無自覚最強な魔導書士が図書館を作るお話

甘夏蜜柑

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ギルドの親父と支部長

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「ふふ、行っちまいやがったな」
 ニコライとレイラの昇級が決まった翌日、二人はさっさと旅立っていった。
 今まで数々の冒険者を見てきたが、全く桁違いな奴だった。俺も周りの奴も、魔導書士っていうもんの概念を吹っ飛ばされたような気分だったよ。
「ええ、全く、嵐のような人でしたね」
「支部長、おはようございます」
「はい、おはようございます。ところで一つ聞きたかったことがあるのですが」
「ん、何ですかい?」
「いえ、ニコライさんのとんでもなさはよく分かりましたが、なぜ彼がGランクからのスタートだったんですか?」
「ああ、それはですね」
 俺は支部長に、魔力測定の結果の話をした。
「一瞬光ったが、何の色も灯らなかったですか…」
 ふむと、支部長が顎に手を当てて考え込む。
「…ひょっとしたら、魔力が多すぎたのが原因かもしれませんね」
「そりゃあ、どういうことですかい?」
「ええ、あの水晶は厳密には、込められた魔力に直接反応して光るわけではありません」
「え?」
「まあ、仕組みとしてはですね、込められた魔力に応じて、水晶の周りに膜ができるわけです。で、その膜は特定の魔力スペクトル…まあ、色を通すわけです。その膜の強さに応じて、水晶が様々な色に見えるわけです。そしてAランク相当だと、膜が頑丈すぎて何の色も通さず、結果水晶が黒く見えるというわけです」
「ほう、そうなんですか。しかし、ニコライがやった時に光が灯らなかったのは何でですかい?」
「おそらくですが、一瞬光ったということは、水晶はきちんと反応したのでしょう。しかしその強力すぎる魔力に水晶が耐え切れず、膜が維持できなかった。それで何の色も灯らなかった。まあ、そんな所でしょう」
「そんなことがあるんですか?」
「実は過去にも同じ事例はあります。…大昔の智の賢者がそうだったと聞いています」
「あの勇者物語のですか?しかしありゃあ、おとぎ話でしょう!」
「ふふ、そうですね…」
 そう言って支部長が窓から遠くを見つめる。
「…まあ、遠く王都からでも響くような活躍をしてくれるでしょう。楽しみですね」
 そうですねぇと応えながら、俺は冒険者たちに出すクエストの整理をする。伝説的な冒険譚も楽しみだが、まずは日々の仕事からこなすとしようか。今日も冒険者たちの熱気ある一日が始まる。
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