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転生した異世界の生活

16 魔獣討伐からの出会い 3

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「アレス様。油断は禁物ですぞ。ですが、本当に強くなられた……このセドラ、アレス様の勇姿を間近で拝見でき誠に嬉しく……ううっ」

 頼むから泣かないでくれよ。
 セドラの涙腺は、修復不可能なまでに壊れているとしか思えない。
 魔獣と言っても、ただの野生動物だから居ない日というのも結構ある。なので数匹居た今日は珍しい日でもあった。

「そろそろ夕刻です。さ、戻りましょうか?」

「ああ。わかっ……!?」

 何羽かの鳥が飛び立って、いま悲鳴のようなものが聞こえた気がする。はっきりと聞こえたわけでもなかったが、魔力探知を展開していった。
 魔法書によれば全ての人間や魔物には魔力が少なからず存在している。

 魔力探知。この魔法は近くに魔力の反応を感知するもので、誰かがいるのが分かる程度。屋敷で使用しても、その魔力が誰の物かまでは理解することはできていない。
 範囲を拡大させていくと、複数の反応を捉えることができた。

「あっちだ。」

「アレス様? お待ちを、アレス様!」

 風魔法を使うことで、森の中を駆け抜け魔力の反応する方向へと向かう。反応があった魔力は四つ。
 近づいていくと、はっきりと魔獣が吠える声が聞こえた。急いで反応の下へと向かうと、そこには壊れた馬車が目に入ってきた。壊れた場所の傍らには、一人の男が横たわっている。
 戦った様子もなく、たった今襲われたのだろう。
 俺はその場へと駆け寄ると、一匹の大きな熊の魔獣が立っていた。

「でかいが、これでも食らってろ。アイスニードル」

 つらら程度の大きさの氷を無数に浴びせると、こちらを標的に定めてくれた。
 本来であれば、この氷が刺さればもっと楽なんだろうけど。今はこれが精一杯だ。

「やっぱり刺さらないよな。だったら、デカイの一発ならどうだ?」

 魔力を集中させ、自分の背丈よりも大きく鋭い氷の槍を投げつけた。

「グオオォォ」

 熊とはいえ、魔獣と呼ばれるだけのことはある。
 刺さらないにしても、さっきよりかは効いているはず。狙った場所も胸の真ん中だと言うのに、相手はまだ倒れる様子がない。

「グガァアアア」

「早い!? よっと」

 俺めがけて突進してくる熊を前に、風魔法で上空へと飛ぶ。浮遊はできないが、さっきよりも大きく魔力を込める。
 上空で大きな氷柱を作り出し、熊めがけてぶつけると、運良く頭に当たり押しつぶされることでその大きな巨体が倒れた。

「よっしゃ……じゃなくて、ウインド!」

 ギリギリの所で風魔法を放つも、着地に失敗した俺は尻餅をつくことになってしまった。
 それだけで済めば良いものを、倒れたことで地面にあった石で背中を打って、のたうち回っているとセドラがいいところに来てくれた。

「アレス様。ご無事ですか?」

「ああ、セドラ。多分片付いたと思う……それは良いとして、ポーションを出してくれ」

「お怪我を!? 只今」

 セドラは収納に置いてあるポーションを七個ほどもってやってきた。
 あの魔法俺も欲しいところだけど……セドラの説明は今ひとつなんだよな。セドラ曰く「執事としてこの魔法は使い道が多いですから」執事でなくても便利だと思うのだが?
 ヒュッとして、パカッの意味がわかればいいのだけど……。

「アレス様、一体何処をお怪我されましたか?」

「俺じゃないよ。あの人だ、なんとかなりそうか?」

「そうでしたか、では私にお任せください」

 意識はなかったが、怪我の方も問題はないらしい。
 痛みに耐えているのか、小さくうめき声も出しているのでまだ助かる。

「誰か居ますか?」

「ひっ」

 壊れた馬車を覗き込むと、侍女らしき人は一人の少女を守るようにかばっており、目が合った少女もひどく怯えていた。
 怪我はしていないようだけど、打ち身ぐらいならあるかもしれない。

「大丈夫ですか? 魔獣はもう退治しました」

「本当に大丈夫なのですか?」

「この様子だと馬車も使えませんので、僕の屋敷に来てください。申し遅れました、僕の名前は、アレス・ローバンと申します」

「ローバン公爵様の……この方はミーア様。ミーア・シルラーン様にございます」

「セドラ。引き上げるのを手伝ってくれ」

 ミーアという少女は、侍女に抱きかかえられたまま。よほど恐ろしかったのか未だに震えていた。
 こういう時に気の利いた言葉でも掛けて上げれば良いのだけど……。
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