公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透

文字の大きさ
87 / 310
ラカトリア学園 高等部

86 ダンジョンでお泊り 1

しおりを挟む
 あの二人は何をしているんだ?

「宿代も浮くし私はいいと思うけど……」

「はい、そのようですね……」

「何か気になることでもあるの? 大丈夫よ、いくらアイツでも変なことはしないって」

 レフリアは本当に失礼なやつだな、俺はまだ何もしてない。
 余計なことを言うな、変な空気になっているだろ?

「それだと、その、いろいろ困ります」

 そんな必要ないんだから、全くこいつは……パメラの頭の中がおかしいだけだ。

「また僕を閉じ込めるつもり?」

「ハルトが結界が嫌だというのなら、一人だけ外でも俺は別に構わないけどな。俺達はこれ使うから」

 冒険者ご用足しのコテージ。かなり大きいが、収納のおかげで問題なく仕えるのが便利だよな。
 ゲームだと消耗品でかなり高いが、こっちだと数十倍の値段には驚いた。
 ギルド長に頼んで一つ融通してくれて助かった。
 中は普通の一軒家位あるらしい。

 冒険者達は見張りをしながら休む。俺の場合は、結界があるので全員が休むことが出来る。
 終盤にもなれば殆どの時間ダンジョンにいることになるから、ここぞという時に使えるアイテムだからな、持っていて損はない。
 
「なるほど、こんな風になっているのか」

「アレス様は初めてなのですか?」

「ああ。俺の場合はアースウォールで覆って、寝袋で寝てたから。子供の頃からそうしていたからもう慣れているけどな。」

「どんな神経しているのよ。アンタを一人にしておくとろくな事にならないわね」

 随分と酷い言われようだな……ダンジョンで寝るぐらい、他の冒険者もやっていることだぞ?
 ここだって、まだ五階層なのにこんな時間になっている。疲れたまま俺だって戦うことが出来ないのだから寝るに決まっている。

「ねぇ、ミーア。こういう場合って、普通テントよね」

「お前たちはテントが良かったのか?」

「あのね、アレス・ローバン。コテージってどういう時に使うと思う?」

「こういうときだろ?」

「これを使う冒険者は、普通にダンジョンの外よ。外!」

 そと? そとって外か?
 いやいや、そんなことをしていたら意味がないだろう?
 レフリアは何を馬鹿なことを言っている。

「こんな邪魔で重たい物は、アンタのように空間魔法が使える人ぐらいなものよ?」

「確かにレフリア様の言うとおりですね。アレス様でしたらと考えてましたが……空間魔法を使える方は稀ですから」

 確かにコテージを運ぶのなら、荷車は必要になってくるな。
 重さもある程度軽減されているとは言え、収納ならともかく運びたいとは全く思わないな。
 運ぶのだとしたら、馬車を使うということか?
 ダンジョンの中でもか?

「なあ、レフリア嬢よ……」

「どうしたのかしら? 今更ながら、自分がどれだけ規格外な事をしているのか理解できたの?」

「それは本当なのか? 俺としてはそのほうが信じられないんだが……」

「そういう事を言っているから規格外なのよ。空間魔法は簡単に使えるようなものではないのよ?」

 そうは言うが、セドラもこの魔法を使っているのだから、それほど特別な魔法とは思えない。
 レフリアの言う簡単に使えないとはどういうことだ?

「それを使っている俺が、頭のおかしい言われ方に聞こえるが?」

「少しは自覚したら?」

 俺が頭のおかしいということを一切否定する気がないようだな。
 お前たちだってやろうと思えばできることを、そんな言い方をされると少し腹も立ってくる。

「追い出すぞ」

「アレス様。そのような事は嘘でも冗談でも言わないようにしてください。いいですね?」

 ミーアに軽く怒られるが、それもちょっと可愛いとか、本当に反則だよな。
 人差し指を立てて、胸にとんとんと押し当てているのだが……なんかこう言うのもいいな。って、俺は何を考えているんだ。

 コテージの中はリビングと、部屋も二つあって中にはベッドが二つ備えられていた。
 それほど質がいいとは言えないが、これだけの物が収められているのだから、多少高いのも頷けるな。
 問題は四人は寝られる。俺達は五人だから……誰かが溢れるということになるな。

「じゃあ俺はここの床でいいよ。ダンジョンの時と変わらないからな。ハルトとレフリアは別に一緒の部屋でも問題はないだろ?」

「なっ!?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

26番目の王子に転生しました。今生こそは健康に大地を駆け回れる身体に成りたいです。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー。男はずっと我慢の人生を歩んできた。先天的なファロー四徴症という心疾患によって、物心つく前に大手術をしなければいけなかった。手術は成功したものの、術後の遺残症や続発症により厳しい運動制限や生活習慣制限を課せられる人生だった。激しい運動どころか、体育の授業すら見学するしかなかった。大好きな犬や猫を飼いたくても、「人獣共通感染症」や怪我が怖くてペットが飼えなかった。その分勉強に打ち込み、色々な資格を散り、知識も蓄えることはできた。それでも、自分が本当に欲しいものは全て諦めなければいいけない人生だった。だが、気が付けば異世界に転生していた。代償のような異世界の人生を思いっきり楽しもうと考えながら7年の月日が過ぎて……

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...