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強者討伐 失われた武器

220 三人目の婚約者 1

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「これはどうしたものかな?」

 二人はそっぽを向き誰が見ても不機嫌そのもの。
 事の顛末をメアリが話し終えると、メアリ自身も少し呆れた様子で二人を見ていた。
 ミーアとしてはこれまでのように過ごしていたいと思い、パメラはアレスから離れることを望んでいるように見える。

 それが何処まで本心なのか、誰も分からない。
 どんなに問いかけようとも、パメラは頑なに口を閉ざしミーアの反感を買ってしまう。

「アレス様のことを好きだと仰ったではありませんか? それに私との話し合いも無かったことにされるですか?」

「それは……こんな話がなかったからで、あの時はそれでもいいと思っただけだよ!」

 アレスが一人でスォークランへ勝手に行っていた時、パメラはミーアに対して思いの丈を打ち明けた。
 パメラの行動には、最初こそ戸惑い。たった数日の間とは言え、それとなく気づいていたミーアは、パメラの言葉を拒んだ。
 それでも負けじと向かい合い、何度も対立をしていた。

『私は、それでもアレスさんのことが好きなんです』

 ミーアは何度も聞かされ、何度も拒絶をした。
 だけど……そんな彼女を見て、あの頃の自分が何度も思い返される。
 一方的に突き放され、それだけではなく婚約破棄という考えたくもない事を勧められる。
 何日もベッドで涙を流す辛い日々の中、それでもアレスの想いは消えてはくれない。

『私は、アレス様の婚約者です。それでも貴方は諦めないと?』

『好きになってくれるといいのだけど……アレスさんは、あのまま放っておけないと言うか、隣りに居た方がいいって思う』

 ミーアが彼女を受け入れるには、その言葉だけで十分だった。
 アレスの考えはまるで分からない。だけど、あの危うさだけは十分に理解していた。
 何かを一人で抱え込み、ひたすらダンジョンへ向かう。

 あの日、見せてくれた、苦しそうな顔をしてミーアを抱きしめた時
 あの日、決意ではなく、悲しそうな顔をしてミーアに別れを告げた時。

 ミーアは、あんなにも辛そうにしているアレスをこれ以上見たくはなかった。
 その隣が自分でないにしても、アレスを救う為、誰かの存在が必要だと思っていたから……パメラのことを受け入れざるを得なかった。

 それからというもの、二人の生活は大きく変わった。
 学園での生活も、ミーアとパメラはどんなことにもたとえ些細なことであっても競い合っていた。
 何時の間にか隣りにいることが当たり前になり、ミーアは過去にあった出来事を話してしまう。すると、パメラは怒りを露わにして怒っていた。
 そんな真っ直ぐな彼女を信頼することが出来ていた。 

 とはいえ、一向に振り向く気配のないアレス。
 ミーアとパメラはライバルとして、どちらでもいいのでまずはアレスに振り向かせるためにお互いで協力することを決めた。
 行き過ぎた行動も、全てはアレスのためであり、二人にとってそんな生活はたまらなく楽しい日々だと感じていた。

「何も変わりません。私達の思いは一緒です」

「もう違うんだよ? 何で分かってくれないの? アレスさんに同情なんてして欲しくないんだよ!」

「同情? 面白いことをいいますわね。あのアレス様が貴方に対して、そんな事は思ってなどおりませんわ」

 メアリは口を手で隠し、笑みを隠していたが誰から見ても笑っているのは明白だった。
 パメラはメアリを睨みつけるが、その行動を嘲笑うかのような態度をしている。
 レフリアがこれまでに何度も見てきた姿に、まるで懐かしむようにフッと息を漏らし口角が少しだけ上がっていた。

 ダンジョンで一人残され、アレスとの数日を過ごしていた頃を思い出す。
 以前に出会っていたにも関わらず、その時の事なんてまるで気にしてもいない。負担にならないようにと、気軽に声をかけられ、不審そのものであるはずの自分を守ってくれたことで、少しずつ彼に惹かれていく。

 ダンジョンという閉鎖的な空間のせいもあったから?
 コテージで一緒に寝たから?
 アレスの尋常でない強さに?

 何がきっかけだったのか今ではよく分からない。だけど、アレスという人物に惹かれているのは確かだ。
 ぶっきらぼうに振る舞う彼に対して、今では婚約者なのだからもう少しぐらい、気にかけて欲しいと募らせるほどに、アレスはあの頃からそういうことに関しては無頓着だった。

「私やレフリア様に起こった出来事など、『大丈夫か?』だけで済まされるようなお方ですわよ?」
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