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強者出現
185 挫折したその先に 2
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攻略対象である俺が動くことで、シナリオは大きく変化しアレスとは関係のないパメラ。
タシムドリアンの介入によってメアリまでもが、こんなどうしようもない見た目からしてアウトなのに、二人はミーア同様に好意を寄せてくれる。
バセルトンの派生によって、今回のことももしかしたらシナリオが大きく関係しているものかもしれない。
だから、これまで確認されていなかった強者が出現したという可能性。
あんな馬鹿げた強さでありながら、失われた武器とかいう別のシナリオを見せてくる。
俺なんかのために、冬にも関わらず三人はやってきた。
これ以上ミーアに不安な思いはさせたくはない。だから、側に居るべきだと判断した。
結末がどうであれ、あれも一つのエンディングであり、いくら選択肢を変えようとも、俺は主人公ではない。
「アレス様は本当にお強いお方です。それなのにあのような怪我を負っても、諦めることもなく立ち向かわれました」
「あの時は放置しておくと、ただ危険だと思ったからで、本当はあんな事したくもないさ」
半分本当で、いや半分以上が嘘だな。実力を試したかったというのが大きいのかもしれない。
ラスボスの前に、偶然出会った強者は所詮中ボスより少し面倒な相手程度。
しかし、結果は見事なまでに惨敗だった。
この程度の強さに溺れ、いい気になっていたいい証拠だ。
わざわざ倒したのは、倒せるという自信が欲しかったからだ。ベルフェゴルも倒せないまま、ラスボスなんて不可能な存在だった……だけど、あの戦いは、今の結論に至る引き金にもなってしまった。
あの程度の相手に苦戦を強いられ、たった一人でラスボスを倒すなんて到底不可能だ。
「アレス様。そのような嘘をお止めください」
「何を言って……」
ミーアは身を乗り出して、俺の口に人差し指を当てていた。
そして、隣へと座り頭を預けている。
俺の右手にはミーアの手が添えられた。
「何年もの間。アレス様だけを見ておりました。あの時と同じです。言いたくもないことを言って無理されている。見捨てることを何よりも忌避されてます。ですから、本当は守りたいのではありませんか?」
ミーアの言う守りたい者とは一体なんだ?
俺が求めている未来を……本当は諦めたくはない。
だけど、俺にはその自信が持てない。ミーアが助かり、仮にメアリが、パメラが犠牲になったとして、今の俺が納得できると?
「魔物の暴走は多くの民を苦しめる。アレス様のように心お優しいお方が、放置することなど出来ませんよね?」
「それは……父上から教えられたもので、俺の本心というわけでは」
これは詭弁だ。
タシムドリアンの時と何も変わらない。
民あってこその貴族であり、その民を助けるのが貴族だ。
父上も兄上も、先祖代々それを守ってきていたはずだ。
昔から何度も聞かされていた……
だから、俺も私財をなげうって一時的に施しをした。
それで助かった人達もいる。
しかし、助けられなかった人も多くいたし、あの時集まってきた人を俺は見捨てることしか出来なかった。
見捨てたかったわけじゃない、俺程度ではどうすることも出来なかった。
それはただの言い逃れにしか過ぎないが、父上や兄上であればもっといい対策も打てたはずだ。
「俺一人でどうにかできる問題じゃないだろう。俺に出来ることは、ダンジョンに籠もるぐらいのものだ」
「そんな事はありません。ダンジョンを攻略できるのは……この世界では、アレス様にしか出来ません」
「それは、どうなんだろうな……」
ダンジョンを攻略しそうな人物はもう一人いる。だが彼女はそんな事を望んでいるのだろうか?
ベルフェゴルであれだったんだ。他の強者は強さは?
それ以上の可能性は十分にある。
中でも、最後に出てくる強者はさらに別格な存在だ。そんな化け物、相手にしなくていいのならそれに越したことはない。
タシムドリアンの介入によってメアリまでもが、こんなどうしようもない見た目からしてアウトなのに、二人はミーア同様に好意を寄せてくれる。
バセルトンの派生によって、今回のことももしかしたらシナリオが大きく関係しているものかもしれない。
だから、これまで確認されていなかった強者が出現したという可能性。
あんな馬鹿げた強さでありながら、失われた武器とかいう別のシナリオを見せてくる。
俺なんかのために、冬にも関わらず三人はやってきた。
これ以上ミーアに不安な思いはさせたくはない。だから、側に居るべきだと判断した。
結末がどうであれ、あれも一つのエンディングであり、いくら選択肢を変えようとも、俺は主人公ではない。
「アレス様は本当にお強いお方です。それなのにあのような怪我を負っても、諦めることもなく立ち向かわれました」
「あの時は放置しておくと、ただ危険だと思ったからで、本当はあんな事したくもないさ」
半分本当で、いや半分以上が嘘だな。実力を試したかったというのが大きいのかもしれない。
ラスボスの前に、偶然出会った強者は所詮中ボスより少し面倒な相手程度。
しかし、結果は見事なまでに惨敗だった。
この程度の強さに溺れ、いい気になっていたいい証拠だ。
わざわざ倒したのは、倒せるという自信が欲しかったからだ。ベルフェゴルも倒せないまま、ラスボスなんて不可能な存在だった……だけど、あの戦いは、今の結論に至る引き金にもなってしまった。
あの程度の相手に苦戦を強いられ、たった一人でラスボスを倒すなんて到底不可能だ。
「アレス様。そのような嘘をお止めください」
「何を言って……」
ミーアは身を乗り出して、俺の口に人差し指を当てていた。
そして、隣へと座り頭を預けている。
俺の右手にはミーアの手が添えられた。
「何年もの間。アレス様だけを見ておりました。あの時と同じです。言いたくもないことを言って無理されている。見捨てることを何よりも忌避されてます。ですから、本当は守りたいのではありませんか?」
ミーアの言う守りたい者とは一体なんだ?
俺が求めている未来を……本当は諦めたくはない。
だけど、俺にはその自信が持てない。ミーアが助かり、仮にメアリが、パメラが犠牲になったとして、今の俺が納得できると?
「魔物の暴走は多くの民を苦しめる。アレス様のように心お優しいお方が、放置することなど出来ませんよね?」
「それは……父上から教えられたもので、俺の本心というわけでは」
これは詭弁だ。
タシムドリアンの時と何も変わらない。
民あってこその貴族であり、その民を助けるのが貴族だ。
父上も兄上も、先祖代々それを守ってきていたはずだ。
昔から何度も聞かされていた……
だから、俺も私財をなげうって一時的に施しをした。
それで助かった人達もいる。
しかし、助けられなかった人も多くいたし、あの時集まってきた人を俺は見捨てることしか出来なかった。
見捨てたかったわけじゃない、俺程度ではどうすることも出来なかった。
それはただの言い逃れにしか過ぎないが、父上や兄上であればもっといい対策も打てたはずだ。
「俺一人でどうにかできる問題じゃないだろう。俺に出来ることは、ダンジョンに籠もるぐらいのものだ」
「そんな事はありません。ダンジョンを攻略できるのは……この世界では、アレス様にしか出来ません」
「それは、どうなんだろうな……」
ダンジョンを攻略しそうな人物はもう一人いる。だが彼女はそんな事を望んでいるのだろうか?
ベルフェゴルであれだったんだ。他の強者は強さは?
それ以上の可能性は十分にある。
中でも、最後に出てくる強者はさらに別格な存在だ。そんな化け物、相手にしなくていいのならそれに越したことはない。
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