公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透

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強者出現

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 目を覚ました俺は、見慣れない部屋を見渡していた。
 俺は確か……ルフさん達と一緒に街に逃げていたはず。

「ここは……何処だ?」

 確かルフさんが街があるって……俺の家とあまり変わらないような?
 何処からどう見ても、宿屋というよりも貴族の屋敷の部屋にしか見えない。

「この辺りの領主? いや、冒険者というのだからそんなことはないと思うのだけど?」

 体も痛くはないし、肩も動く。もしかして、回復魔法を使ってくれたのか?
 それにしても、ここは貴族の屋敷と思うのが普通で、内装からして当たり前だな。

 少し腹が減ったな。

 収納に入れてある果物を取り出して、ナイフを使って皮を向いていく。
 魔力糸にも問題はないし、以前のようなことにもなっていない。

「まあまあ、美味いな。体は平気みたいだし。さてと、一体ここはどこなんだ?」

 窓から見える町並みも見たことはない。当然か、まともに分かるとしたらアルライトと王都ぐらいなものだ。
 それにしても、一面真っ白だな。雪が無ければ、町並みを確認できたのだろうけど。
 窓を開けると、部屋の中に冷気が入り込んてくる。

「さっぶ。こんなに積もっているのは初めて見たな」

 少しだけ雪を眺めていたが、寒さに耐えられないので窓を締めて暖炉へと向かう。
 俺の周りにも、火球を作り出して冷えた室内も温めていく。

「気がついた? 何をしているのですか?」

 声の方へと向くと、着飾った様子からしてここの婦人なのだろう。
 ルフさん達の要請を受けて、俺を助けてくれたんだな。
 バセルトン公爵家からの依頼ということもあって、俺を放り出すということも出来ないか。

「ええっと……助けて頂きありがとうございます。私は、アレス・ローバンです。ローバン公爵家次男です。大変申し訳無いのですが、お名前を教えて頂いてもよろしいですか?」

 俺がそう言うと、ご婦人は持っていた扇子をギリギリと握りしめ、扇子からは「パキパキ」と音を立てていた。今ので怒らせる要素があったのか?
 とりあえずよく分からないけど。絶対に怒られる。

「俺は何か失礼なことを言いましたでしょうか?」

 そう言うと、婦人は大きなため息をついていた。もう一度俺の顔を見て再度ため息をつく。
 そんな事では幸せが逃げますよ……

「お前は本当に酷い奴になったものだ」

「その声は、ルフさんですか。良かった無事に戻れたみたいで……てか、酷い奴になった?」

 ルフさんは膝を付き、深くお辞儀をしている。
 流石にそこまでして貰うわけにもいかず、立って欲しいと言うが、一蹴されてしまった。

「アレス・ローバン様。この度は私共を助けて頂き、誠にありがとうございました。私はフィール・グルムセイド。グリムセイド子爵の妻でございます」

「グリムセイド?」

 聞いたことは……ないのは当たり前か?
 それにして、ルフさんから感じるこの重圧は一体何なんだ?
 さっきから怒られるという気がずっとしている。ミーアが怒った時とは違って……言いくるめることも出来ないようなそんな印象を受ける。

「我がグルムセイド家は、貴方様がご回復するまで、何なりとどうぞご自由にお使いください」

「いや、大丈夫ですよ。回復魔法も使ってくれたみたいですし、腕もこの通りです」

 そう言って、体を大きく動かしていると、バキッ、という音が聞こえ。
 ルフさんの両手には、折られた扇子を持っている。
 ええっと……なんで?

「はぁあ」

「あ、あのぅ、ルフさん? いや、フィールさん?」

「アレス、そこに座りなさい」

「え? は、はい」

 すごく怒っているし……俺何をしたと言うんだ?
 それにベッドの上じゃなくて、床に座らされた。病み上がりと恩人に対してこの仕打は酷すぎるだろ。
 さっきまで深々とお礼していたのにだよ?
 というか、普通に考えてだ。何で俺はその言葉に何の疑いもなく従ったんだ?
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