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魔導書士、アカデミー学長とタイマン

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 アカデミー学長のムーアと魔術勝負をすることになった私は、村の郊外の開けた場所にやってきた。話を聞いたレイラさんやルル達がそれを見守る。
「ここで勝負をしましょう。私が勝った暁には、私の生徒への侮辱を取り消してください」
「ああ、ああ、良いぞ。勝てば、な。全く、魔導書士風情がようそこまでいきがれるわい」
 ムーアがへらへらと応える。
「ただし、わしが勝てば、この学校も図書館も畳むことじゃ。あとはそうじゃな、訳のわからん魔法道具で小銭を稼ぎよるそうじゃから、それらの権利も譲ってもらおうかのう。ほっほっほっ」
「…良いでしょう。では、さっさと始めましょう」
 距離を開けてムーアと立ち会う。
 あちらは杖を構え、私は魔導書を広げて構える。
「ふん、それでは行くぞ!」
 ムーアが杖に魔力を込める。杖の先端が強く輝きだし、そこから魔方陣が展開される。
「喰らえい!ファイヤーレーザー!」
 詠唱とともに、熱線がこちらに襲い掛かってくる。
「ふはは、焼け死ぬがよい!」
 …これぽっちの魔法で焼け死ぬ?笑わせてくれる。
「お越しください、ウンディーネ」
 そう唱えると、私が手にしていた青い魔導書~『ウンディーネの航跡』~が輝きだす。そして、
「お久しぶりね、ニコライ」
 現れたのは、青い肌に水の羽衣をまとった女性。水の精霊ウンディーネが優しく微笑んでいた。
「さて、まずはこれね」
 そう言うとウンディーネは、襲い掛かってくるファイヤーレーザーを手のひらで受けた。じゅわじゅわと音を立てて熱線が消えていく。
「はぁ?わしの魔法を素手で受けたじゃと?」
「全く。魔導書から大体の話は聞いていたけど、とりあえず溺れなさい」
 ウンディーネがぱちんと指を鳴らすと。
「な、何じゃ、水が、顔の周りを、おおおぉ…」
 ムーアの顔の周りを水が覆いだした。
「ねぇ、知ってる?一番苦しい死に方は、溺死らしいわよ?」
 水がムーアの顔をすっぽりと覆った。勝負に使う杖もほっぽり出して、その場でもがき苦しんでいる。
「がぼがぼがぼ…」
 そして倒れたところで、ウンディーネが再び指を鳴らす。すると顔を覆っていた水が一瞬で消えてなくなった。
「とりあえずはこんなもので良かったかしら?もっと派手に吹き飛ばしても良かったのだけど?」
「いいえ、これで大丈夫です。少し聞きたいこともありますので」
「聞きたいこと?こんな奴に?」
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