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市場へおつかい!~カリン様のドタバタ交渉記~
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「シャオケイ、今日の市場で買ってきてほしい物、書いておきましたよ」
霧雲堂の朝。
メモを持ったシュウと、かごを持ったシャオケイが準備をしていると、横からひょいっと手が挙がった。
「そのおつかい、わたしが一人でやる!」
「……カリン様が、おひとりで、ですか?」
「ええ。王女だからって、いつまでも何もできないままじゃいけないでしょ? わたしも村の一員だし、買い物なら前に皆と一緒に行ったでしょう?」
「おお、立派な心構えですね。では、こちらの買い物リストをお持ちください」
シュウが渡したのは、小麦粉、干し椎茸、塩漬け根菜、そして……「風霧草(ふうむそう)」。
「よーし、任せなさい!」
自信満々に頷くカリンを、シュウとシャオケイは心配そうに見送った。
「(……だ、大丈夫かな……)」
雲渓村の市場は、毎週末の午前中に開かれる小さな定期市だ。
野菜、調味料、乾物、薬草、それに時々、村の奥様たちの焼き菓子まで並ぶ。
カリンは、初めての一人での“庶民の買い物”に心躍らせながらも、すぐに現実に直面した。
「このお塩、おいくらですか?」
「えーと、三銭と半銭」
「……それっていくら?」
「え?」
いきなり硬直する店主。カリンは財布の中の銭貨を見つめながら、悩みはじめる。
「これとこれを足すと……七銭? いや六銭? ええと、半銭ってこのちっこいの……?」
「……嬢ちゃん、村の子じゃないな?」
「う、うん、ちょっと王都の方から……」
「あー、例のお嬢さんか」
店主は苦笑いを浮かべながら、丁寧に説明してくれた。
それでも、カリンの顔には“???”が浮かんだまま。
次に訪れた乾物屋では、別の問題が。
「この干し椎茸、ひと袋で……ちょっと安くなったりしません?」
「お、値引き交渉かい? ふふ、なかなかやるねぇ。でも今日は特売日だから、これ以上は無理だよ」
「そっか……。あ、じゃあ、“おまけ”とか……」
「嬢ちゃん、商人の駆け引き、覚えてきたな?」
「えっ、そうなの? いまの、駆け引き?」
やっとのことで風霧草を見つけたころには、カリンの額にはじんわりと汗が滲んでいた。
ふう、と息をついたところに、声をかけてきたのは村の老婆・ユンおばあちゃん。
「まぁまぁカリンちゃん、ひとりで買い物かい? えらいねぇ。うちの孫も、最初は間違えて生姜を“しょうがない草”と間違えてたのよ」
「しょ、しょうがない草……」
その響きに思わず笑ってしまい、緊張の糸が緩んだ。
「ありがとう、おばあちゃん。……わたし、もうちょっと頑張るね」
午後の霧雲堂。
カリンは腕いっぱいに袋を抱えて、堂々と帰還した。
「ただいまー! すっごいがんばりましたわ!」
「お疲れさまでした、カリン様。……それで、買い物の成果は……」
シュウが袋の中を確認すると――
「これは……風霧草ではなく、“霧風草”ですね。こちらは似てますが、効能が真逆です」
「あ、あれ!? ラベル……逆だったのかな……?」
「干し椎茸は?」
「それはちゃんと買えた!……と思う!」
「それは安心しました。ですがこれは干しナメコですね」
「うぅぅ……」
しゅんとうなだれるカリンに、シャオケイがにっこりとお茶を差し出した。
「でも、ちゃんとお金払って、最後まで帰ってこられたんですから、大成功ですよ」
「そうですよ。買い物は経験がすべて。これから少しずつ慣れていけばいいんです」
「……うん、そうだよね」
カリンはお茶を受け取り、小さく、でもしっかりと頷いた。
その夜。
霧雲堂のまかないには、“ナメコと卵のとろみ粥”が出された。
「これはこれで、美味しいですね……」
「うん! なんか……体にやさしい味」
「カリン様の“間違い”も、たまには薬になるようです」
シュウの言葉に、笑い声が霧の中へ溶けていった。
霧雲堂の朝。
メモを持ったシュウと、かごを持ったシャオケイが準備をしていると、横からひょいっと手が挙がった。
「そのおつかい、わたしが一人でやる!」
「……カリン様が、おひとりで、ですか?」
「ええ。王女だからって、いつまでも何もできないままじゃいけないでしょ? わたしも村の一員だし、買い物なら前に皆と一緒に行ったでしょう?」
「おお、立派な心構えですね。では、こちらの買い物リストをお持ちください」
シュウが渡したのは、小麦粉、干し椎茸、塩漬け根菜、そして……「風霧草(ふうむそう)」。
「よーし、任せなさい!」
自信満々に頷くカリンを、シュウとシャオケイは心配そうに見送った。
「(……だ、大丈夫かな……)」
雲渓村の市場は、毎週末の午前中に開かれる小さな定期市だ。
野菜、調味料、乾物、薬草、それに時々、村の奥様たちの焼き菓子まで並ぶ。
カリンは、初めての一人での“庶民の買い物”に心躍らせながらも、すぐに現実に直面した。
「このお塩、おいくらですか?」
「えーと、三銭と半銭」
「……それっていくら?」
「え?」
いきなり硬直する店主。カリンは財布の中の銭貨を見つめながら、悩みはじめる。
「これとこれを足すと……七銭? いや六銭? ええと、半銭ってこのちっこいの……?」
「……嬢ちゃん、村の子じゃないな?」
「う、うん、ちょっと王都の方から……」
「あー、例のお嬢さんか」
店主は苦笑いを浮かべながら、丁寧に説明してくれた。
それでも、カリンの顔には“???”が浮かんだまま。
次に訪れた乾物屋では、別の問題が。
「この干し椎茸、ひと袋で……ちょっと安くなったりしません?」
「お、値引き交渉かい? ふふ、なかなかやるねぇ。でも今日は特売日だから、これ以上は無理だよ」
「そっか……。あ、じゃあ、“おまけ”とか……」
「嬢ちゃん、商人の駆け引き、覚えてきたな?」
「えっ、そうなの? いまの、駆け引き?」
やっとのことで風霧草を見つけたころには、カリンの額にはじんわりと汗が滲んでいた。
ふう、と息をついたところに、声をかけてきたのは村の老婆・ユンおばあちゃん。
「まぁまぁカリンちゃん、ひとりで買い物かい? えらいねぇ。うちの孫も、最初は間違えて生姜を“しょうがない草”と間違えてたのよ」
「しょ、しょうがない草……」
その響きに思わず笑ってしまい、緊張の糸が緩んだ。
「ありがとう、おばあちゃん。……わたし、もうちょっと頑張るね」
午後の霧雲堂。
カリンは腕いっぱいに袋を抱えて、堂々と帰還した。
「ただいまー! すっごいがんばりましたわ!」
「お疲れさまでした、カリン様。……それで、買い物の成果は……」
シュウが袋の中を確認すると――
「これは……風霧草ではなく、“霧風草”ですね。こちらは似てますが、効能が真逆です」
「あ、あれ!? ラベル……逆だったのかな……?」
「干し椎茸は?」
「それはちゃんと買えた!……と思う!」
「それは安心しました。ですがこれは干しナメコですね」
「うぅぅ……」
しゅんとうなだれるカリンに、シャオケイがにっこりとお茶を差し出した。
「でも、ちゃんとお金払って、最後まで帰ってこられたんですから、大成功ですよ」
「そうですよ。買い物は経験がすべて。これから少しずつ慣れていけばいいんです」
「……うん、そうだよね」
カリンはお茶を受け取り、小さく、でもしっかりと頷いた。
その夜。
霧雲堂のまかないには、“ナメコと卵のとろみ粥”が出された。
「これはこれで、美味しいですね……」
「うん! なんか……体にやさしい味」
「カリン様の“間違い”も、たまには薬になるようです」
シュウの言葉に、笑い声が霧の中へ溶けていった。
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