブリスタさん版をベースに、一部少し文字を足したり引いたり直したりしています
【完結】元Sランク受付嬢の、路地裏ひとり酒とまかない飯
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ギルド受付嬢の佐倉レナ、外見はちょっと美人。仕事ぶりは真面目でテキパキ。そんなどこにでもいる女性。
でも実はその正体、数年前まで“災厄クラス”とまで噂された元Sランク冒険者。
今は戦わない。名乗らない。ひっそり事務仕事に徹してる。
なぜって、もう十分なんです。命がけで世界を救った報酬は、“おひとりさま晩酌”の幸福。
今日も定時で仕事を終え、路地裏の飯処〈モンス飯亭〉へ直行。
絶品まかないメシとよく冷えた一杯で、心と体をリセットする時間。
それが、いまのレナの“最強スタイル”。
誰にも気を使わない、誰も邪魔しない。
そんなおひとりさまグルメライフ、ここに開幕。
田舎おじさんのダンジョン民宿へようこそ!〜元社畜の俺は、民宿と配信で全国初のダンジョン観光地化を目指します!〜
咲月ねむと
ファンタジー
東京での社畜生活に心身ともに疲れ果てた主人公・田中雄介(38歳)が、故郷の北海道、留咲萌町に帰郷。両親が遺したダンジョン付きの古民家を改装し、「ダンジョン民宿」として開業。偶然訪れた人気配信者との出会いをきっかけに、最初の客を迎え、民宿経営の第一歩を踏み出す。
笑えて、心温かくなるダンジョン物語。
※この小説はフィクションです。
実在の人物、団体などとは関係ありません。
日本を舞台に繰り広げますが、架空の地名、建造物が物語には登場します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる