公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透

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ラカトリア学園 高等部

82 新ダンジョン 1

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「今まで通り指示は私がするけど、アンタは後方から何かがあれば指示をして頂戴。それと、私達が危険だと思ったらアンタの判断で、討伐をお願い。それでいい?」

 妥当な判断だろう。
 俺は完全に後方支援をすればいいだけだな。
 皆にとっては、初めて扱う武器だから優位な戦闘にすればいいだけだな。

「了解だ。それで、今日は一階層に留まるか? 俺としては三階層なら多分人も居ないし有り難いんだが……もう少し頑張りたいのなら五階層がいいのかもしれないな」

「そうね、私達をちゃんと守ってくれるのなら、それもいいかもしれないわね。それにアンタを見られると後々面倒だし」

 面倒?
 レフリアは何を気にしているんだ?
 俺の行動がおかしいから秘匿にするということだろうか?

 ああ、なるほど。さっき言っていた有望というのは、他からの引き抜きを警戒しているのだろう。皆には離れるようには言ったが、今はそんな事もできない状態だから気にする必要はないのだけどな。
 例え離れていたとしても、定期的にミーアのことは見守るつもりだったし、今はこうして仲間として行動をしているから堂々と近くにいる。

「大丈夫だ、安心しろ。何があってもちゃんと守ってやるから」

「あ、アレス!? ちょっといいかな?」

「ん? どうしたハルト」

 俺はハルトに呼ばれ、近寄るが手を引かれ皆とは少し離れる。
 何の話をするつもりなんだ?

「おいおい、そんなに離れることはないだろ?」

「ああ、ご、ごめん」

「それでどうした?」

「あ、えっと……ぼ、僕は負けないから」

 ハルトはそれだけ言って、戻っていくが……残された俺はどうしろと?
 そんなハルトを見ていたが……二人からの視線が一瞬突き刺さるような気がした。

 魔物を倒しながら奥へと進むが、戦闘は四人に任せているので俺の出番はまったくない。
 風魔法を使って一体だけになるようにしているから、それ以外何もしていないのだ。

 それにしても、パメラとの連携はすごいな。魔法での援護もいい、けれどレフリアはハルトに任せすぎるな。同時攻撃も悪くはないが、攻撃はずらしたほうが相手も回避しづらい。
 万能型故の問題なのだろうか?

「ハルト。ちょっと体に負担はあるだろうけど、お前なら何とかなるだろうから体験してみろ。ブレイブオーラ」

「えっ? ちょっと」

 この魔法はハルトが得意とする魔法の一つ。得意というよりも特権に近い魔法、この魔法があるからゲーム中盤から授業パートで習得できるようになる。このおかげでハルトの強さが際立ってくる。
 自身の全能力を底上げすることで、物理攻撃最強の化け物になる。

 ブレイブオーラを使うことでどのキャラよりも最高のダメージを叩き出す。
 欠点は魔力量、つまりMPが少ない。ハルトには短期決戦での使用しか出来ない。この世界だと俺が使えてよかったのかもな。

「何でよたよたしているんだよ」

 ただし、現実に置いてこの魔法の致命的な欠点がある。ゲームであればただ数値が増えるが、能力が上がるということは、剣の重量感、鎧の重さ、自身の速度が今までとは全く違う物に感じてしまう。
 俺も慣れるまでは苦労したものだ。
 案の定、無理矢理に強化されたことで、ハルトは体の動きがかなりぎこちないものになっている。

「これはもしかして強化魔法? リア、危ない」

「大丈夫よこれぐらい。ハルト、アイツが魔法を使ったのはハルトが弱いからじゃない。ハルトならその魔法を使えると思っているからよ」

 お、レフリアにしてはいいこと言うな。
 この二人の立ち回りだけでも、戦力は確実に変わる可能性はある。
 補助魔法はレフリアが初めて使えるようになるが……その先のことまでは俺は知らない。

 この二人が一緒に居たほうがミーアとの連携にも役に立ってくるだろう。
 パメラは、しょうがないか……俺と一緒に居たことでハルバードを上手く扱えるはずもないか。

「そうだと良いんだけどね、全く相談もなしに、いきなり実践というのもどうかと思うけどね!」

「それは私も同感よ。アレスだからね、本当に何をするか分からないわ」

「そうだね」

「ハルト、いま使った程度の魔力だとせいぜい十分程度だ」

「分かった」

 お前は教えるよりも実践型のタイプだろ。あんな物を振り回すだけで脳筋確定済みだからな。
 教えるよりも実践を何度も積ませた方が良さそうだ。レフリアも馬鹿じゃないし、あの状況でも周りを見ているからそのうち慣れるだろう。
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