19 / 49
ギルドの親父と支部長
しおりを挟む
「ふふ、行っちまいやがったな」
ニコライとレイラの昇級が決まった翌日、二人はさっさと旅立っていった。
今まで数々の冒険者を見てきたが、全く桁違いな奴だった。俺も周りの奴も、魔導書士っていうもんの概念を吹っ飛ばされたような気分だったよ。
「ええ、全く、嵐のような人でしたね」
「支部長、おはようございます」
「はい、おはようございます。ところで一つ聞きたかったことがあるのですが」
「ん、何ですかい?」
「いえ、ニコライさんのとんでもなさはよく分かりましたが、なぜ彼がGランクからのスタートだったんですか?」
「ああ、それはですね」
俺は支部長に、魔力測定の結果の話をした。
「一瞬光ったが、何の色も灯らなかったですか…」
ふむと、支部長が顎に手を当てて考え込む。
「…ひょっとしたら、魔力が多すぎたのが原因かもしれませんね」
「そりゃあ、どういうことですかい?」
「ええ、あの水晶は厳密には、込められた魔力に直接反応して光るわけではありません」
「え?」
「まあ、仕組みとしてはですね、込められた魔力に応じて、水晶の周りに膜ができるわけです。で、その膜は特定の魔力スペクトル…まあ、色を通すわけです。その膜の強さに応じて、水晶が様々な色に見えるわけです。そしてAランク相当だと、膜が頑丈すぎて何の色も通さず、結果水晶が黒く見えるというわけです」
「ほう、そうなんですか。しかし、ニコライがやった時に光が灯らなかったのは何でですかい?」
「おそらくですが、一瞬光ったということは、水晶はきちんと反応したのでしょう。しかしその強力すぎる魔力に水晶が耐え切れず、膜が維持できなかった。それで何の色も灯らなかった。まあ、そんな所でしょう」
「そんなことがあるんですか?」
「実は過去にも同じ事例はあります。…大昔の智の賢者がそうだったと聞いています」
「あの勇者物語のですか?しかしありゃあ、おとぎ話でしょう!」
「ふふ、そうですね…」
そう言って支部長が窓から遠くを見つめる。
「…まあ、遠く王都からでも響くような活躍をしてくれるでしょう。楽しみですね」
そうですねぇと応えながら、俺は冒険者たちに出すクエストの整理をする。伝説的な冒険譚も楽しみだが、まずは日々の仕事からこなすとしようか。今日も冒険者たちの熱気ある一日が始まる。
ニコライとレイラの昇級が決まった翌日、二人はさっさと旅立っていった。
今まで数々の冒険者を見てきたが、全く桁違いな奴だった。俺も周りの奴も、魔導書士っていうもんの概念を吹っ飛ばされたような気分だったよ。
「ええ、全く、嵐のような人でしたね」
「支部長、おはようございます」
「はい、おはようございます。ところで一つ聞きたかったことがあるのですが」
「ん、何ですかい?」
「いえ、ニコライさんのとんでもなさはよく分かりましたが、なぜ彼がGランクからのスタートだったんですか?」
「ああ、それはですね」
俺は支部長に、魔力測定の結果の話をした。
「一瞬光ったが、何の色も灯らなかったですか…」
ふむと、支部長が顎に手を当てて考え込む。
「…ひょっとしたら、魔力が多すぎたのが原因かもしれませんね」
「そりゃあ、どういうことですかい?」
「ええ、あの水晶は厳密には、込められた魔力に直接反応して光るわけではありません」
「え?」
「まあ、仕組みとしてはですね、込められた魔力に応じて、水晶の周りに膜ができるわけです。で、その膜は特定の魔力スペクトル…まあ、色を通すわけです。その膜の強さに応じて、水晶が様々な色に見えるわけです。そしてAランク相当だと、膜が頑丈すぎて何の色も通さず、結果水晶が黒く見えるというわけです」
「ほう、そうなんですか。しかし、ニコライがやった時に光が灯らなかったのは何でですかい?」
「おそらくですが、一瞬光ったということは、水晶はきちんと反応したのでしょう。しかしその強力すぎる魔力に水晶が耐え切れず、膜が維持できなかった。それで何の色も灯らなかった。まあ、そんな所でしょう」
「そんなことがあるんですか?」
「実は過去にも同じ事例はあります。…大昔の智の賢者がそうだったと聞いています」
「あの勇者物語のですか?しかしありゃあ、おとぎ話でしょう!」
「ふふ、そうですね…」
そう言って支部長が窓から遠くを見つめる。
「…まあ、遠く王都からでも響くような活躍をしてくれるでしょう。楽しみですね」
そうですねぇと応えながら、俺は冒険者たちに出すクエストの整理をする。伝説的な冒険譚も楽しみだが、まずは日々の仕事からこなすとしようか。今日も冒険者たちの熱気ある一日が始まる。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる